北澤憲昭のレビュー一覧

  • 眼の神殿 ――「美術」受容史ノート

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    日本美術史のうち明治時代における西洋美術の受容に焦点をあてた本,タイトルや前評判から感じさせる難解さ(?)はそこまでなく,美術をやる上では知っておきたい内容。

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    2024年11月09日
  • 眼の神殿 ――「美術」受容史ノート

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    螺旋展画閣

    P.194
    …西洋近代が、中世における聴覚優位の知覚序列を視覚優位のそれに顚倒[テントウ]することによって開かれたということを想起させる。視覚の優位性というのは、ごく自然なことのように思わないでもないけれど、中村雄二郎もいうように、西洋中世においては聴覚が視覚以上に重視されていたのであり、このヒエラルキーが顚倒したときに近代がはじまったのであった。しかも、近代においては「視覚が優位に立っただけでなく独走した」のである(『共通感覚論』)。

    P.196
    ガラス・ケースとは、視覚に必要なへだたりが物質化された存在にほかならないのである。それは、見る者と事物のあいだに不可侵の距離を設け

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    2024年07月01日
  • 増補改訂 境界の美術史 ――「美術」形成史ノート

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     「美術」と言えば、美術館の展覧会や画廊に飾られている作品を大体イメージするのではないかと思うが、少なくとも日本に関しては、「美術」という概念は明治時代になって西洋から受容されたものであると著者は言う。その「美術」という概念が意味するところを知るために、「美術」という”言葉”の成り立ちを追求していく。当初今日の「芸術」の意味を担う言葉としてその歴史を開始した「美術」という語が、現在の視覚芸術の意味へと絞り込まれてゆくその形成過程を、多くの資料を元に読み解いていく。その中でも特に、工部美術学校や東京美術学校の開設、内国勧業博覧会の開催、そして「文展」の創設などが、制度=施設史として注目されること

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    2023年10月03日
  • 眼の神殿 ――「美術」受容史ノート

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     美術史研究を一変させた衝撃の書、との腰巻の文言に惹かれて手に取った。

     まずは、明治洋画の開拓者であった高橋由一が構想した「螺旋展画閣」の紹介から始まる。美術館なのか博物館か、何を目的としていたのか。構想図や由一の文章を基に丹念に追っていく。

     第2章は、「美術」という語の起源を、これまた詳細に辿っていく。どういう概念の訳語であったのか、美術か芸術か。これだけだと一見、訳語の変遷を検討しているだけのようであるが、第3章では、この訳語の定着と共に美術が制度化していく過程、フェノロサの活動の紹介、国粋主義の反攻に伴う日本画/洋画の関係の変化、教育機関や美術館の設立、国家の価値観による賞揚とい

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    2020年12月30日