田島木綿子のレビュー一覧
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著者の田島さんが海岸に打ち上がったクジラのお話をされていたのを以前ラジオで聞きました。
打ち上がったと聞けば飛んでいき、解剖の様子やクジラ爆弾、埋めて微生物にキレイにしてもらうなど…とにかく話が面白かったのを思い出し、手に取りました。
クジラだけでなく海で暮らす様々な哺乳類について、生息地や特徴、打ち上げられる原因なども紹介されています。
クジラが打ち上がったニュースを見ると、その迫力にギョッとしてしまうのですが、田島さんにとっては細かく調べられる大チャンス!そのフットワークの軽さには驚きます。
結果、体内からはビニールや海洋プラスチックも見つかっているそう。これも田島さんたちが解剖してくれたからわかったことですね。
自然は過酷で危険だらけで、そりゃ何かで死んでしまうこともあるけど、いやいやこれは明らかに人間のせい!という死因が想像以上に多い事を知りました。
地球上の生物たちにしわ寄せがいってしまっている現状、気持ちが沈みます。 -
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既読の『キリンの解剖』と『ゾウが教えてくれたこと』は、どちらも女性研究者だった。本書のクジラも女性、これっれ偶然? そしたら、本書のコラムのテーマが「女性研究者は大きいものに萌える?」
2021年刊。著者は科博の先生。海生哺乳類が専門。動物の種類も広範囲だが、仕事の内容も、調査研究から標本の保存や展示までと、多岐にわたる。本書は、その仕事の魅力(あるいは3K度)をわかりやすく紹介。解剖や骨格標本の作製にいくらかかるか、「突撃!カネオくん」ふうの記述もある。
どっかの浜辺にクジラやイルカが漂着したとなれば、さっそく駆けつけて解剖。でも、野次馬の方々も集まって来る。解説しながら、仕事をする、いわば無料の解体ショー。このクジラやイルカの座礁・漂着(ストランディング)の謎には、かなりのページを割いている。個人的には、マナティとジュゴンの解説が興味深かった。
(p.s. 4章はイルカの祖先の話題。タイトルは「かつてイルカには手も足もあった」。手も足もあったら、イルカではないと思うんですけど。) -
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基本的には人間は、性善説が支配的であると思う。御二方の対談は非常に興味深いものであろうということは、本書が視界に入った時に瞬時に察しがついた。
本書は、霊長類学の権威である山極氏と獣医・海獣哺乳類学者である田島氏との対談を編集している。
一般的に、サルの社会は序列化されているが、山極氏によれば、ゴリラの世界は、徹底的な対等社会であると言う。
少なからず映画等の影響を受けて歪曲されていたので、これは、衝撃的だった。
ちなみに、獰猛で野蛮なイメージを増幅させるいわゆるドラミング(立ち上がって、胸をドンドン叩く行為。)は、『これ以上近づいたら喧嘩になるから、お互い離れようぜ。』等の平和的解決へのサインらしい。ゴリラは、極めて紳士的な森の住人ではないか。
ゴリラだけでなく、田島氏が紹介するザトウクジラの例も、心を熱くする。
カナダの研究チームによると、シャチに襲われているコクジラの親子を助けるべく、ザトウクジラが盾となって間に入って、守っていたようだ。
さらに驚くべきは、シャチに襲われて海に落ちたアザラシをザトウクジラが助けて、数十分泳いで避難させた事例である。
これらの事例は、ごく限られたものであるが、ゴリラもザトウクジラも、立派に心を宿していると言えるだろう。
ここで、鯨類の区分けについてであるが、一般的に体長が4メートルを臨界値として、クジラなのかイルカなのかを決定しているに過ぎないことに注意されたい。
本書を通じて、言葉を持たないゴリラやイルカ等も、利他の心をもって社会生活を営んでいることを知った。
筆者が言うように、我々は、彼らに見習うべく言葉に依存するだけでなく、たとえば、従来無駄とされていた時間等について向き合っていく時期に来ているだろう。
『人間は、家族や仲間と協力し合い、支え合うことを喜びとする生き物である。』という原点に立ち返れば、テクノストレス等にエネルギーを浪費する現実から脱却できる明るい未来が待っているはずだ。 -
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上野の国立科学博物館所属、海の哺乳類専門の研究者の方による著書。
タイトル通り海辺に漂着して戻れなくなった(ストランディングと呼ばれるらしい)クジラやイルカその他の海獣達に対して、可能であれば生きたまま海へ戻し、死んでしまったり死んだ状態で漂着した個体に関しては解剖を行い死因を特定したり標本を残すなどして研究に役立てる、というお仕事について語られている。
文章に表してしまえば簡単だけれどもその仕事ぶりは日本全国ときには海外まで股にかけて津々浦々、必要があればどこにでも飛んでゆき、様々な交渉を行い、場合によっては重機まで登場する解剖風景はとんでもなく力仕事。しかも刻一刻と腐敗が進むスピード勝負で悪臭つき。まるで極限環境へ赴く冒険家のよう……。なのだけれども、語り口は軽やかでとても読みやすい本だった。このお仕事が本当に好きでいらっしゃるのだなあ……。
解剖のエピソードが多めだけれどそればかりではなく、科博の展示の裏側のエピソードもあり、自分も見に行ったことのある哺乳類展の展示で印象に残っていた標本の話が出てきて心が躍った。
ひとつひとつの標本には、展示会場で人目に触れる以前のエピソードが存在するのだなあ。当たり前だけど。
標本の制作に直接携わった人の文章を読むと、そのあたりを強く意識する。
クジラやイルカだけでなくアザラシやセイウチ、ジュゴンやマナティ、ラッコなどの海獣達にも触れられている。
ラッコが人間を引っ張ると生命の危険を覚えるほどパワーが強いという話は驚きだった。鳥羽水族館のラッコのメイちゃんが飼育員さんに引っ張られていったり水中で一緒にダンスしたりする芸って可愛いだけじゃなくすごいことだったんだ……!
紹介されている海獣達について具体的に国内水族館の名前や個体名が出てきたりするので、本を読みながら検索して映像で眺めたりするのも楽しかった。様々な海獣達に興味を持たせるのがうまい文章だなあと思う。
本書を読んで驚いたのは、ストランディングの件数の多さ。
日本国内で報告が上がっているだけでも年間件数が数百件というのは予想外だった。
本書の終わりの章ではストランディングの原因のひとつと思われる環境問題についても触れられている。
ひと一人にできることはささやかだけれども、対策のために何ができるか考えていきたい。 -
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ネタバレ前著「海獣学者、クジラを解剖する。」に続く。
前著のお陰で、日本ではクジラの遺体の有効利用への理解が進んだのではないかな。
さて、本著のテーマ 死でなく、生殖である。
全体的な感想として、オスは自分の遺伝子を残すためにひたすらメスを求め、奮闘努力する。メスは自分でオスを選ぶというけど、結局オス同士の戦いの勝者を無条件に受け入れる、という感じですね。
以下、蘊蓄
・シャチは背びれの大きさでオスの優劣が決まる
・ザトウクジラはラブ・ソングを歌い求愛する
・ザトウクジラの歌は毎年流行が変わる
・ザトウクジラの歌は3000キロ先まで届く
・ザトウクジラはシャチに襲われた動物たちのガードをする
・ザトウクジラの歌はCDやYoutubeで聞ける
・イッカクは牙の長さでオスの優劣が決まる
・海底のミステリーサークルは巣で、海水の流れを良くして酸素供給を増えすための形
・ゴリラの白い背中はイケメンの印
・強いオランウータンは顔がでかい
・ニホンカモシカは牛の仲間であり、鹿の仲間ではない
・テングザルは鼻が大きいほどもてる
・孔雀のオスのメスへのアピールは羽根から、鳴き声に変わってきている
・セミクジラの陰茎の長さは3から4メートルで哺乳類最大、著者は鯨類ではセミクジラが一番好き
・セミクジラは交尾の際に大量の精液で、元々あった精液を洗い出す
・ヤギの交尾はほんの一瞬 交尾中は危険なためとあるが、では出産も一瞬なのか?そこには触れられていない
・基本野生動物のメスはワンオペ育児
・ライオンは数頭のオスでハーレムを作る
・ライオンは陰茎のトゲトゲで排卵を促す
・ライオンの交尾は1回20秒、1日50回以上これが1週間つづく、これに応えられないオスはメスに群れを追い出される
・イルカなどは逆子で生まれる、頭から生まれると溺れてしまうおそれがあるから -
Posted by ブクログ
淀川河口にクジラが漂着したニュースはしばらく流れていたが、今はどこへやら。
鯨類研究者ってどういうことをするのか?調査してわかることとは?いろいろ興味深いことばかり。
大型哺乳類の調査は、規模が本当に土木工事並みであれこれ大変だということは噂できいていたが、これを読んで本当に骨の折れることなんだと実感した。しかしながら、その先にある調査や標本など様々な活用と、将来に残すべき保存という技術もあるということを深く理解した。海に沈めれば済むという話ではない。
後日追記。
あのタイミングで読んだことを思い出す。この本の編集者がむかしなつかしい人だったことを知って。 -
Posted by ブクログ
同じ哺乳類、猿人から、人間とは何かを探ろうとされてきたお二方の対談。野生のイルカ・ゴリラはそれぞれコミュニティの中で血の通ったつながりを築き今この瞬間を生きている。それこそが生命として必要不可欠な力だと言わんばかりに。翻って人間は、スマホ、AIの台頭によりどんどん血の通わない、相手のも知らない、呼吸を感じない世界に足を踏み入れつつある。
そういう私自身、うつ病を患い人との関わりがうまくできなくなった側。野生では致命的なんだろうな。どんどんそういう人が増えている。一度踏み外すとなかなか戻れない。
どうか、ゴリラやイルカのように、身近な存在との関係性を大切にし、不毛な争いを生まない人間に進化していけるように、あらためて大切なことは何か、身近な人との関わりで自分にできることは何かを考えながら生きたい。
願わくば、うつ病でもゴリラのように優しく勇敢な存在として人生を真っ当できますように。
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Posted by ブクログ
おもしろかったぁ!
海獣学者が何を目的に、どんなお仕事をしているのか
海獣の種類や生息している環境のこと
解剖するために誰と交渉したり協力しているのか
オカネのこと、施設や道具のこと
ストランディングといわれる動物の漂着について
詳しくお話されています
このお仕事に対する情熱がビシバシ伝わってくる
浜辺を散歩中にストランディングした動物を見つけたら
連絡入れる場所がわかりました
✮科博ですよ
クジラの声を聞いたり
シャチやセイウチの動画を見たり
読みながら調べながら楽しみました
『52ヘルツのクジラたち』
クジラつながりで読みはじめました -
Posted by ブクログ
国立科学博物館に所属する研究者、田島木綿子(たじま・ゆうこ)さんの著作で、海の哺乳類の研究者がどんな活動調査をしているのか知れる1冊。
一般向けの本ということで、とても読みやすい。
田島さんのお人柄もあると思うが、研究対象への探求心や思いが溢れていて、とても面白かった。
ストランディングの連絡を受けて日本各地に調査に赴く、イルカ1頭なら一人で車に乗せるなど、想像以上に体力・力仕事で、研究者へのイメージが更新された。
この本を読んだら、ストランディング調査をしている研究者を見つけたら、話しかけずにはいられない。
研究者の話を聞く機会があったら、是非行ってみたいと思った。