【感想】
アフリカには貧困や飢餓が蔓延しているのではないだろうか?大統領が国を私物化し、紛争や民族浄化といった政治的動乱が相次いでいるのではないだろうか?国土のほとんどは砂か森で、気温はとても暑く、未だに農作物を主要産品として外貨を稼いでいるのではないだろうか?
本書は、そうしたアフリカへの偏見を「ファクトフルネス」を使って解消していく書である。
アフリカが急成長する様子は「Leapfrog」と例えられる。蛙飛びのことだ。これは、新興国が先進国の技術を取り入れることで、通常の段階的な進化を一段飛ばしし、一気に最先端に上り詰めるという意味である。
わかりやすいのは通信技術だ。中国やアフリカな...続きを読む どでは、電話回線や光ファイバーといった固定回線が整備される前に4G、5G技術が導入されたため、固定電話はないものの、携帯電話普及率は113%もの高さになっている。また銀行口座を開設している人は少ないが、スマホで支払い・送金・出金が可能になるキャリアサービスが登場したため、日本よりもキャッシュレス化が進んでいるという。このような例がアフリカ式「Leapfrog」の特徴であり、他にも電子カルテやドローン技術など、既存インフラによる「型」が定まっていないがゆえ、特定の分野でイノベーションが超加速している。
その多くは中国のインフラ投資を受けての成長だ。もはや右を向いても左を向いても中国、と言わんばかりに中国製品や中国主導のプロジェクトが進行しているのがアフリカなのだ。
そして、筆者はこの現象を「日本がすでに通ってきた道」と位置づけ、「日本は自国で起こったことを復習し、アフリカでビジネスをもっと推し進めていくべきだ」と述べている。
その理由がとても面白い。なぜなら、アジアでもアフリカでも、世界のどの国であっても、一人当たりGDPの増大と社会的変化が似たパターンを辿るからだ。
一人当たりGDPが1,000ドルを超すと、中所得者向けの公団住宅を国が整備し始め、都市のインフラづくりが本格化してくる。ショッピングモールの開業が始まり、地方から若者が続々と都市に流入してくる。これが3,000ドルを超すと、今度は外食産業が発達する。バーガーキングやスタバなどの外国のチェーン店が進出するようになり、交通の便が発達することで大型ショッピングモールがオープンしはじめる。そして1万ドルを超えると、消費文化の多様化が起こる。必需品だけでなく贅沢品やファッションにお金を使い始める。海外旅行ブームが起こるのもこのころからだ。中国人観光客がこぞって日本に来たのは、まさにこの1万ドルラインを超えたからだった(実際には都市の住人のほうが早く1万ドルに達するため、これからは地方の人間が日本にやってくるという)。
そして、これはまさに日本が通ってきた道に他ならない。日本人は1,000ドル、3,000ドル、1万ドルを超えたときに何が起き、何を欲していたかを経験している。ここに日本の「チャンス」があるというわけだ。
――どの国でも3,000ドル、都市で1万ドルまでは行ける。そして一足先に3,000ドル、1万ドル、2万ドルをこの50年で体験してきた日本人は、実は、どのタイミングで何が起きるかを、よくわかっているはずなのです。ファッション雑誌を出すのであれば、どのタイミングなのか。1万ドルなら、どんなものが必要とされるのか。そうした経験やノウハウを、もっと活かすべきです。
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とかくアフリカは未だ貧乏であり、汚職が酷いと思われがちである。実際に汚職が蔓延している国もあるのだが、昔よりもずっとクリーンになっている。そもそも、国が真っ当に発展すればそれに比例して悪事は少なくなっていくものだ。それに、汚職は政治家や警察組織、資源開発会社といった既得権益者のコミュニティのほうが多い。テック関係の市場は相当に若いため、ゼロからでも十分に立ち上がりやすいとのことだ。
アフリカの背景やアフリカ全土で進んでいるイノベーションを簡単に紹介する本書。図が多いためイメージが膨らみやすく、内容も専門的になりすぎずにとても分かりやすい。「アフリカへの偏見」を改めるには非常にいい書だと思った。
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【まとめ】
1 アフリカ・ファクトフルネス
・アフリカの広さは米国の3倍、日本の80倍。
・アフリカ全土の中位年齢は19.7歳という若さ。
・2050年には25億人の人口になると予想される。
・アフリカのおよそ半分ぐらいの人は、電気のない家に住んでいる。しかし、ソーラー充電方式や店頭での都度充電方式のプリペイドケータイ(中国製)が人気であり、携帯電話普及率は113%。
・M-PESAというキャリアアプリを使えば、「送金・決済・預金・ローン」という銀行の機能をすべて利用できる。スマホさえあれば銀行いらず。
・アフリカの売上高1000億円企業の数は約400社。産業構造は、第二次産業が少なく第三次産業が拡大している。
・アフリカでは飢餓より肥満の方が深刻化。
・所得水準や水道普及率など、アフリカの多くの地域は、日本の70年代に近い状態にある。
・インフラに関しては、一帯一路構想により中国が圧倒的なシェアを持っている。中国の物価水準とアフリカの物価水準は同じぐらいであり、かつ中国企業は納期を守り、現地で量をこなすので技術力もどんどん上がっている。
・中国は2017年時点で約30兆円をアフリカに投資している。これは日本の年間の国内インフラ投資規模と同じ規模。
・tiktokなどの動画アプリには、配信で商品を紹介し、そこから買ってもらえたらアフィリエイトが得られるという仕組みがある。世界ではこちらが主流になりつつあり、アフリカでもVskitという動画アプリが人気。
・格差は依然として大きい。ケニアの大卒の初任給(月給)は350ドルだが、ブルーワーカ―の日給は3~5ドル。
2 アフリカの医療テック
●Flare
民間の救急車配車プラットフォーム。アフリカではほとんどの国で公的な救急車サービスの仕組みがないため、病院などが所有している救急車をネットワーク化し、配車プラットフォームを構築している。
●LifeBank
血液専門デリバリーサービス。ナイジェリアの都市部で血液デリバリーを展開。アフリカには公的な血液バンクがないため、複数の小規模血液バンクと病院をつなげ、365日24時間、温度管理をしてバイクでデリバリーをしている。
●Helium Health
電子カルテ。ローカルで販売されている薬やローカルの保険会社と患者をマッチングさせ、200を超える医療機関にデータを提供している。
3 アフリカでの日本企業の存在感
今、アフリカに進出している日本企業は約500社、拠点は約800ある。日本人の数は約7500人。昔はもっと人がいたが、1980-1990年にかけての資源価格低迷による低成長が続き、日本企業の多くは撤退していた。
2000年代に入ると中国の資源爆買、インフラ投資により急成長していく。
現在は再び日本企業の進出が続いている。メインは自動車。中古車天国のアフリカでは日本車の人気が高いからだ。
日本からはFOB(本船渡し)ベースで20万円以上の車が28万4000台アフリカに送られている(2015年)。20万円以下を入れると40-50万台。スバルの日本での年間新車販売台数が約13万台(2019年)なので、その2〜3倍は販売されていることになる。
BE FORWARDという日本車のネット直販会社は、年商約500億円規模になっている。
4 アフリカへの進出パターン
①資源や一次産品などの獲得の場として進出する
②将来の有望市場として進出する
③生産拠点として進出する
④新たなビジネスモデルの発掘と実証の場として進出する
今アフリカで成功しているビジネスは、先進国とアフリカとの「当たり前」の差を認識し、アフリカならではのニーズに気づき、それを商品化・サービス化しているものだ。日本は自身の経済成長の過程から、1960年〜80年代で起きたこと、そして「当たり前」が段階的に変わっていくことを知っている。その仕組みを再度アフリカで作れれば勝機があるだろう。