中高生向けに法学的な考え方を教えてくれる一冊。「電車の遅れは遅刻の言い訳になるのか?」「ボールで自転車を壊してしまったらどうして弁償しなくてはならないのか? 誰が責任をとるのが正しいのか?」「部活の大会に誰を出したら良いのか?」等々、中高生でも身近に考えられる問題を取り上げて、それらの問題を法律的に考えるとどうなるかを教えてくれる。
「法律的に」といっても、具体的な刑法や民法なんか出てくるわけではなく、そうした法のより基盤になる考え方を教えてくれるところがいいところ。この本の中では、大前提として、人はみんな違う「価値の多元性」がありながらも、みんなとうまく生きていく=共生を目指すために「法ルール」があるとする。そして、その基盤になるのが、「利益や負担のバランスをとる=公正」であること、「自分らしく生きる=自由」であることという二つの価値だという。「法ルール」は、根底にこの二つの価値があるというところから、一つ一つの具体的な問題を見て、自由で公正であるために、どんな考え方をするのかを紹介してくれる。
第1章のテーマは「契約」だが、普段、何気なく使っている「契約」という言葉も、そのプロセスを契約の「相手」「内容」「形式」「締結」という風に厳密かつ分ける。こうしたプロセスを自由に選択できるのが「契約自由の原則」というのだそうだが、あいまいに使ってきたことが、整理されて、問題がクリアに見えるようになっていくのが面白かった。
このように、この本では、法というルールを作るときの前段階の考え方をしっかりと整理することで、決められたルールをただ守るという話ではなく、決められたルールから、一つ一つの事例を考えることを大切にする。まえがきでも「法ルールはかちっと固定されたものではなく、変わっていくことができるもの」だと言っている。ルールの受け手ではなく、ルール自体を考えて、誰もがより納得したり、満足したりできる判断を下せるようにしようとする考え方が、すごく好きだった。
「法律」や「ルール」と聞くと、どうしても上から降ってきて、守らされるものというイメージのある人。そういう子たちに読んでほしい。