千葉紀和のレビュー一覧
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ネタバレ出生前診断、障害者入所施設建設、社会的入院や治療拒否、ゲノム編集と受精卵診断、相模原殺傷事件と優生思想、遺伝差別、コロナによるパンデミックが起きたことから考える総障害化という分岐点。など様々な「命の選別」が起きている、起きてきたであろう状況からむしろ現代は優生社会化しているのではないかと世に問う一冊。
第1章出生前診断に関する章の中で、病気や障害を理由にした選択的中絶についての統計が取られていないということが書かれていて驚いた。あえて取っていないのだろうなと思われた。p52「現状を直視せず、タブー視して議論しないことが一番問題です」その後のどの章の問題についても言えることだと思う。
第2章 -
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ネタバレ優生思想をめぐる近年の主な出来事を取材した内容である。
障がい者施設の設立反対運動は明らかな差別であるから、間違いであり到底共感できないが、その他の事案については、自分の立場が違えばどう考えるだろうか。特に自分が遺伝病を持っていて子どもに受け継いでしまう可能性が高い場合などは。
やまゆり園の施設内の実態は目に浮かぶようであった。精神科病院や高齢者施設でも同じようなことを目にしている。管理者の責任は大きいと思う。
技術が発達すればするほど、使う人間の品格が問われるのだと思った。技術革新や拡がりを妨げることはできないだろうが、海外ではOKなのにという安易な考えはやめたい。現在進行形な規制などと並行 -
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1996年まで「優生保護法」という法律が存在
したのはご存知でしょうか。
要は、特定の障害や疾患のある人を「不良な
子孫を産む可能性のある人」として、不妊治療
させていたのです。
つまり障害者達を差別していたのです。
残念ながら、この差別意識は今でも様々な形で
表れています。
その最悪の例が2016年の相模原殺傷事件です。
この本ではその最悪の例とは別に、密かに進み
つつある差別意識=優生思想の事例をいくつも
取り挙げます。
「出生前診断」「遺伝子のゲノム編集」さらに
障害者施設建設をめぐる地域住民との争いまで
様々です。
このような問題は当事者意識を持つことが難し
いと思います -
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「旧優生保護法」問題を追ってきた記者が書くものだけに真摯に読ませる部分が多い。優勢思想に基づくものは「旧優生保護法」問題だけに済まず、現代では出生前診断の問題が横たわっている。また障害者施設建設への相模原事件反対運動など根は深い。相模原事件の問題も、後で次々と出てくる施設自体の問題。障害者を「排除」し、しかも安上がりな福祉で済ましてきた我が国の社会保障の根深い問題もある。今もあり、この先も続く優成思想に基づく様々な事象について、またそれが技術の進歩で見えにくくなっている現代だからこそ、常に注意してアンテナを張って、その根を見続けないといけないだろう。
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ーー安寧を願っているのに、最終的に個人が「排除」へと選択を迫られかねない社会を放置しておくこと、弱者と共に生きる方法を考え続けることを放棄してしまう「怠惰な思考」こそが、優生思想なのではないだろうか。(p.318 あとがきより)
重度の知的障害を持つ弟がいる、大学の同期。自閉症の長男を持つ、知り合い。次男が肢体不自由の同僚。彼ら彼女らの生き方には、そのことが重く関わっている。けれど、それを一括りに「不幸」と呼んでしまうことには抵抗がある。ままならなさから生まれる言葉や思いの深みの様なものを、常々、感じさせられているから。そして、逆に、そういう事情を知らない人たちからの彼ら彼女らに対する人物評 -
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まず圧倒的な取材力と熱量を感じた。これだけの内容を2人だけでカバーしているのは単純にすごい。筆者たちは冒頭で、『「論」ではなく「事実」を地道に積み重ねることで、社会の通奏低音を明らかにするとともに、誰も幸せにすることのない優生社会化を問い直す糸口を探りたい』と志高く宣言する。容易なことではないはずだが、まさにジャーリストが担うべき仕事であり、見事にそれを達成している。
生命倫理の分野で「リベラル優生学」や「新優生学」という言葉が登場して久しい。筆者たちはそうした知見は踏まえながらも難解な専門用語で誤魔化さず、ビジネス化の現場や学会の利権争いに踏み込み、時には「善良な」市民にも問いをぶつけ、そ -
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オランダには、ダウン症の子供がいない。
NIPT新型出生前診断が公費で受けられる。
日本では、自費だし、受ける要件は、日本産婦人学会により決められていたが、今は厚労省が、音頭を取りガイドラインを策定中。
NIPTを受け、陽性となった場合、障害者を産む可能性がある為、中絶する。
先天的な障害者を無くす、旧優生保護法の思想に近いものがある。
医療費、社会保障費の軽減にもなりうる。
障害者差別解消法では、その障害児を産みたくないから中絶する、と言う概念でもう差別しているのだが。
権利意識として、知る権利、障害者を持たない権利を口にされると弱いのだが、レイシストだね。
しかしね、障害は、先天的じ -
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第1章 難しく、集中して読まないと内容が理解できなかったです。
第2章 無知であることが、差別偏見を生む。障害者施設反対の実例を踏まえて理解できました。
第3章 我が子に障害があるのを受け入れられない親。その反対に、障害があってもなくてもうちの子だと言う親も出てきます。
第4章 親になって初めて自分が障害の原因を持っていたと気付き、2人目は健常者で産まれてほしいと診断を望む親。
第5章 そこまで選んでいいのでしょうか。
第6章 津久井やまゆり園、植松死刑囚。最初は障害者をかわいいと言っていたと知りました。
第7章 国が求めているのは、生産性のある人間だけなのでしょうか。
私が親になると -
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出生前診断には目先の利益、妊婦へ不安を煽る。思っていたより広まっているのだな。
特に興味深かったのは障害者を拒み施設反対運動をする地域住民の話。地価が下がるという根拠のない話から何をするか分からない危険因子を取り除く…など言い分は様々で説明会は聞く気がないから意味をなさないとかみんなで一致団結して工事を妨害するのが楽しいといった当事者の声など知ることができて良かった。
中には地道な努力で地域の反対者を味方につけられた例もあって希望もあった。お互い許し合うことができるなんてすごいじゃないか…
何かを排除したい気持ちにフォーカスを当てた本を読みたくなった。