毛内拡のレビュー一覧
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読書が脳にどのような作用をもたらしているのかを専門家が紐解いている最高に面白い本でした。私がとても興味深く感じたのは、第3章です。
言語処理をする時の脳の働きを教えてくれています。日本語は今の世界では珍しいタイプの言語で、「表意文字(漢字)」と「表音文字(ひらがな、カタカナ)」が入り混じっています。「表意文字」を読む時の脳の働きと、「表音文字」を読む時の脳の働きは違っていて、日本語を読む時はそれが同時に行われているというのです。英語をはじめ多くの言語は「表音文字」なので、日本語以外の言語を話す人たちとは、使っている脳の部分が違っているのだそうです。この効用があるのかないのかわかりませんが、日本でたまたま生まれて日本語が話せるだけなのですが、なんだかいい気分になりました。
読書は、脳科学者から見ると、脳という臓器にとって良い効果をもたらしてくれるものなのだそうです。読書は良い趣味らしいので、これからもいろんな本との出会いを楽しみながら続けていきたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
〈本から〉
特筆すべきは、小学校入学前の「読み聞かせ」が、子どものその後の読書週間に与える長期的な影響です。(略)
継続的で質の高い読書体験が、長期的な影響を及ぼす
情報が洪水のように押し寄せる今だからこそ、本当に大切なのは「質の高い情報を深く味わう力」。その力を鍛える最強のツールが、実は紙の本なのです。
(略)
そしてこの、紙媒体で五感をフル活用して本と向き合う「没入体験」こそが、実は内容の深い理解や記憶の定着を助けてくれることが、脳科学的にも明らかになっているのです。
「脳内マップ」が記憶を助ける
(略)これを脳科学では「空間的ナビゲーション」と呼びます。
スマートフォンによる読書は紙媒体より強い認知負荷を生じさせ、脳が過活動状態となることで、読解力が低下してしまうのです。
(略)
コンテンツそのものの「内容」だけでなく、情報を摂取する媒体の「物理的特性」が、人間の認知や学習プロセスに深く影響を及ぼしていることが明らかです。
脳は「快感そのもの」を追求しているのではなく、「報酬が得られる可能性を最大化すること」を目指しているのです。
わずか6分間の読書によってストレスレベルが最大68%低下することが報告された
特に睡眠前の読書は真理的な緊張の軽減や安眠促進につながるという報告もある。
書けないけれど「読めちゃう」漢字の不思議
「音を介さずに意味を直接把握する」という脳の働き方は、漢字特有の現象です。
(略) つまり、漢字を読む行為は、単に「言葉の意味を理解する」という言語的な処理だけでなく、脳の幅広い領域を使って視覚的・非言語的な情報を統合する、複雑な情報処理活動なのです。
私たちが普段何気なく読んでいるアルファベットやひらがな、カタカナなどの表音文字は、脳内でまず音への変換を行い、その後に意味理解を行うという処理ルールを持っています。
(略)
日本語を使うということは、それ自体が非常に高度な脳のトレーニングになっているのです。
音読の最も大きな特徴は、視覚、聴覚、運動感覚という複数の感覚チャンネルを同時に刺激することにあります。
「思い出す」という行為自体が、海馬を中心とした脳内の記憶ネットワークを活性化させ、記憶をより強固で再現しやすい状態に強化するのです。
他者に共感するミラーにユーロンシステム
読書は単なる知識の獲得にとどまらず、ミラーシステムを介した感情の代理体験や心の理論を通じて、他者の感情や視点をリアルに体験できるものなのです。
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『読書する脳』(毛内拡)は、「本を読むと頭が良くなる」といった漠然とした話ではなく、読書しているとき、脳の中では実際に何が起きているのかを脳科学の視点から解き明かしていく一冊です。
本書の面白いポイントは、人間の脳にはもともと「読書専用の機能」が備わっているわけではない、というところ。文字を目で認識し、意味を理解し、過去の記憶と結びつけ、頭の中で情景を想像する――読書とは、脳のさまざまな機能を組み合わせて行う、実はかなり高度な活動です。この仕組みを知ると、「ただ文字を追う」という読書のイメージが大きく変わります。
特に興味深いのは、紙の本、電子書籍、SNSなど、情報の受け取り方によって脳の使われ方や理解の仕方がどう変わるのかというテーマ。短い情報を大量に消費することと、一冊の本を時間をかけて読むことでは、同じ「読む」でも求められる認知活動が異なります。
また、読書によって得られるものを単なる知識量だけで考えていない点も印象的です。文章から状況を想像したり、他者の視点に立ったり、自分の知識と結びつけたりする過程そのものに、読書の価値があることが見えてきます。
AIが文章を要約し、欲しい情報を瞬時に教えてくれる時代だからこそ、**「わざわざ自分で本を読む意味は何なのか」**を考えさせられる一冊。読書好きはもちろん、最近本を読む時間が減った人にもおすすめしたい、読書という行為を科学的に見直せる本です。 -
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「心は存在しない」
前回読んだ本が重すぎて、軽めの本を2冊続けて読んだ。
が面白かったので、再度毛内拡さんの本で脳のお勉強を。
・寝ている間に流れる「水」が脳内を掃除している ・認知症と脳を流れる水、睡眠の意外な関係 ・脳の若さの秘訣は「すきま」にあった!? ・脳の「すきま」に拡散する物質が気分を決める
これ読むと本を読みたくなる。
これまではニューロンの神経伝達ばかり注目されてきたようですが、電気信号発しない細胞間隙、脳脊髄液、グリア細胞(主にアストロサイト)について注目しその機能について分かっていることを解説しています。
これまでの脳科学は、
ニューロン(神経細胞)が主役だった。
電気信号を出し、シナプスで情報を伝え、思考や記憶を作っていく、とうことかな。
でも最近の研究では、
脳はニューロンだけで動いていないと分かってきたらしい。
脳の中には、知られざる「すきま」があり、その隙間を満たす「環境」も含めて脳なんだそう。
細胞外隙間を満たす脳脊髄液は
老廃物の除去、脳の環境のを整え、脳全体の状態に影響するんだと。
脳って思ってたより曖昧な存在…?
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Posted by ブクログ
ネタバレ心をとても厳密に解説してると思います。あってるかはわからないけど、著者の解釈に同意です。
経験してるこの世界は自分の頭の中に再現された世界であって、脳みその数だけ世界は存在する。その隔たりは果てしないけど、コミュニケーションして、橋をかけないといけない。
今までの経験をもとに作られた知恵袋記憶と言う解釈機構もいい説明だと思う。
感知した情報を知恵袋記憶で解釈して脳内で世界を再現し、その中で暮らす。
恒常的無常は難しい概念だけど、ホメオスタシスと仏教的思想がマッチしてる事はわかった。
最後の九識は遺伝的な行動の癖とか、人間全体が持ってる感じ方の癖が制約条件って事かしら? -
Posted by ブクログ
■新型コロナウイルスをきっかけとして全身に生じた炎症が脳に移行してしまうことで「ブレインフォグ」と呼ばれる認知機能障害を引き起こす可能性があると考えられている。ブレインフォグとはその名のとおり、まるで頭に霧(フォグ)がかかったような感覚とともに、集中力や記憶力の低下が起きる状態をさす。パンデミックの収束後も、このようなコロナ後遺症に悩む人々が少なくありません。実はパンデミック以前から、「自己免疫疾患」や「慢性疲労症候群」によっても引き起こされることが知られていた。
■免疫力が下がるときに起きていること
「免疫力を下げる」要因は複数指摘されており、新型コロナウイルス感染症でも基礎疾患が重症化リスクを高めると言われていた。また、高齢者、肥満、喫煙も重症化の恐れがあるし、ストレス、睡眠不足、栄養不足などもある。
免疫力の低下を防ぐためには十分な休養と睡眠を取り、栄養バランスの取れた食事を心がけること、ストレスを溜めないことが大切と言われる。
■炎症がすべてのカギを握っている
私達の身体が、「本当は変化したくないけど、変化してしまったので元に戻す過程、つまり「恒常性(ホメオスタシス)」を維持する上で極めて重要な役割を果たしている。ホメオスタシスとは、すべての生命が共通で持っている原理・原則で、生体内の環境が一定の範囲内で保たれる動的な過程をさす。
ざっくり言えば、炎症は、外部からの侵入者を排除し、損傷を受けた組織の修復を行い最終的には体の平衡状態を回復させる過程に不可欠なもの。その炎症の役割は大きく分けると、「外敵の排除」、「修復の促進」、「警告」の3つに分類できる。
まず白血球などの免疫細胞が傷口に集まり、最近やウイルスを攻撃し排除しようとする。次に傷口周辺の血管が拡張し、血液量が増加する。これにより栄養素や酸素が傷口に供給され修復が促進される。さらに、傷口周辺の血管が拡張し、血流が増加することによって生じる「発赤」や体温の上昇により免疫細胞の働きが活発になる「発熱」、血管の透過性が高まることにより血液成分が組織内に漏れ、腫れを引き起こす「腫脹」、そして神経が刺激されることで感じる「疼痛」などの症状が現れる。これらの症状は異常が起こっていることを体全体に知らせる警告サインである。
■適度なストレスは脳を活性化させるが、過度のストレスや慢性的なストレスは免疫系の機能を低下させることがある。実際、身体から放出されるストレスホルモンは免疫応答を抑制する。つまり精神的なストレスが実際に身体に影響を与えてしまう。
■脳の免疫を担当する重要な細胞は「グリア細胞」である。特に「ミクログリア」は通常は脳の健康を維持するために損傷した細胞や異物の除去に貢献しているが、過剰に活性化すると神経炎症を引き起こし様々な神経系の病態を誘発する可能性も知られており、二面性を持つことが報告されている。
■血液脳関門とは何か
脳は「神経伝達物質」を駆使して繊細な情報伝達をしている。従って脳の外部から何かしらの化学物質が侵入してくると、その活動が撹乱されて正常な働きができなくなる。それを防ぐために、脳に余計なものが入ってこないように守るバリアの働きをする仕組みが存在している。これを「血液脳関門」という。
■ドーパミンは「快楽ホルモン」と呼ばれるが、本来の働きは報酬の予測であり、それ自体が快楽を生み出すわけではない。脳内ではドーパミンが「これから報酬が得られそうだ」という予測信号として働くが、その予測が的中して実際に心地よい刺激が得られたとき、他の神経伝達物質(例えばエンドルフィンなど)がより直接的快楽を引き起こす。つまり、ドーパミンはあくまで「ご褒美を期待する」アクセル役であり実際の「気持ちよさ」を作り出すのは他の仕組みや物質との相互作用である。
■セロトニンは「幸せホルモン」と言われており、セロトニンを始めとしたアミン類が脳内で不足することがうつ病の原因であると考えられている。
SSRIとは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の略称で、ただでさえ放出量が減っているセロトニンが脳細胞に取り込まれてしまわないように阻害する働きがある。
セロトニンの90%は腸で作られている。腸で作られたセロトニンは直接脳には届かないと言われている。一方、セロトニンの「前駆体」である5-HTPは脳に届く。5-HTPはトリプトファンというアミノ酸から作られるが、これを作っているのが腸内細菌であると言われている。従って、腸内細菌に問題がありトリプトファンから5-HTPが作られないと脳でもセロトニンが不足してしまうと考えられる。
セロトニン自身は決して、「幸せホルモン」ではない。セロトニンの本来の働きは、最適な覚醒をもたらす自律神経の働きを整えることであり、その結果として、心のバランスを保つという働きが生じている。
■日常生活における実践方法
「畏敬の念」が炎症性サイトカインの減少と関わっている可能性が示唆されている。 同じく大切なのが「感謝」の気持ち。たとえ小さなことでも「ありがたいな」「嬉しいな」と意識的に思うことで心が前向きになりやすくなり、ストレス反応も和らぐとされている。この「感謝」もポジティブな感情の一つとして注目されており、実際に「感謝日記」をつけることで幸福感や精神的な健康が高まるという研究結果も報告されている。
■交感神経系と副交感神経系の二つからなる自律神経系は相互作用こそが重要である。生命の本質は「常に変わらないこと」つまり恒常性にある。副交感神経系の働きの本質は昂った交感神経系を「元に戻す」ことにある。交感神経系が昂るのはそもそも、外界からの種々のストレスに対処するため。本当は変わりたくないけど外界が変化するから仕方なく変化するというかなり柔軟なことをやってくれている。
■慢性的な脳疲労を癒やす具体的な方法
二つの原理と三つの原則。
二つの原理。
①「禁止・禁止」の原理。これは自分で自分を禁止することをできる限りしないということ。
②「快」の原理。これは、自分にとって心地よいことを一つでも始めることを意味する。
三つの原則。
①健康によいとされることであっても、それが自分にとって嫌なものであれば、決してそれを行わない、または食べないこと。
②健康に悪いとされることでも、それが好きでやめられない場合は、とりあえずそのまま続けること。これによって、心理的なストレスを避けることができる。
③健康によくて、かつ自分がとても好きなことを一つでもいいから始める。または食べ始めること。 -
Posted by ブクログ
「心の病は、心の弱さのせいではない。脳という臓器の疾患だ。これが本書を通して僕が一番伝えたいことだ。」
この本の一番最初に書いてあるこれがすべてです。
精神疾患に対する「気の持ちようだよ」に、脳科学者・神経科学者である著者がはっきりとNOをつきつけてます。
脳内物質や神経の固有名詞が出てくる章では、「ニューロン」やら「シナプス」やら「アセチルコリン」やらの解説が暗号のように思えてギョッと焦りますが、落ち着いて読めば、ちゃんと易しく書いてくれているとすぐわかります。(高卒の私にも、ギリギリ理解できました。)
全章を通して、人間のさまざまな感情や認知機能、行動などにはすべて脳のはたらきが関係しているということを丁寧に解説してくれていました。
しかし、「関係している側面があるだけ」であるということにも触れています。
ーー「たとえば、脳を構成する脳細胞であるニューロンやグリア細胞、血管などをただ漫然と集めても脳にはならないし、心を生まない。心のはたらきは、これらのパーツの相互作用の結果として生まれるものだ。」
(「第8章 わたしってなんだろう」より)
つらいことがあったときや思い出してしまったときは、つい自己嫌悪ループに入りがちです。
知識がないと、そこでいとも簡単に「自分は怠惰でみっともない最悪な人間である」というひどく単純な決めつけに陥ります(本文で言うところの「過度な一般化」)。
しかし、それはいわば傲慢な自責思考であり、思考停止も同然だなと思う今日この頃の私には、大変ぶっ刺さりました。
怠惰もなにも、もしかしたら体調がそもそも悪いのかもしれないし、水分や気温や湿度や酸素が足りないのかもしれない。ていうかそもそも、怠惰になってしまうことは普通のことなのだから、だったら他の、うまくいきそうな工夫をしよう。
ーーそういうふうに考えることが、いわゆる「気の持ちよう」の逆をいくことなのだと思います。
著者が伝えたいことが短くまとまっていて、いい本でした。 -
Posted by ブクログ
頭がいいとは何かを脳科学から検討した一般書。IQや記憶力だけではなく、脳の持久力をキーワードとして提案している。ただ脳科学の最近の知見を紹介するだけでなく、以下のメモのような話は重要なことだと思う。
emotionは情動、feelingsが感情で、動物にも情動はあり、言語化されたものが感情として認識される。心も言語によって生成された感情のこと。
人生経験から特徴を抽出し一般化し概念化したものを知恵ブクロ記憶と呼び、これが人間の器量に繋がる。
ゾーンに入った状態とは脳のトップダウンの予測と実測値が誤差0で繰り出される状態かもという仮説。
アートは作品を通してアーティストの脳の中、その人がどう世界を理解しているかという知恵ブクロ記憶を見せてもらっている。具象的作品の鑑賞中はその作品を見ているが、抽象的作品の鑑賞中はそれを通して自分の内側を見ていることがの活発化する脳領域からわかっている。アート鑑賞は自分の知恵ブクロ記憶をアップデートする行為で、感覚遮断により自分の内部モデルを観測したり内受容感覚を観測するという点で坐禅も一緒。
脳の第一のフィルターである感覚のゲート機構、第二の経験と記憶から構成される予測、第三は発露するかしないか。心のモデルケースは自分にしかないので人の気持ちを理解するには自分の心に対する解像度を上げるべし。
脳の持久力を支えるグリア細胞、特にアストロサイト。
老子の知人者智、自知者明という言葉。真の聡明さとは自分を知っていること。心身ともに自分に対する解像度を上げることが必要。