柳谷あゆみのレビュー一覧

  • バグダードのフランケンシュタイン
    ーー今は全くの混乱状態である。起きているどの事件の陰にも論理など存在しない。(p.378)

    正直なことを言うと、読みやすい作品ではない。まず、名前が覚えられないからなかなか先に進まない。「あれ?これホテルのオーナーだっけ?ジャーナリストだっけ?ん?死んでる??」といちいち人物紹介に戻りながら読み進...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    怪物は、ネットリンチ、世論、戦争というシステムのような自己目的化するタイプの集合的行為なのではないか。
    フランケンシュタインの怪物に特定の顔がない、多くの人が顔を見ようとしても見られないのと、物語のわかりやすい筋が用意されていない、中心人物がいないというのは重なっている。イラクという場所が、多くのア...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    作者はイラクの小説家、詩人、脚本家、ドキュメンタリー映画監督。
    湾岸戦争が終わり、イラクに暫定政権が樹立した2005年のバクダードを舞台にしたイラク小説。未だに爆弾テロは日常的で、住民たちは民族も宗教も人種も入り混じり、彼らの使うものも世界中から集められた中古品。
    そんな混在の象徴として出てくるのが...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    『これらの法則に従って何かが起きるとき、人間は不思議に思い、こんなことは考えられない、超自然現象だと言う。また、最良の状況であれば奇蹟だと言う。そしてそれを作動させている法則を自分は知らないのだとは言わない。人間は自らの無知を決して認めない、大いに勘違いをする生き物である』―『第九章 録音』

    「誰...続きを読む
  • 無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅
     2011年のアラブの春を契機とした反アサド政権運動、武力闘争に発展した。シリアのイドブリ県等のトルコとの国境地域では、そこで生活していた市民の一部が武力蜂起し、一方で、この混乱に乗じ信仰の名の下に他国の傭兵で構成されるダーイシュ(イスラム国)等のテロ集団が跋扈する。元市民は、生活が困窮するなか、ア...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    日本からは欧州よりは近いのに遠く感じるイラク。

    舞台はイラク戦争(2003年3月20日 – 2011年
    12月15日)のさなかの2005年、連日自爆テロが
    発生する首都バグダード。

    古物商のハーディーはテロが発生した後、
    拾ってきた複数の人間の遺体を縫い繋いで、
    一人の遺体を作り出す。するとその...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    イラク戦争の後2005年のバクダードを舞台に理不尽に殺されたものたちの声が形となって現れたような物語.死体が縫い合わされて動きだすという設定がフランケンシュタインを彷彿とさせるがこちらはもう少し論理的?な説明がなされている.登場する個性的な人物たちが自分のことだけを考えて行動することで名無しさんと呼...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    面白い。そして興味深くもある。

    日常の中に自爆テロが存在するということ、そして神様が存在するということが、あぁ…こういうことなのか…とずっしりくる。
    もちろん、それが当たり前の世界で生きるその感覚は分かりえないのだけれど、なんだろうな…

    追体験とまでは言えないかもしれないが(おこがましい気がして...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    舞台は2005年、自爆テロが連日のように続くバグダード。物語は一人の古物商がテロで亡くなった親友の死を悼むかのように、親友を含む無数の遺体の各部を人間一人分の遺体に縫い合わせるところからスタートする。この遺体が自身を構成する各遺体の復讐を遂げるためにフランケンシュタインの如く動き出すー荒唐無稽とも思...続きを読む
  • 無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅
    アラブの春から始まった民衆のデモ,蜂起がどんどん違った方向に曲がっていく.
    シリアのアサド大統領と同じアラウィー派の筆者,シリアに入るには今は検問がありシリア人でないダーイシュやヌスラ戦線達が立ちはだかる.なぜシリア人である自分たちがそうでない人々に規制されるのか? シリアの街に入って毎日襲う空爆....続きを読む
  • 無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅
    シリアの混乱と現状。あまりにも過酷過ぎて、読みながらこちらも混乱。
    何故、神の名の下の暴挙がまかり通るのか。

    作者の女性達に向けられた眼差しだけが希望を灯していた。
  • バグダードのフランケンシュタイン
    粗筋に書いてある内容ではあるし、イラクという文化背景やその展開は、決して読み易いとは言い難いのだが、虚実不明な語り、それぞれ勝手な登場人物、現実と魔術的な内容が入り混じり、つい読み進む。
    文学的にも自爆テロの位置付け、名無しさんの存在の根源的意義など、文学的に追求すべきものはありそう。
    「百年の孤独...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    2005年、イラク、バグダード。爆弾テロが多発する町に住む人々と、「名無しさん」と呼ばれる怪物の話。
    息子の帰りを待つ老婆ウンム・ダーニヤール。爆発で友を失ったほら吹きの古物屋ハーディー。雑誌社で働き、社長のサイーディーに強く憧れるマフムード。占星術師を雇っている追跡探索局のスルール准将。
    それぞれ...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    「作ったもののせいで自らが破滅していく」という意味でのフランケンシュタインだと思いきや、まんまの怪物側かい、いいよ、嫌いじゃないよ、このホラ吹き老人のヨタ話を物語にまとめました的な展開、むしろ好きだよ
  • バグダードのフランケンシュタイン
    自爆テロが相次ぐ日常が舞台となれば、このあり得ない設定が逆に良いのかも。なかなか高度な作品かと思う。
    ただ、翻訳に少し違和感。エジプト人のしゃべりがいきなり関西弁だったりする。現地の人と差をつけたかったのだろうけど、アレっ?てなった。
  • バグダードのフランケンシュタイン
    テロが当たり前にある日常生活の中で起きた不可思議な連続殺人事件。
    自分の意志で動く死体の行く末、そして物語の着地点が見事でうわーっ!!と電車の中でひっくり返りそうになった。
    一番怖くて泣きそうだったのが「それでも政府の言うことは正しいのだ」という文章だった。
    何が起きたとしても、政府が言ったならそれ...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    自爆テロの絶えないバグダード。
    一人の古物商が街に散乱する遺体を寄せ集めて縫い繋ぎ、1体分の「身体」を作り上げる。その「身体」に、突然テロの巻き添えで爆死した1つの魂が入り込む。
    「身体」を得た彼は、魂である自分、そして自分の「身体」各部をいわれなき死に追いやったものに復讐すべく、彼らを探し出し、殺...続きを読む
  • バグダードのフランケンシュタイン
    2005年、イラク戦争後の混乱したバグダード。自爆テロの犠牲者の遺体を繋ぎ合わせた古物屋ハーディ、20年前に戦死した息子の帰りを待ち続ける老婆イリーシュワー、家族を残しテロの犠牲となり魂だけが残ったホテル警備員。三者により怪物『名無しさん』が誕生し、次々と殺人事件が発生する。噂を聞きつけハーディと接...続きを読む
  • 無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅
    私にとって良き下すことはほぼほぼ不可能内容。「理解できた、泣いた」というのは容易いが、所詮欺瞞に感じる・・あらすじを書き並べたところで感想・レヴューとは思えない。

    筆者は祖国シリアを出たのち、3回故郷に戻っている。1年かけて、同胞の呻きを見聞きし世界中にこの「場面」を伝える事を約して。
    自身が今の...続きを読む