小川紗良のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
児童養護施設の子どもたちの話。
花は、願いが届きもしないと知っていながら、ずっと母親への恋慕と、母からの愛情というものを欲していた。十年間、ずっと。
それはまるで、外の世界を知っていながら、綺麗に管理された水槽の中でぐるぐると回るしかない金魚のように。
花以外の彼らも、ある程度ものごとがわかるように成長したとき、それでもその小さな体で、なぜ血の繋がった家族と一緒に暮らせないのか、真実を知る。いたいけに、受け止めようとする。
そしてそれでも、本心では「母親」を求めている。自分のことだけを見てくれる「本当の家族」を。
突如施設で暮らすこととなった晴海。
強気なみっちゃん。
ぴかぴかなものと空想が好きな麦と里美。
やんちゃ双子の武彦と智彦。
未熟児で生まれた2歳の源ちゃん。
みんながみんな、愛おしかった。
いたいけで、優しくて、だけどしっかりとそれぞれの芯をもっている。
「かわいそう」と思うことは、無関心で無責任だ。
みにくいアヒルの子、マッチ売りの少女、親指姫。
モチーフとして登場する絵本が、いいスパイスになっていた。どの章も素敵だった。
小川紗良さん。俳優であり映像作家である。
(正直、名前を聞いたことがある程度で、どんな俳優さんなのかは全く知らないまま読んだ。)
華やかな世界で活動しているイメージがあるのにとても繊細な小説で、この人自身にとても惹かれ、興味が湧いた。
しかも初の小説執筆らしい。すごく好みな文体だった。
今後も新刊があったらチェックしたい作家さんになった。 -
Posted by ブクログ
児童養護施設を舞台にした小説。
主人公の花は、今年で18歳になり、高校卒業後には施設を出なくてはならない。自分の将来に対する不安や、施設で暮らさなければならなかったこれまでの人生に対する複雑な想いが、施設の子ども達やタカ兄との触れ合を通じて描かれている。
児童養護施設で暮らす子ども達は様々な事情を抱えている。いわゆる普通の家庭で育った私には、彼、彼女達のことはわからないんだと思う。何というか…わかったつもりになっているだけで、本当にはわかってない。
血の繋がった家族でも現実には理想郷のようなものではない。それでも、"家族"というのは、彼等が渇望して止まないものだ。
彼等はこの小説をどう読むだろうか?ちゃんちゃら可笑しいわ!って思うかもしれない。
それでも、ドキュメンタリーとは違って、小説として、児童養護施設の子ども達を主人公にすることに意義があると思った。この小説を読むことで、少しでも周りの理解が深まるかもしれない。関心が高まるかもしれない。ドキュメンタリーは読まない人も、小説は読むかもしれない。しかも著者が話題の方ならば尚更だ。
児童養護施設で健やかに成長できるように、巣立った後に、独り立ちできるまでの精神的、経済的な支えが得られるように。一人でも多くの人が関心を持って、少しずつでも社会が変わっていってほしいと願う。
物語については、主人公が18歳にしては少し大人過ぎると感じたが、"かわいそう"を強調しすぎない話が好感をもてた。どこかの施設で本当にありそうな
話で、そこに様々な社会問題が見え隠れする感じがとてもいい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ児童養護施設で暮らす花は、夏を迎えて18歳になった。翌春には施設を出るきまりだが、将来のことや遠く離れた母親のことで葛藤を抱えている。
――― (引用) ―――
家族とは、そんなに素晴らしいものだろうか。いつか読んだ本に、家族とは「自分から決して逃げない人」のことだと書いてあった。一度逃げられてしまった私たちは、この先その「家族」というものを、一体どう信じれば良いというのだろう。
――― (引用おわり) ―――
そんなある日、ぬいぐるみを抱えた女の子・晴海が施設にやってくる。複雑な事情を抱えながらも日々を懸命に歩む晴海の姿に、花はかつての自分を重ね合わせていることを知る。
――― (引用) ―――
「花、いい子でね」
いつになったら、私はあなたのいい子になれますか。いい子になれば、あなたはその手で私を撫で、優しく抱きとめてくれますか。
「いい子にしても、帰れないじゃん」
わかっている。晴海の言った通り、どんなにいい子になったって、帰れる場所もなければ迎えてくれる人もいない。あの人の言う「いい子」とは、解き方のない呪いなのだ。
そうとわかっていながらも、私はかつての世界の全てを手放すことができなかった。手放したくても、できなかった。あの人のいい子をやめてしまえば、私は誰の何になればよいのかわからない。あの人のいい子であること以外に、私は私自身を見出すことができなかった。その虚しさを自覚しながらも、もはやどうすることもできない。
私は心の奥底で、名もない金魚の奇跡を信じていた。信じなければ、今にも自分もろとも海の底へ引きずり込まれてしまいそうで怖かった。
「ママ、」
私は思わずあの人を呼んだ。
「ママ、」
届かぬ声が虚しく波音にかき消され、それでも私は呼び続けた。
「ママ!」
ずっと呼びたかったあの人の名を、ずっと呼んで欲しかった私の名を、今日、ここですべて流してしまおう。この世界の丸さに乗って、いつか優しさとなって返ってくる日を信じて待とう。私はその日まで、どんな荒波が押し寄せても、恐ろしい強風が吹いても、「おかえり」と言えるようにこの世界で生きていよう。
私たちに起きた事実は変えられないけれど、真実は自分次第だと、いつかタカ兄が言っていた。事実をどう受け取るか、それを抱えてどう生きるか、答えは出なくてもその道のりが自分なりの真実になると。
――― (引用おわり) ――― -
Posted by ブクログ
ネタバレ女優・映画監督として活躍中の小川紗良氏の2021年6月公開の初の長編映画監督作品を、自ら小説化した作品。映像を文字にしているので、背景も丁寧に描こうとしている。児童養護施設で暮らす花は、18歳になった。翌春には施設を出るきまり。花の母の事件からある事件を想起してしまったし、一生懸命生きている知人を思い出した。花は名もない「金魚」をの奇跡を信じて、願いを込め「金魚」を海に流す。
「世界の丸さに乗って、いつか優しさとなって返ってくる日を信じて待とう。私はその日まで、どんな荒波が押し寄せても、恐ろしい強風が吹いても、「おかえり」と言えるようにこの世界で生きていよう。」
施設にくる子どもたちはいろんな事情を抱えている。周りの人は何ができるのかなと読みながら思った。
「ここにいるということそれ自体に頭を下げながら日々を送る。」理不尽な理由でそんな思いを抱えて生きる人が減りますように。
「日々を重ねるしかない。」
希望にも絶望にもとれる言葉。希望になるよう日々を重ねるしかない。希望になる日を重ねられるよう、周りの人が互いに励ましあうしかないのかな。児童養護施設を退所した子どもを支援する、社会的養護にはゆるやかに自立する仕組みが必要という記事を目にしたことがあったので、できることをしていきたいなと読後思った。