クレア・キップスのレビュー一覧
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ネタバレ人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯
古書店巡りしてたときに偶然見かけて、
普段なら買わないジャンルなのですが妙に目が惹かれて、
購入。
読み、泣きました。
実話であり、できる限り感情を省いた記録だと著者が心がけており、
それでも滲み出る「この子が愛おしかった」故の表現の数々に私はとても嬉しくて……。
内容ですが、
戦時中、あるピアニストの婦人が拾ったスズメの記録です。
12年生きたスズメの生涯について、
老いて大病を患った彼の傍らで、思い出を語ってくれています。
小鳥と暮らしたことのある人なら
共感や想像が簡単だと思います。
首にぴったりくっついて同じベッドで眠るな -
Posted by ブクログ
序に「私は野生の鳥は基本的には野にあるべきだと思っている」とある。だから、作者のキップスさんは生まれたばかりで巣から落ちた障害のあるスズメを深い愛情を持って育てながらも、彼がスズメであることを尊重して適度な距離感を保った視点で見ていたのだろう。この本がスズメの生態や人と一緒に暮らしていたからこそ開花した潜在的な能力などの観察記録としても興味深いものになっているのは、そのおかげだろうと思う。
科学的な興味もさることながら、このスズメの愛らしさと逞しさには驚かされる。巣に見立てたベッドで迸るような歓喜の歌をひとくさり歌ったり、老いて病気になってからも生きる意志と聡明さで自由が利かなくなっていく状況 -
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梨木香歩さん訳の、
1953年初版のベストセラー。
ある1人の寡婦が出会った、自然界では生きていけないだろう雀の子供。
その雀-クラレンスと名付けられた雀の、12年に渡る生涯。
フラットに書かれた文章に現れる、キップス夫人の洞察力の深さにも驚かさせるが、
街中で景色に溶け込むように眺めていた雀が
こんなに感情豊かで、才能溢れる鳥であることを
本書を通じて知ることが出来てよかったと思う。
訳者も書いている通り、クラレンスが老いて、
いつ亡くなるのかも分からない中で書かれた
物語であるからか、クラレンスが全盛期である頃の生き生きとした描写の中にも、一貫して静謐さが漂っている。
全ての生き物が迎える -
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ネタバレクレア・キップス著、梨木香歩訳「ある小さなスズメの記録」、2015.1(文庫)発行です。口絵・イラストは酒井駒子さん、解説小川洋子さんです。感動の書でした。第二次大戦下のイギリス、老ピアニストが出会った生まれたばかりの傷ついた小雀。愛情深く育てられた雀のクレランスとキップス夫人が共に暮らした12年間の記録。1940.7.1~1952.8.23、11歳を過ぎてからは老衰と闘いながら、最期は夫人の手の平の中で穏やかな死を迎えたいとしいスズメの物語です。
人間との意思の疎通、哺乳類は勿論ですが、鳥類もかなりの疎通ができるのですね。昆虫、魚類、両生類、爬虫類は難しそうですが、共に暮らしていると愛情 -
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野生の雀の孵化すぐと思われる雛を育て上げ看取るまでを回想の形で記した本。第二次世界大戦中から戦後の時代です。
動物を慈しみながら一緒に生活している全ての人がそうであると思うが、非常によく観察(?)されていて驚くほどだ。そして野生の雀とは異なる生態を時に見せていく事を客観的に捉えて記載されているところが凄い。研究目的ではないのだから。また文章が高尚で時には難しく哲学的雰囲気の事もある。
そして主人公の雀がまた凄いのだ。素敵な文章の中に登場するこの雀の一生が、通常の野生の雀とは一線を画している。その面白さが端的な文章にギュッと詰まってる。著者の雀との関係性も素晴らしい。決してヒトの思う通りにす -
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キップス夫人が家の前で拾ったスズメと、約12年間一緒に暮らした日々の記録。
夫人はスズメくんに愛情を持ちながらも、観察する姿勢は研究者的なところも感じた。
ある日家の前で弱ったスズメの雛を見つける。介抱して元気にはなったが、そのスズメは生まれつき足と翼に障がいがあり、自力では自然界には戻れないだろうということで、キップス夫人が子供のように育てる。
ベッドに潜って一緒に寝たり、服のポケットに巣篭もりしたりする様子が可愛い。
成長するに従って、夫人のピアノに合わせて歓喜の歌を歌ったり、ちょっとした芸を披露して戦時中、子供を癒したりと大活躍。
そんなスズメくんも老いには逆らえず、11歳の時に病気を -
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このクラランスの伝記を読んでいると、
作者とスズメの関係が、
単なる飼い主とペットの主従の関係ではなく、
一人の人間に接するかのように、
時には一人前に男として、
スズメを尊重し、愛情と敬意をもって
スズメを大事に育てたのかが伝わってくる。
空襲の中、明日、死ぬかもしれない
戦時下の中を、12年間も長く生きる事が
できたのは、作者の深い愛情と支え。
逆も然りで、
クラランスの存在自体が、作者や
戦時下の人々の喜びに。
だから尚さら一層、脳卒中を患ってから、
だんだんと弱って行く姿を読むのは、辛い。
不自由な体になってからも、生きることを諦めずに、最後はぼろぼろの羽毛になったが、
命を全う -
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私がプロフィール画像を小鳥(ジョウビタキ)にしているのは小鳥が好きだから。
そして、小鳥たちの中でも一番好きなのが、スズメ。
野鳥は普通飼えないのだが、このスズメは生まれてすぐに巣から落下し、脚と翅に障碍を持っていた。
自然に返せるような肢体を持っていなかったので、保護するかたちで12年も一緒に暮らすことになった。
生まれてから老衰で死ぬまでのスズメの記録なんて今後出会うことはないだろう。
本編は150ページと短い。
本編が終わって原書の解説がある。
さらに梨木果歩さんの訳者あとがきに続いて、小川洋子さんの解説があった。
これらの解説だけで40頁もあり、本書の要約にもなっている。
人間に -
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表紙絵に一目惚れして購入。第二次世界大戦頃の話だが、全く耳にしたことがない作者、作品であった。日本でも早くから出版され、根強い人気だったようだ。いくつかの書評にあるように、楽しく、幸せを感じさせてくれる素晴らしい作品だ。
「秘密の花園」のバーネットが書いた「私のコマドリ」と似ているが、鳥と作者との長い共同生活の結果であるため、類い希なる鳥類の研究記録となった。また擬人化表現(と言うか、このスズメの中身は本当にヒトなのかも 笑)によるユーモア溢れる文章でクスクスと読み手を笑わせてくれ、またこの小さき者が如何に人間に「教え」を示すかが語られていく。
どんな生き物にも、感情はもちろん、知性や個性があ -
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イギリスのピアニスト、クレア・キップス(1890-1976)は、対ドイツ戦で灯火管制の続いていた1940年、玄関先で障がいを負ったスズメの雛を拾う。その日から12年間、スズメのクラレンスが老衰で亡くなるまで母子とも友愛関係とも取れる2人の交友が始まる。
マッチ棒の先のミルクを頼りに生命を繋いだ幼少期から、俳優のように地域の人気者になり、奇跡の歌声をむつみ出した青年期、卒中で倒れたあとシャンパンの「薬」によって奇跡の復活を果たし、眠るようにクレアの手のひらで亡くなった老年期。その一生は、本にされるや英国のみならず、世界中のペット愛好家から愛された。
私はつい最近、同じく英国で拾われたホームレ -
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『もしも物思いに耽りやすい夏の宵闇に、どこかで報われない恋の涙が落ちたとしたら、窓硝子の遥か彼方で彼女か流したものだったに違いない。』
第二次世界大戦下のイギリス。夫に先立たれた一人の老ピアニストが出会ったのは、一羽の傷ついた小雀だった。愛情深く育てられた雀のクラレンスは、敵機の襲来に怯える人々の希望の灯となっていく―。特異な才能を開花させたクラレンスとキップス夫人が共に暮らした12年間の実録。
わたしが好きな作家の梨木香歩さん訳、解説が小川洋子さんの作品だったので手に取った一冊。
戦争の描写は少なめで、雀との生活にフォーカスしているので楽しく読んだ。
雀のクラセンスには足に障碍が -
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原題 SOLD FOR A FARTHING
CLARENCE
THE FAMOUS AND
BELOVED SPARROW
BORN JULY 1ST 1940
DIED AUGUST 23TH 1952
クレア・キップスとクラレンスのハートフルな12年。人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯。ほんとに、副題の通り。もう奇跡ですね。
クラレンスが小さな本を見ている写真が好きです。
開いたページが「二羽のスズメ」(マタイ伝)という偶然も。
シジュウカラが会話することは日本の動物行動学者が解明しています。
チリリリリ(おなかがすいたよ)
ツピー(そばにいるよ)
きっと心を通わせれ -
Posted by ブクログ
第二次大戦末期のイギリスで、巣から捨てられたスズメと、雛を拾った女性の共同生活の物語。生き物との友情の物語はたくさんあるが、この本で印象的なのは、拾われたスズメがとても長生きしたことと、女性のピアノに合わせて歌を歌うかのように囀っていたということ。家の中で飼われていたので、外敵に襲われる心配もないし、餌に困ることも、悪天候に悩まされることもない。女性との「友情」を得て、完璧な状態で生活できたのだろう。この件だけではなんともわからないが、このように、ストレスから解放されると生き物って長生きできるのかも。そして、隠れた才能を開花させることもできるのかも。人間もそうなのかなあ。