古市晃のレビュー一覧
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古市晃『倭国 古代国家への道』(講談社現代新書)は、「古墳の巨大化=ヤマト王権の一気の中央集権化」という通俗化しやすい図式をいったん留保し、5〜6世紀の政治秩序を連合的な枠組みとして捉え直すことを主眼に据える。王統を単一の連続体として前提せず、周縁王族や有力首長の並立、海上交通・交易の結節点としての大阪湾岸の位置づけを通じて、権威(称号・儀礼)と実務(物流・軍事・対外交渉)の分有という見取り図を提示する点が特徴である。
史料の扱いも慎重で、記紀を「史実の台本」として直読するのではなく、編纂の意図や叙述の効果を意識しつつ、風土記的伝承や地域史、考古学的知見を重ねて古い位相を推定するという手順が -
Posted by ブクログ
本書は、倭と呼ばれ、また自称もした列島社会における国家の形成過程を、5、6世紀を中心に検討し、明らかにしようとするものである。
倭の五王から継体天皇即位に至る時代の歴史については、中国の史書や記紀の記述、鉄剣に刻まれた文字、あるいは前方後円墳の位置や様式を史料に、様々な見解が示されてきた。
本書もまたそうした一書であるが、記紀や風土記などの記述内容を単純に事実か虚構かの二者択一で捉えるのではなく、それらを素材として、相互に比較することで、より整合性の高い推論の提示を目指すものであると、その方法論を示している。
そして、重要な手がかりとするのが、王宮のあり方である。なぜなら、王族の名前に