現代の人気漫画をモチーフ論と構造分析の考え方を駆使して分析した本。
取り上げられる作品は以下の六つ。
・荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
・ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』
・野田サトル『ゴールデンカムイ』
・冨樫義博『HUNTER×HUNTER』
・荒川弘『鋼の錬金術師』
・吾峠呼世晴『鬼滅の刃』
実は、どの作品も読んだことはない。
そんな読者にも、本書は非常にわかりやすかった。
モチーフから作品を分析する研究は、これまでにもたくさんある。
実はいくつかそういったものも読んだことがあるが、なんかしっくりしないものもあった。
どういう方法論なのか、なぜそのモチーフを取り上げるのかがわからず、何となく恣意的な分析のようにも思えてしまったから。
本書では、モチーフを「ストーリー(物語の内容)に影響を与える「記号的意味」を持つもの」と規定する。
筆者の挙げる例では「いばら姫」(眠りの森の美女)の、「子どものいない王と王妃」「水浴び」「カエルの予言」などなど。
「カエル」は「多産」、「水」は羊水のイメージからも女性性という「記号的意味」を持ち、これが「いばら姫」の誕生というストーリーにつながっていく。
何をモチーフと認定するかには「ストーリー」への影響力の他、ジャンル、文化、それからその作品の固有性も考慮する必要があるとも述べている。
もちろん、それでも恣意性が排除できるわけではないだろうが、自分としては大分納得できた。
個別の作品の解釈については、作品を読んでいないので何とも判断できない。
でも、キャラクターたちが何に動かされているのか、生や死にどう向き合うかといったことがそれぞれ浮かび上がってきて、それはそれで面白く読めた。