細井直子のレビュー一覧

  • あいだのわたし

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    現代版アンネの日記と言おうか。ドイツの避難民収容所で、認定を待つマディーナとその家族の話。架空の人物ということで、どの国の紛争から逃げてきたのか、彼女とその家族を縛る伝統や宗教がどの国のものなのか定かではないが、どの国にも当てはまりそうであり、いろいろな難民に思いをはせながら読んだ。

    内戦にあったらしい国内の対立はもちろんひどい。でも命からがら逃げてきた先での、伝統だの男のプライドだのに縛られた家族内、施設内での対立、収容所の職員の酷さ、対応する当局の対応の冷たさに、どうして人は平和に生きられないのかと腑が煮え繰り返る。地球の一部が自分のものであって、生まれた場所が違ったからって入る権利がな

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    2025年06月08日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    目録となっているが、12篇の短篇集のようでもある。
    今はない物への偏愛、憧憬と幻視による物へのオマージュ。論文調だったり、小説のようだったり、日記のようなものまであって一つ一つが面白い。
    カスピトラがローマの見世物になったりフリードリヒのグライスヴァルト港の絵がリク川の源泉を辿る旅仕立てになったりして想像の行くところがいい。
    そして何より本としての佇まい、章ごとの仕切りの美しさ、ため息が出ました。

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    2023年03月17日
  • あいだのわたし

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    10代がえらぶ海外文学大賞という小冊子から選んだこの本。最近重い話題の本は避けていたので、久しぶりにズシンときた。生まれてきた国が違ったら、時代が違ったら私にも起こったかもしれない。今の時代にも戦争している国はなくならず、難民生活している人も多い。そんな事実を知ってはいても、その人たちがどんな生活を送っているのかはなかなか想像し難くて、ほんの一部だけでも垣間見ることができる、そんなお話し。

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    2025年11月16日
  • あいだのわたし

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    どこからとは特定されていない国から難民としてドイツに逃げてきたマディーナの一家。今は難民認定が降りるかどうかを待ちながら劣悪な収容所で暮らしている。叔母も含めた一家5人でひと部屋を分け合う生活は、狭苦しくて気が変になりそうなほどだけれど、少なくとも生命の危険はない。
    マディーナは高校に通ってドイツ語をおぼえ、両親のための通訳までつとめるようになったが、大人は収容所から出ることもできず、ただ停滞したまま無為に生きるしかない。そんななかで父親は、故国の女性蔑視、家父長制の価値観をそのまま持ちつづけ、日々、新たな世界に適応していく娘との距離が広がっていく。

    価値観が更新されない親と、新世界に生きる

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    2025年06月11日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    『ユリイカ』のハン・ガンのインタビューで「今読んでいる本」として挙げられていたもの。章ごとに差しこまれる黒い表紙には、光の加減でその章のテーマとなる「失われた物」のビジュアルが浮かび上がる。「失われた物」と続く物語の関連性が自分には上手く見出せずしたがい物語に入っていけず、眠くなることもしばしば。しかし「グライフスヴァルト港」の章は…… 良かった…… あの章だけ何度も読み返したいくらい。植物や野鳥に精通した目があれば、「自然豊か」のひと言で片付けられそうな光景も、あれほど精緻で優しい描きかたができるのだ。

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    2025年01月25日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    棄ててしまった物、失われた物は二度と取り戻すことができない。世の中にはそういう物があるのに、処分しようとする「断捨離」という考え方には真っ向から反対する。その対極にいて、物を棄てられない質の自分にとって、この本の序文は心に響いた。
    本書は、12点の「永遠に失われた物」を取り上げている。ただし、その「物」についての解説は最初の一葉程度で、口絵も無く、ただ各章の間の黒いページに墨色で図版があるのみ。それについて知りたければ、Wikipediaなりで調べる必要がある。つまり、本書はそのような「失われた物」についての博物図鑑では無い。
    代わりに、もう存在しない物に思いを馳せた、散文詩であったり、紀行文

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    2025年01月16日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    地図から消えた島、絶滅した生きもの、散佚した古代の詩、燃やされた聖典……。歴史上たしかに存在していながら今は消えてしまった、あるいは存在しないことが明らかになってしまったゆえに忘れ去られてしまった物たちに捧げる、黒と金のレクイエム。


    墓石、それともモノリスのような佇まいのハードカバーを開くと、各章ごとが濃い藍色のページで区切られ、そこに鈍金色で刷られた章のモチーフがうっすらと浮かびあがる。それは今はない島が載った海図だったり、一角獣の骨格だったり、廃墟と化した貴族の屋敷の在りし日の姿だったりする。
    ドイツでブックデザインの賞を獲ったというのが納得の、一目で惹かれる存在感。中身はまた私好みの

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    2020年12月31日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    読者を選ぶ本。博物学や、内容紹介で挙げられているモチーフに惹かれた人には面白いかもしれない。でも文体も話ごとにバラバラでどうしても苦手な文体もあったし、基本的に教養が高い人じゃないと単語がいちいちわからず調べたりするはめになる。きりがないのでわからないまま読み飛ばしたりしたけれど、本当は全部わかっていないと話の奥深さが理解できないんだろうなあ、と思う。わかるものについては、知的好奇心を刺激されてすごく面白かった。著者の博学と美意識の高さに感嘆した。

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    2020年09月04日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    文章と装丁によって創り上げた「本」という空間、その著者の
    ヴィンダーカマー(博物陳列室)に収められた十二の物語。
    ・はじめに  ・緒言
    ・ツアナキ島・・・失われた島への夢想と島を求める冒険家たち。
    ・カスピトラ・・・古代ローマのコロッセオ。死せる運命にも
           本能を露わにする、絶滅したトラの生き様。
    ・ゲーリケの一角獣・・・山岳地帯で執筆する数日間のエッセイ。
    ・サケッティ邸・・・廃墟画家たちと描いた廃墟の運命。
    ・青衣の少年・・・グレタ・ガルボの漂っているような散歩での独白。
       映画「青衣の少年」は「吸血鬼ノスフェラトゥ」の監督の
       ムルナウの第一作目。失われた映画にガルボ

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    2020年07月27日
  • あいだのわたし

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    難民として逃れた先で、親ではなく少女が家族の生活を支える責任を担わされることにどうしようもない怒りを感じた。マディーナ自身も戦争のトラウマを抱え、学校でも好奇の目に晒されて、保護を受けなければいけないはずなのに。価値観を変えることができずに周囲に馴染めず、言葉も不自由な両親のことも慮り、幼い弟の面倒も見て…。マディーナの努力と勇気は素晴らしいけれど、まず前提としてこのような不幸を生み出す戦争はあってはならない。

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    2025年11月06日
  • あいだのわたしたち

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    『あいだのわたし』続編。読んでいる最中結構眠たくなってしまった……。三部作の完結編があるようだが、読むのを少し迷う。

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    2025年08月15日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    2021年NHKラジオドイツ語講座のテキストでドイツ文学を毎月一冊紹介していた中から。

    失われた物を展示する博物館に陳列された物の背後あるストーリーを、著者の想像を膨らませて書いたエピソード。読み始めて、文章が長い。説明が冗長。教養書読んでるみたい。飲み込みのに頭のしわ使う。しんどいな〜と思いつつ、読み続けると、口語調のストーリー(でも説明くどいけど)もあり、あ、この著者、こんな現代調の話も書けるんだ、と気づく。
    失われた物にスポットを当てるアイデアと、本の装飾という著者の作家以外の職業を掛け合わせた作品は、読み物としてのみならず、ハードの本の芸術も鑑賞。失われた物という事で、黒地に薄い絵が

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    2025年06月19日
  • あいだのわたし

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    YA向けの翻訳シリーズであるSTAMPBOOKSは日本とは違う国の子供たちの苦悩が書かれているものが多い。こちらは難民もの。難民認定されるのか、強制送還されるのかあいだで揺れ動く少女の日記文学。

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    2025年05月03日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    題名で読むことを決めたので、どういう内容かは全く把握しないまま読み始めた。
    失われてしまったもの12個に関する話を短編小説のような形で書いたもので、翻訳ということもあって正直読み進めにくかった。
    お気に入りは、森の百科事典と共和国宮殿。

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    2024年03月10日
  • 失われたいくつかの物の目録

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    緒言を読むのから、結構な気力・知力を要求される。

    地図と、辞書またはスマホを側に置きながら読み進めないと、文字だけが頭を流れて、イメージが浮かばず、世界が形作られない。

    様々な文体、対象について描かれていて、この本の読書を通じて、この本に慣れることはなく、常に挑むような感覚。
    一読だけでは内容を掴みきれない。時間を置いて、もう一度読み、咀嚼したくなる。

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    2021年06月28日