播田安弘のレビュー一覧
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ネタバレサイエンス専攻の日本史好きとして、この手の文理融合な話は大好物。著者は船舶工学を長らく専門とされてきた方で、日本史の様々なエピソードを船を中心に科学的に検証されている。
たとえば邪馬台国がどこにあったのか、ということで、当時の船舶技術から丸木舟を使った朝鮮半島との往来について、対馬海流の存在から但馬~出雲地方に重要な海洋拠点(投馬国)があったと説く。そこから西に行けば九州説となり、東に行けば近畿説となる。
また日露戦争における日本海海戦で帝国海軍がバルチック艦隊を撃破した「東郷ターン」と呼ばれる丁字戦法についても、ロシア側の石炭過積載と船底に付着したフジツボなどの影響でバルチック艦隊の機動力が低下していたことが指摘されている。いずれにしてもなるほど~という話だ。
そして糸魚川を中心に翡翠が獲れたために、それらと交換で朝鮮半島からの鉄を輸入していたという説は、日本海側にこそ高度な文明がいち早く興っていた理由を裏付けるものだ。いずれにしてもロマンをロジカルに裏付けていくのは、個人的にもやっていきたい分野である。 -
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《理知的》に日本を見つめる。
2023年10月読了。
前作に引き続き、科学的視点から「日本史」を見つめ直してみようと云う、今まで有ったようで無かった素晴らしい企画趣旨の本。
著者が《造船関係》を専門とする為、”海“が絡む歴史に偏ってしまうのは致し方無いが、島国日本であればテーマも少なくはない事も、これまた事実だ。
前作のインパクトの強さのせいで、今作はやや地味に感じてしまったが、中々の考察であり、歴史史家の方々も《素直に》こういった視点からの考察も受け容れていくべきだと強く思った。又、著者の”イデオロギーに左右されない中立な視点“を保っている事も、非常に好ましい長所だ。
理知的に日本史を見つめ、”正当に評価すべき自国の歴史“を、もっと素直に自国民が「誇っても良い」時代が来ることを、期待して止まない。そして《愛国心》がもっと冷静に理解され、”右翼的な名詞“とは受け止められない日が、一刻も早く来ることを望む。 -
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1.邪馬台国は始め九州、卑弥呼の死後、近畿に移った。
2.朝鮮出兵はスペインを牽制し植民地化を逃れるための策略。亀甲船が存在していたと仮定すれば、戦力は当時日本軍の主力だった関船の二倍(火力及び接近戦が不可な構造)。日本軍の兵站は当初より破綻していた。
3. 日露戦争の影の立役者は日銀副総裁だった高橋是清。莫大な戦費を捻出する為ロンドンで外債を募集。ヤコブ、ヘンリー、シフというユダヤ人銀行家(当時ロシア帝国がユダヤ人を迫害)が500万ポンド(5000万円、戦費の10%)を引き受けた。またバルチック艦隊は日本の偵察船と誤りイギリスの漁船を誤爆したことでイギリスが主要なアフリカ、アジアの港で補給を許さず船体は汚損しており、また当時の大型船は石炭を大量消費することから貯蔵庫だけでなく、甲板にも石炭を置き過積載の状態であった為、速力が大幅に低下していた(日本も同じ状況であったが海戦直前に甲板の石炭を捨て身軽になった)。 -
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船の専門家である著者が、日本史の謎に挑む、第二弾。
この本で問われているのは、以下の三つ。
1 邪馬台国はどこにあったか
2 秀吉は亀甲船に敗れたか
3 なぜ日露戦争の日本海海戦で完勝できたか
1は、糸魚川の翡翠とフォッサマグナの話に始まる。
その後日蝕のデータ検証、当時の造船技術や中国からの使節の航路の推定に進み…となる。
話がどこへ行くのかわからなくなりそうだった。
古代の交易の道と邪馬台国の関係を見ようとしていたのね。
2は秀吉の朝鮮出兵の意図を読み解こうとしたもの。
日本と朝鮮の軍船がどのようなものだったかを資料から検討し、日本の敗因を推定する。
日本が「鉄砲大国」であったこと、機動力のある軍船を持っていた一方、朝鮮に「亀甲船」が資料にあるように存在していたら、勝ち目がなかっただろうと推測している。
が、その「資料」があまりないらしい。
日本と朝鮮半島との不幸な過去のはじまりにあたるこの戦争について、特に朝鮮半島での研究があまりないというのだ。
国同士の関係によって左右されるという、歴史研究の難しさを思い知らされる。
わからないことはわからない、とするのが本書の筆者のよいところだと思うが、邪馬台国論争にしても、秀吉の意図にしても、はっきり新しい説が打ち出されるとか、既存の説のどれかが力強く支持されるというわけではない。
「答えが知りたい」欲は、すっきり満たされるわけでもない。
が、最後の章では問いに対して、わりとすっきり答えが出てくる。
東郷艦隊の「丁字戦法」だけが勝因ではなく、日英同盟がバルチック艦隊の航行に大きな支障を作り出していたことが背景にあるという。
造船技師の筆者ならではの知見が生かされていて、素人が読んでもわかるよう明晰に説明されている。
歴史研究は、他の分野の研究者と共同して進めていくことが大切と、改めて思う。 -
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船の専門家が日本史の謎に挑む、シリーズ第二弾。
今回は、邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦!
第1作では、なぜ船の専門家が?と思ったが、日本は周りを海で囲まれ、移動には船の力が欠かせない。
だから、古文書などの資料の他に、その道の専門家の視点で歴史を探る試みは非常に新鮮だ。
歴史学者、また、読者共に新しい知見を得られるように思う。
餅は餅屋とはよく言ったもので、斬新なのに思いつきではない内容はとても好ましい。
邪馬台国は今でもどこにあったかわからない。
しかし、翡翠と鉄の道という運搬航路や、日食、対馬海峡の様子などを合わせてみたときどこが妥当か…とした表は面白い。
自身で検証した結果、合理的解釈が、結局元の論争と同じくなるのは邪馬台国の不思議というべきか。
それともそんなものはとっくに検証済みで、私や著者が知らないだけだったのか。
日本海海戦は、まさに船の専門家らしい取り上げ方だ。
波の高さを求めるSMB法など、耳慣れない計算式もあるが、船速、加速度などから砲撃の有効性を叩き出す…とは…。
また、兵站や石炭の問題も同時に考察しており、この辺りはこれまで読んだ歴史関係の書籍ではなかなか見られない。
さらにさらに、フジツボなど海洋生物の付着を検討、なんて、歴史学の本では見たことがない!
歴史は歴史学者だけのものではない、と思わされる。
前作よりさらにわかりやすく、読みやすくなったようにおもう。 -
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蒙古襲来は日本の武士団もよく戦った、そもそも元と高麗の大軍が天候と海流の隘路を押して攻めてくるというのは並大抵の事ではなかった。兵員の疲労と上陸地や天候の問題があり時間をかけられなかったという事がすべて。
秀吉の中国大返しは信長継承への強い意志による、決戦のための情報入手・事前準備・周辺調略・海路利用等があった上で部隊の装備・食糧・排泄・軍馬や宿泊対応等総合ロジスティック戦の勝利であった。
戦艦大和は日本の技術が誇る世界一の能力を使いきれなかった指導体制・戦略の敗北でもあった。GDPの3%を費やし46センチ砲や鋼鉄強度と速度の卓越性は実現したが防御面で設計段階からの構造的欠陥が命とりになる。
いずれも、歴史の通説に対しては固定観念を捨てて現実を見据えデータで検証し柔軟に思考する事が肝である。 -
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歴史上の定説だったり、見解が分かれているものを、科学で読み解いていく『日本史サイエンス』の第2弾。歴史の専門家とは異なるアプローチによる解釈は新鮮だ。
著者は船の専門家だけに、船が関係している歴史の検証は特に精緻かつ深い。
ただし、サイエンスだけではないのも本シリーズの魅力。
「戦国時代の日本の鉄砲保有数は世界一」「江戸時代の日本人は数学の能力も高かった」「(日露戦争は)本格的な装甲を施した鋼製船を主力とする艦隊どうしが大砲を撃ちあった初めての大海戦」……。つい話したくなるような歴史上の蘊蓄も満載だ。
科学はちょっと苦手という向きでも十分楽しめる一冊。 -
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造船技術者としての立場から見た日本史上の大事件の検証もの。技術者としての立脚点から語られている範囲ではなかなか面白いのだが、それ以上の考察になると「〜と思う」で語る部分が増えてしまっていたのが残念。
蒙古襲来については、船の設計建造についての考察が技術者らしく興味深いのはもちろんだが、「上陸」についての視点と考察が大変良いと思った。船が身近であった人ならではだろう。海峡を隔てているというのは日本の安全保障上大きな利点であったことを改めて感じる。
秀吉の大返しについては、近年、兵站も網羅した軍事技術的な研究が増えているので、秀吉が海路を取った可能性も含めてあまり目新しいところはなかったように思う。秀吉が資金を潤沢に持っていたことと、兵站を重視する実務家だったことが大返しにおいては欠かせなかったと思うのだが、この点にあまり触れられていなかったことも残念。
戦艦大和については確かに時代遅れ説が巷間で語られがちだが、ドレッドノートを分水嶺として大型戦艦は建造に費用がかかりすぎ見直さざるを得ない時期を迎えていたのも定説である。それよりは、陸軍よりはリベラルとされがちな海軍においても、偉い人の設計ミスを指摘できないという組織的な問題により、致命的な構造欠陥が引き継がれていたという指摘の方が面白かった。
まあ結局けっこう面白かった。