松里公孝のレビュー一覧
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毎日新聞の書評欄「今週の本棚」で、加藤陽子が、読後ロシアの対ウクライナ戦争の印象がガラリと変わると評して絶賛した書である。
第六章のまとめで以下のように述べている。
『そもそも分離紛争は、「国の領土は大きければ大きいほど良い」、「領土を失うことは、人間が手足をもがれるのと同じ」などという国家表象を人々が捨て、国連信託統治のような非・主権国家的な解決法が大規模に採用されるようにならない限り、解決が難しい問題なのである。 最も現実的な紛争解決策は一時凌ぎの停戦協定を綻びを繕いながら、何十年でももたせて、人々の国家表象や国際法の通説的解釈が変わるのを待つことである。分離紛争を解決して恒久的な平和を目 -
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副題に「ソ連崩壊から露ウ戦争まで」とあります。いよいよ3年目に突入する今度の戦争の原点を2014年のクリミア併合に置く報道には接したことがありますが、そもそもをソ連が解体する際の手続きに求めるという指摘に驚きを覚えました。ソ連、連邦構成共和国、自治単位という三層構造のなかで行政区分である親国家優先主義が今回の戦争の原因としています。それがゴロバチョフとエリツィンの抗争から生まれていることも、なるほど…です。自治単位の中でも多数を占める民族とそうでない民族、あるいはもともといた民族の問題もわかっていませんでした。露ウ戦争は2022年2月24日から始まりますが、親国家であるウクライナの内戦はずっと
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ソ連の自壊の結果、たなぼた式で生まれたウクライナは、先祖伝来ウクライナ語でない言語で話し、書き、考えてきた住民、ウクライナ民族史観で英雄とされる人物たちに迫害された住民も抱え込んでしまった。そうした場合には、中立五原則に基づいて、民族国家ではなく市民的な国家を作ることが妥当な戦略であっただろう。残念ながら、独立後30年間のウクライナは、この反対の方向に向かって進んできた。特に、いわゆる親欧米政権においては、『経済実績が悪いので、選挙が近づくと民族主義=国民分断に頼る。その結果、ますます経済が悪くなる。』という悪循環も見られるようになった。
上記は本書からの一部抜粋であるが、個人的には、クリミ -
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既に1年半も戦禍が続く「ウクライナ」が、昨今の大きな話題であると思うのだが、本書は「ウクライナ」の情勢経過に関する本としては「非常に佳いモノの一つ」として挙げて間違いないと思う。
2022年2月からのロシアによる本格的侵攻を受け、「ウクライナ」に関しての知識が色々と求められ続けていると思う。そして関係する事項への観方も様々であろう。故に過去に登場している本が注目される場合も在ったと思う。そして2022年春頃からだと思うが、様々な本が登場し続けていると見受けられる。本書も、「あとがき」によれば2022年春頃から約1年で準備されたという。
現今の「ウクライナ」に関しては、1991年に現行の国の体制 -
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題名の「ポスト社会主義」という表現に強く惹かれて手にした一冊で、大変に興味深く拝読した。
本書では「社会主義」を標榜していた経過が在り、その限りでもない体制に切り替えて、以降に様々な経過を辿った国々の情況を取上げて論じている。数在るそうした国々の中から、本書で取上げられているのは、ポーランド、リトアニア、アルメニア、ウクライナ、モルドヴァである。殊にウクライナに関して興味深く拝読した。
公選の“大統領”が在って、同時に選任と任命の方法等は様々でも“首相”が在る体制を「準大統領制」と本書ではしている。米国のような「大統領制」と、日本のような「議会制」との中間のようで、そのニュアンスが色々と在るの -
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ネタバレトータルでいうと、全く好きにはなれない一冊なのだけど、
正直西側からすると「ほぼ狂気」にしか見えない露宇戦争だけど、あれはあれで支離滅裂にならないのは、あちらなり(特にあちらの「理詰めなインテリ」に共有できる)理屈がある。それを知るには非常にいい本だし、西側が軽視しがちなウクライナやその周辺が持っていた問題点を指摘している一冊でもある。
まず指摘されているのは、ソ連崩壊後旧ソ連地域の経済は一律に凹み、ロシアの復興とともになんとか回復していた、ということ。
数字的にはそういう風に受け止められる感じだし、それはウクライナに住んでいる人の多くにとっても体感的には正しかったと思う。
そりゃ西から -
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新書とはいえ400ページ弱。戦争前のウクライナ政治をより理解したくて1年前に読み始めたのだが、間隔を空けてしまったら内容についていけなくなり途中で一度挫折。改めて最初から読み始めたが、なんともユニークで面白い本である。扱っている5か国も、本書で主題となっている「準大統領制」も、普段なかなか理解する機会がない。
頭の整理も兼ねて書くなら、大統領制、議会制でもない「準大統領制」においては、大統領は選挙によって選ばれる(議会が選出するのではなく公選であることが条件である)。一方で、首相も併存しており、そこに3つの小分類がある。
- 大統領が自由に首相を任命できる「高度大統領制化 準大統領制」。首相 -
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2022年のロシアのウクライナ侵攻以後のニュースでの多少の知識を持っただけの素人の私が、軽い勉強気分で購入した本書だが、ベースとなる知識がかなりないと読みこなすのはとても大変と思う。
ウクライナの独立からマイダン革命までは前著「ポスト社会主義の政治」(未読です)に譲り、マイダン革命以後のウクライナについて書かれていることに注意必要です(気づいていなかった)。
マイダン革命を中心とするウクライナと、ウクライナからの自治権獲得あるいは分離独立闘争、ロシアへの編入を望むクリミアおよびドンバスについて、2023年5月17日(あとがきの日)までの、政治学見地の内容。
ロシア語ネイティブ住民の抵抗、 -
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この問題の本当の専門家が書いたという感じの本。
著者は、ロシアやウクライナの現代史の研究家で、ソ連崩後の歴史的な文脈の中で今回の戦争に至るまでのプロセスを丁寧に分析している。
ロシアが一方的に悪いわけではなく、ウクライナという国が元々持っていた矛盾(その矛盾は、ソ連の統治時代の矛盾を引き継いだものだが)と関係があり、一筋縄ではいかない。
ウクライナという民族や言葉、文化が違い、地域ごとのアイデンティティもかなり違う国がどうやって国として統合するのかという問題に、ロシアが絡んできて、泥沼なんだろうと思う。
ここで、仮にウクライナが今度の戦争で2022年の開戦前の状態、あるいは2014年よ -
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準大統領制 国民が公選する大統領が首相を任命する体制
②高度大統領化準大統領制:任命に議会承認不要:台湾、スリランカ
③大統領議会制:議会承認必要:ロシア、カザフスタン、ベラルーシ、議会解散権
④首相大統領制:議会が首相候補を指名し大統領が任命または事前協議:ポーランド、リトアニア ウクライナ モルドヴァ アルメニア
準大統領制以外
①大統領制 :首相は存在しない:米国
⑤議会大統領制:大統領が議会により選ばれる:ドイツ、イタリア
ソヴェト制=議会制 実質単一政党
→ 体制崩壊により複数政党の体制転換
憲法改正を繰り返し、首相大統領制へ
ポーランド
共産主義打倒「連