関谷敦子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本来、世界は寂しさに満ちていて、すべての存在は孤独だ。困難の末に正義や真実が勝利し、不正が正されたとしても、最終的に善が栄えて悪が滅びる勧善懲悪が実現したとしても、あるいは、必要とされた復讐を成し遂げたとしても、依然として、世界は寂しく、人間は孤独であって、この事実は永遠に変わらない。
…この物語が、よそよそしく荒々しい世界において、寂しく孤独な方法で、それぞれに孤軍奮闘している読者の慰めになればと思う。
ー著者あとがきより
この短編集のお話はどれも結末はある種破滅に至り、SF、ホラーめいている。話の展開は理不尽さに微塵も容赦がなく、グロテスクにも感じる。
けれど全てのおはなしは上記の著者あとがきから引用した内容が全てと言ってもいいほどで、これらの物語がわたしに与えたのは恐怖ではない。恐ろしく思える物語たちの展開は、ありえないながらも現実的でーーそう、まるで事実が語られているのであって、語り手たちが望むような展開には都合よくならず、淡々と結末を迎え、途方に暮れ、事実を受け入れ(ざるをえなくな)る。
これらの物語は、たとえ展開はファンタジックでも、寂しく孤独であるが故に、我々の人生に、そういうものだから、そういうこともあるのだから絶望する必要はないと寄り添ってくれているようにも思える。
この本を読み始めた時には思いもよらなかった読後感だ。ワクワクしながら読み始めたらしんみりしてしまった。
どの話も良くて甲乙つけがたい。
以下目次。
呪いのウサギ
頭
冷たい指
月のもの
さようなら、愛しい人
罠
傷跡
楽しい我が家
風と砂の支配者
再会
あとがき
訳者あとがき -
Posted by ブクログ
ネタバレ韓国女性SF作家のウィットに富んだ秀逸なショート・ショート。ハラケイスケのイラストもよい。
〇おふとんの外は危ないから出ないで:突然ふとんの声が聞こえるようになった。
〇Siriとの火曜日:ロボット化したSiriのモニターに選ばれて
〇万物の理論:マックで統一理論を解明したところ宇宙が収束に向け小牝牛始める
〇#超人は今:超人にソウルの警察権限を与える法案の投票日に
◎バナナの皮:夜だけ空いている喫茶店のバリスタからのバナナの皮のお土産が物語を紡ぐ
・天国にもチョコレートはあるのか
・君の変身:手術を重ね変わり続けるホモの恋人との関係性
・透明ネコは最高だった
・運のいい男:町内の人々から無料でサービスを受ける、落ちは見えたが星新一風
〇魔導書:ドラゴン退治をする無敵の騎士は車に轢かれた悪夢をみるが。転生ものと思いきや落ちは昏睡状態の患者
◎スパゲティ小説」:面白い話をすればおいしいスパゲティができる鍋を前に小説家が物語を紡ぐ
・セックスのないポルノ -
Posted by ブクログ
シュールさと同時にリリカルさも感じるホラー短編集。奇想天外な設定ながら、ふいに引き込まれてしまう物語も多いです。
そこそこオーソドックスなホラーとしては表題作「呪いのウサギ」「楽しい我が家」がお気に入り。「呪いに使われる道具ほど、美しく作らなければならない」という言葉が妙に残ります。そしてその言葉の通りにあまりに美しいウサギのランプが引き起こす呪いの恐ろしさ……実に恐ろしいです。
シュールさ全開で面白いのは「頭」「月のもの」。どちらも主人公の立場からすると、恐ろしいというよりもひたすら嫌だなあ、という気にさせられます。あまりに理不尽で不可解。だけどいったいどうなってしまうのか、わくわくしながら読んでしまいました。
「冷たい指」「さようなら、愛しい人」「再会」はひっそりとした物寂しさが印象的な作品だし、「罠」「傷痕」「風と砂の支配者」はファンタジー調。よくぞここまで雰囲気の違う作品が一堂に会したものだと思います。どれも見事だなあ。 -
Posted by ブクログ
最初の一編が表題作「呪いのウサギ」なのですが、淡々とした語り口でどんどんと凄惨で容赦のない破滅を描き切っていて、なかなかのインパクトでちょっとばかりぎょっとしました。ただただ静かにひそやかに、いっそ詩を諳んじるかのような静々とした手つきで、グロテスクな残酷を描いていたのです。
その手管はどの短編にも発揮されていて、だからどのお話もアンハッピーに近いものばかりです。けれど、さほど後味の重さは感じないのです。なぜかと考えてみると、話それぞれの悲劇や苦痛のどれにもまったく寄り添わず、あくまで傍観者として、悲劇を遠巻きで描いているからかなと思えました。感情を描くのでなく、事象を描くことに尽くしている。だから下手に踏み入ってむごさに共鳴することなく、物語の顛末を読む方も静かに受け止められるのかな、と感じました。
ひたすらに運命に翻弄される青年の生きざまを描いた「傷痕」なんて、いちばん酷い話なはずなのに、その無残の痛々しさよりも辿った半生の運命の奇妙さをしっくりと受け止められる。下手に人物に共感させないけれど、その分、運命や物語そのものの不可思議さにしっかりと取り込まれる。そんな感覚で読めた、物騒だけれどしんみりとした物語たちでした。