福井安紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ創作活動を続けていくために、作者が徹底して実行している行動力が素晴らしい。
わたしも含め、最終学歴と現職に関連性がない人は多いと思うが、高校くらいから進路を見据えて、絵の練習をするだけでなく、社会の仕組みを知って独立した時にやっていけるように、筆者はあえて美大に進学し、自分の意志で就職している。学んだ内容が収入に直結している。
元々、絵の才能はきっとあって、それをご自身で磨き続ける事を怠らず、進路に反対してくるような親族もいなかったのだと思う。絵を学ぶために生きて、実際にそうしている。
この本は何も、芸術家として専業で生きていく人のみならず、一般の社会人にも大変参考になる教科書のような本だ。
嫌われる事を恐れずに自分を曝け出し共感を得る事、心を壊さないように自分を管理する事、最低限生活していくためには、何がどのくらい必要かを知る事、お金がなくても美を感じるために心が豊かになる発想、行動を取る事、などなど。
ネカフェでまったりしながら飛行機のファーストクラスにいると空想するなどのユーモアもある。
少し人とぶつかっても、自分を出して、されたら嫌な事、嬉しい事などを周りに伝える努力をすると、共感して味方になってくれる人は必ず現れる。仕事がやりやすくなったりする。
個展で嫌な客に会った時にちぐはぐな返をして会話を終わらせる方法や、ストーカー的な行動をしてくるお客をブロックする方法など、アーティストやフリーランスを目指す方以外にも勉強になる事が盛り沢山なので、読んだ方はきっと納得して共感してしまうだろう。 -
Posted by ブクログ
「共感してもらうために自分を発信しよう」というコアメッセージを掲げつつ、職業画家として活動するにあたり有用そうな事柄がとても網羅的に書かれている本。割とパラパラ読める。
駆け出し作家のような人に一番刺さるのかなと思った。
「いかに作品のクオリティを上げるか?表現の幅を広げるか?」等の技法の部分は皆興味を持ったり学校で教わったりするのではないかと思うが、本書ではそういった技法の話はほぼ無い。
その代わり、「お客さんとどう対話し、ファンになってもらうか?」や「お金やメンタルの問題とどう向き合うべきか?」など、作家活動においての制作工程以外の課題についてとても網羅的に触れられている。
そういった課題は画家だと苦手意識を持つ人がきっと多いと思うし、人に聞く機会も少なそうなので、1つの事例として文書化して提示してくれている本書は作家からすると有り難いだろうな〜と思った。
最終章では「何歳くらいの頃にどう考えて活動していたか」といった著者の作家としての歩みがまとめられており、画家ってスゲーーってなった。(自分はこんな色々考えて人生歩めてない…ヤダーー)
自分は画家ではなくて本書のメインターゲットじゃなさそうだけど、画家活動というものに対する解像度が上がり、多少親近感を持てるようになった気がする。(のでよかった)
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Posted by ブクログ
専業画家である著者が自身のノウハウをまとめた本。ちょうど身近に作家活動をしている者がおり、その考えの一端が掴めれば、もしかすると彼への何らかのヒントになるかと思い読んでみた。
著者は自身のことを以下のように書いている。
- 美術団体に所属せず、画商に取り扱われることもなく、ほぼ専業主婦の妻と娘の三人が地道ながら生活できる状態を作り出した。
- 1970年生まれで30歳の時に専業画家になった。
- 35歳の時に絵の収入で食っていけるようになった。
一般のイメージに違わず、作家活動のみで生活していくのは簡単なことではないようだ。「地の章」では、30歳で会社を辞めた後のお金のない生活や将来への不安など、生々しい記述がいくつもある。だが、それでも若い作家には最初から諦めることなく専業を目指してみて欲しいという強い思いが書かれている。著者と今の若い作家では時代も違い、同じように上手くいく保証はないだろうが、専業を目指す作家にとってはそういった記述は心の支えになるのかもしれない。
著者がとった戦略は端的に言うと、貸し画廊での個展を重ね、自身のファンを地道に増やしていったということらしい。具体的なノウハウもあり、納得できる内容だった。細かな接客のノウハウを読むと、著者は作家であると同時に優秀な商売人のようにも感じた。いかに顧客とコミュニケーションをとり、自分の作品や作家としての自分を知ってもらい、購入してもらえるか。そんなことが書かれている。
「人の章」では作家を歌手に例えている。芸能事務所に所属するメジャーの歌手と地下アイドル。業界内、あるいは世界で名の通った現代アーティストと、直接会って話を聞ける「地下絵描き」。それぞれで求められる価値は違う。メジャーだけが良いわけではない。アート作品を楽しむ側から見ても、距離感が近く会おうと思えば会える「地下絵描き」で推しを見つけて作品を買うというのも面白いかもしれない。
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その他、印象に残った点を箇条書き。
・制作場所を確保することの大事さ。ある程度のサイズの作品を制作するには、それなりの広さがいる。著者は最終的に、築10年の店舗付き住宅をローンで購入し、店舗部分を画室として改装したとある。
・作家の活動の方向性として3タイプ。あくまで大まかな分類だろうが、作品をどう出すかで作家人生が大きく変わりうることがわかる。
- 美術団体の公募に出品していくタイプ
- 個展を開き、販売を含め展開していくタイプ
- グループ展に出品するなどの活動をメインとするタイプ
・作品を求めるのは身内や友人など、作家に近い人ばかり(作品はそう簡単に売れない)と考えている作家が意外に多いとある。作家を取り巻く環境の厳しさを感じる。しかし、それに対する著者の言葉は『他人が作品を求めることは、特別なことではない』。逆に、個展に知人を呼ぶのは未知の人との出会いを失いかねず、控えるべきとある。全体を通して、新たな顧客との出会いを多く得ることを中心的な戦略としているようだ。
・著者は『作家も商品である』と書いている。1作目は作品を気に入って購入し、その後作家自身を気に入り2作目を購入されたという自身の経験の中での言葉。
→アート作品の価値は複雑で、単に作品の良し悪しだけでなく制作の背景や作家の人間性も重要な要素になる。作品に込めた想いや自分の考えを表現し、そしてそれを発信するような能力が作家には重要なのかもしれない。
・作品が売れたとしても、必ずしもそれは「自分のお客さん」ではないとある。顧客が作品を買うのは、作家ではなく企画画廊や百貨店という場に価値を感じている可能性があるため。
→この考えは「地下絵描き」として活動を続けた作家ならではと思う。企画画廊や百貨店で売れた作品にももちろん価値があるだろうが、「地下絵描き」として、絵で食っていくということを考え抜いた戦略なのだろう。
・個展での顧客への接し方が具体的だった。自分が著者を優秀な商売人だと感じた理由はこれだ。
- 個展には必ず在廊する。
- 絵を見る顧客との距離感。積極的に声を掛けすぎるとプレッシャーになるし、逆に声を掛けなければ関係性が生まれない。画廊を百貨店のジュエリー売場に例えていて、納得感があった。
- DMの出し方。興味を持ってくれていそうな客へはアプローチを増やすなど、顧客管理もしている。
- 単に制作した作品を売るだけでなく、受注制作も受ける。名刺などでそれをさりげなくアピールする。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1回目:2024/10/8〜10/25
自分が絵画ではないけれどもアート活動をしているので、参考にしたいと思って読みました。分野が違うので具体的な手法は応用できなそうでしたが、それでも基本的な考え方や姿勢からは刺激をもらいました。
著者さんは現時点では世間一般からすれば「無名」かもしれませんが、地に足を着け、それと同時にとても大きなビジョンと視野を持ってご自身のアートに向かっていっているのだと伝わってきました。
余談ですが、ギャラリーストーカーなどの「イヤなお客さん」の対応の部分は、どの分野でもこういう人たちはいるんだなぁと苦笑してしまいました。それと同時に、こういう人たちに出会うということは特別なことではなく、人前に出ていく以上、付きものなのだなとわかりました。エネルギーを守るの、大事ですね。
本を読み進めた最後の方で著者さんの作品を見ると、作品への自分の興味も強くなっているし、作品自体もとてもよく見えてきて、「なるほど、これが著者さんの言っている共感か〜」と思いました。