都留康のレビュー一覧
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不安によりヤケ酒がススム
ってな事で、都留康(つるつよし)の『お酒の経済学 日本酒のグローバル化からサワーの躍進まで』
日本酒、ビール、ウイスキー、焼酎、RTD等の国産のお酒の経済学
ワインは載って無かったな……
普段は日本酒しか興味無かったけど、他のお酒の事も書いてあり中々面白い
それぞれのお酒の造り方や特徴、データで見る出荷量や税収、国内に留まらずと言うか、国内だけの販売では先行き不安により海外展開の歴史等。
それぞれのお酒によって税率が違ったり新規参入の法制度や免許制の違いにより参入出来たり出来なかったり等々
人口が減ってく中で更にお酒を呑まない人も増えてく状況に不安になっとります。
美味しいお酒が呑める事に感謝しないといけないなぁと酒蔵さん、居酒屋さん、酒屋さんに改めてありがとうと言いたいです
身体とサイフが元気な内は頑張って呑んで応援しないとね(笑)
2020年58冊目 -
Posted by ブクログ
■はじめに
以前に比べてお酒を飲む量がめっきり減ってきた。
20代の頃がとんでもない飲酒量だったこともあり、仕事や家庭など環境面の変化や、健康面を意識して減酒するようになってきたが、単純にアルコール分解の能力が下がったので飲めなくなってきたようにも感じる。
最近は量より質への転換を図っていて、特に「日本酒」の世界の奥深さに魅了されている。
ワインやウイスキーに比べて、日本酒は上質なものでも手頃な価格で買えるし、和洋問わず食事に合わせられるバリエーションがあるので、店で見かけると思わず手を伸ばしてしまう。
洋酒に比べてガブガブ飲むものでもないので、味わいながら少量で楽しむことができる。
ただお酒の味や食事との相性を楽しむのも一興だが、目の前のお酒がどんな理念や製法で作られ、今後どんな可能性を見せてくれるのかに想いを馳せるのも感慨深い。
本書は、そうしたお酒の楽しみ方をより一層広げてくれる一冊である。
■本書について
前著『お酒の経済学』に引き続き、経済学・経営学の視点+徹底した現場主義の取材をもとに「酒市場」を捉え直し、コロナ禍を経てお酒の在り方がどのように変化していくのかを描いている。
参入障壁の高い日本酒市場で活躍する新進気鋭の醸造所や、日本ワインの成果と課題、家飲み需要で人気を伸ばす「翠」などのクラフトジンの市場開拓など、最新のデータと学問的理論を土台に考察を深めている。
特に、梅酒市場の研究は今まで見たことがなかったので、梅酒の開拓者チョーヤの経営戦略や、中野BCのBtoBマーケ事情など、新たな知見が得られてとても新鮮だった。
前作の読書記録でも書いたが、何より著者が大のお酒好きで、それが節々から伝わってくるので読んでいて楽しい。
■日本と欧米の居酒屋事情の違い
各酒の市場構造については本書を読んでほしいが、特に興味深かったのが日本と欧米の飲酒事情の違いである。
欧米では外食する場合、食事はレストラン、お酒を飲むのはバーと明確な役割分担があり、レストランではオードブルからメインまでを最初に一括して注文するのが一般的だ。
対して、日本の居酒屋は英国のパブやスペインのバルとは全く異なっていて、食事もお酒も渾然一体で楽しむことが多い。
こうした違いが生まれた背景は、各々の文化的プロセスを辿ることで理解できる。
例えば英国では宿場としての「イン」や、パブリックハウスの中で「バールーム」「タップルーム」「パーラー」のような階級の違いで飲酒の場が区分されていたことに由来している。
英国パブは情報交換の場としての機能があり、現在のクラブのVIPルームのように入場ゾーンが分けられていた。
一方日本では、江戸時代後期に参勤交代で単身赴任してきた多くの武士や地方の労働者からの、酒も料理も提供してほしいという外食需要が大きかったために、現在のような居酒屋形態が誕生した。
面白いのが当時の居酒屋メニューが結構豊富で、「ふぐ汁「あんこう汁」「マグロの刺身」などが提供され、酒は上方からの下り酒として伊丹の「剣菱」「老松」、「灘五郎」などが好まれたらしい。
その頃のメニューが体現された店があれば、是非とも行ってみたい。
また、明治時代以降の文明開花による飲食の洋食化、それに伴うビヤホールの誕生も興味深い。
居酒屋の「和」とビヤホールの「洋」が並立し、戦後はこの和洋が統合していくことで、現在の居酒屋チェーンの原型を成していったのである。
現在の居酒屋業界では、ワタミやモンテローザのような大手チェーンによる「何でも屋」から、鳥貴族や磯丸水産のような「専門店化」が進んでいる。
ただし、個人経営のお店では専門店化の功罪が認識され始め、顧客とのコミュニーケーションとフィードバックを重視した経営手法へと見直されている。
■おわりに
本書では、近年隆盛している醸造所・蒸留所併設型(地産地消型)飲食店の「プレイス・ベースド・ブランディング」や、ノンアルコール市場拡大と選択肢の多様化など、今後の酒市場の予測や提言が多くなされており、酒好きにとってキャッチアップしておくべき情報が豊富にある。
本書を通じて、改めてコロナ禍以降のお酒の在り方を再認識でき、より広く深くお酒を楽しめそうだ。
人間関係を円滑にし、人生をより豊かにするための「潤滑油」として、これからもお酒を味わいたい。 -
Posted by ブクログ
■お酒のツマミに経済学はいかが?
今までに酒にまつわる本をいくつか読んできたが、例えばウイスキーについての本なら、歴史や蒸留法、蒸留所の成り立ち、ボトルごとの味の違いやこだわりなど、お酒そのものにまつわる書籍が多かった。
本書はそれらの概説書とは毛色が違い、「日本のお酒の生産から消費まで」を経済学と経営学の視点から読み解き、各種酒類(日本酒・ビール・ウイスキー・焼酎・RTD)の特徴や動向を分析し、今後どのような展開を迎えるのかを論じている。
中公新書にありがちな、いわゆるお堅い経済学書かなと思って読んでみたら、もう全然違った。これめちゃくちゃ面白い。
まず平易な文章で読み易いし、新書ということをちゃんと意識して各論ともコンパクトに簡潔にまとめてあるから、飽きずにスイスイ読める。
そして一番の驚きは、お酒を経済学で読み解くというより、むしろ経済学の基本的な理論や概念を「日本の酒市場」という極めて特異な分野に当てはめて分析していく「経済学の実践書」だったということ。
この本、経済学部生やこれから経済学を学びたい人たちに、教科書の副読本としてすげえオススメしたい。定番のマンキューやステイグリッツの教科書は基本理論や概念を押さえるのにとても良い本だけど、それらの本だけで身に付けた知識を現実に応用していくのは正直難しい。でもこの本ではそれを鮮やかにやってみせている。
■ 酒市場の最新研究
経済学の入門編には「需要と供給」や「インセンティブ」という超基本の考え方が大抵挙げられるが、本書の第一章でもこの2つの概念を使って、日本の高度経済成長期からバブル崩壊、失われた20年の間でいかに国内酒類消費の減少を辿ったかが説明されている。
また、差別化理論の1つである「戦略的ポジショニング」を切り口に、獺祭(だっさい)で有名な旭酒造と、灘や伏見の日本酒ナショナルブランドの違いを比較したり、「水平的差別化」「垂直的差別化」の考え方から新政酒造の伝統回帰・地域性重視の戦略を読み解いたり。
ビール市場のような「ガリバー型寡占」において、キリン・アサヒ・サントリー・サッポロの大手4社がどのようなイノベーションを起こしていったかも取り上げていて、「キリンラガー→アサヒスーパードライ→発泡酒→クラフトビール」へのシェア変遷についてはミクロ経済学やマーケティング論の理解に役立つ。
「情報の非対称性」からジャパニーズウイスキーの表示法の是正を唱えたり、「規模の経済」を用いて黒霧島やいいちこに代表される大手焼酎メーカーの巨大化を説明したり。
その他、アルコール依存という「外部不経済」を是正するための「ピグー税(酒税の一本化)」や、鬼ごろしに代表される紙パック日本酒という「コモディティ化」による「同質化の罠」などなど。
みんなが大好きな「酒」という嗜好品を題材に、至るところで基本的な経済学理論が興味深く繰り広げられる。
酒好き同士なら盛り上がりそうな小ネタもちゃんと押さえているのがニクい。
ビール業界は酒税が高いけど免許取得は容易だから新規参入障壁が低く、一方で日本酒や本格焼酎業界は「需要調整要件」によって新規参入は事実上不可能だなんて全然知らなかった。
「若者の酒離れ」も経済学的に見れば、そもそも回帰分析するための異時点データが不足していて、健康志向要因なのか所得要因なのかもわからないから、この論争は決着が付かないみたい。
■おわりに
新書のコンパクトさゆえに、言葉の定義の曖昧さやデータ不足も指摘されるが、酒好きならそれを差し引いても充分楽しめると思う。
ちなみに俺はウイスキーを飲みながら読んだせいもあってか、スティーヴン・レヴィットの『ヤバイ経済学』とか『クルーグマン教授の経済学入門』くらいの満足感があった。
何がすごいって、おそらく著者はそんな実践書を目指して執筆したんじゃないということ。
あとがきにもあるが、ただただ昔から大好きなお酒にまつわる話をいつか語りたいと思っていて、もうすぐ還暦を迎えるし、長年専門で研究してきた労働・組織経済学の理論を使ってちょこっと夢を叶えてみようかという些細にして野心的な動機だったみたい。
素晴らしい。酒呑みはそうでなくちゃ。 -
Posted by ブクログ
各種お酒の世界を経済的な側面から切り取った一冊。経済学者らしく歴史を振り返りつつ、現状を分析し、未来への提言を行う。
本書に「国による酒類への政策的介入の2つの柱は、酒税法と免許制度である」とあるが、発泡酒や新ジャンルの隆盛、日本酒や焼酎の新規参入がないことなどを考えれば、政治や政策が酒のありようを変えてきたこともうかがえる。
そういえば、明治においては酒税は日本の基幹税ともいえる税金だった。酒蔵は地域の名家だし、逃げないから徴収しやすかったのだろう。
「新規参入組の政策は『よいものを安く』ではなく、『ユニークなものをより高く』」。昨今、ビールやウイスキーで、非常に個性の強い製品やバラエティに富んだ製造業者が出るようになってきたのは、ある意味“放置”されているからかもしれない。おかげでいろんな味や香りが楽しめるようになった。
このところウイスキーの蒸留所がずいぶん増えたと思っていたが、本書に紹介されている製造免許の取得状況のリストを見ると、まだまだ増えそうである。「熟成」というビジネス上のリスクの高い工程を経るため、「ウイスキーは小規模事業者には難しい」と思っていたのだが、正直驚いた。大手も新規参入組も含めて、製品価格が心配だ 笑。
可能性を感じたのは、焼酎の世界。独自の蒸留技術を持っていたり、原料の多様性があったり。熟成にもチャンスがあるかもしれない(一定以上の色がついてはダメという酒税法の改正が必要になるだろうが…)。ジンのようにハーブを加えれば、味や香りの組み合わせは無限に広がるし。
日本酒については、普段から少しマニアックな方向に行き過ぎているのが気がかり。やる気のある若手の台頭で下げ止まってはいるとは言われるものの、生産量が「1871年(明治4年)を下回るとは衝撃的ではないか」。
国内では事実上、新規参入が認められていないため、海外で清酒の醸造所の立ち上げという形で新規参入が行われているとか。
世界で29の“sake醸造所”が操業中で、開業予定の醸造所も11あるという。獺祭など、世界を意識した動きをとっている酒造メーカーは別にしても、海外から安価で高品質な清酒が流入してくれば、窮地に立たされるところも出てきそうだ。他業界の老舗と同じように事業承継問題も抱えているだろうし……。
うまいまずいとか、○○が好きとか、△△秘伝の□□とかではない“酒本”のアプローチは、ビジネスマンには腹落ちすること間違いなし。 -
Posted by ブクログ
ビール、日本酒、ウイスキー、焼酎の売上の推移やその背景について細かく説明がある。倍半分ところではない増減があるが、それらは理論的に説明できうる(「製品ライフサイクル」)というのが驚いた。
今後の発展のための低減にもページが割かれている。酒税や免許が複雑すぎて、業界の発展の妨げになっている面が大きいのではないかというのは頷ける。ただ、それを解消した場合に淘汰も進むだろうことは、検討が必要だと思う。発展を目指す小規模酒蔵の設備的な補助など。
本書を読んで、しらなかったことが結構あった。
「酒税法は、モルト原酒やグレーン原酒の原産地表示を義務づけていない。だから日本で貯蔵しブレンドすれば、それは「日本製品」になる」とか、「米国でサントリーが成功した理由」「日本酒と焼酎に新規参入は事実上不可能」など。
それぞれの酒の製法も復習になった。何度か他書で読んでいるものの、覚えきれない。