おぎすシグレのレビュー一覧

  • 読んでほしい

    Posted by ブクログ

    「小説を書いたから読んでみてくれないか」
    この一言が言い出せず、右往左往し懊悩する主人公の姿が、じれったくもユーモラスで、時に切ない。

    10代は臆面も無く語れた夢や、剝き出しにできた承認欲求を、40代ではむやみに曝け出せないのだ。凄く分かる。

    自分よりも他人の都合を優先しがちな主人公にとって、「読んでほしい」と言い出せないこの小説こそが、初めて明確に打ち立てた自分軸なのだろう。

    置き忘れても、持て余しても、見失っても、ぶれずに自分を貫く難しさと、一筋の光明を見た気がした。

    矢部太郎氏の装画も良い味を出している。

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    2021年10月10日