播田安弘のレビュー一覧
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《理知的》に日本を見つめる。
2023年10月読了。
前作に引き続き、科学的視点から「日本史」を見つめ直してみようと云う、今まで有ったようで無かった素晴らしい企画趣旨の本。
著者が《造船関係》を専門とする為、”海“が絡む歴史に偏ってしまうのは致し方無いが、島国日本であればテーマも少なくはない事も、これまた事実だ。
前作のインパクトの強さのせいで、今作はやや地味に感じてしまったが、中々の考察であり、歴史史家の方々も《素直に》こういった視点からの考察も受け容れていくべきだと強く思った。又、著者の”イデオロギーに左右されない中立な視点“を保っている事も、非常に好ましい長所だ。
理知的に日本史を見つめ、”正当に評価すべき自 -
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1.邪馬台国は始め九州、卑弥呼の死後、近畿に移った。
2.朝鮮出兵はスペインを牽制し植民地化を逃れるための策略。亀甲船が存在していたと仮定すれば、戦力は当時日本軍の主力だった関船の二倍(火力及び接近戦が不可な構造)。日本軍の兵站は当初より破綻していた。
3. 日露戦争の影の立役者は日銀副総裁だった高橋是清。莫大な戦費を捻出する為ロンドンで外債を募集。ヤコブ、ヘンリー、シフというユダヤ人銀行家(当時ロシア帝国がユダヤ人を迫害)が500万ポンド(5000万円、戦費の10%)を引き受けた。またバルチック艦隊は日本の偵察船と誤りイギリスの漁船を誤爆したことでイギリスが主要なアフリカ、アジアの港で補給を -
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船の専門家である著者が、日本史の謎に挑む、第二弾。
この本で問われているのは、以下の三つ。
1 邪馬台国はどこにあったか
2 秀吉は亀甲船に敗れたか
3 なぜ日露戦争の日本海海戦で完勝できたか
1は、糸魚川の翡翠とフォッサマグナの話に始まる。
その後日蝕のデータ検証、当時の造船技術や中国からの使節の航路の推定に進み…となる。
話がどこへ行くのかわからなくなりそうだった。
古代の交易の道と邪馬台国の関係を見ようとしていたのね。
2は秀吉の朝鮮出兵の意図を読み解こうとしたもの。
日本と朝鮮の軍船がどのようなものだったかを資料から検討し、日本の敗因を推定する。
日本が「鉄砲大国」であったこと、 -
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船の専門家が日本史の謎に挑む、シリーズ第二弾。
今回は、邪馬台国、秀吉の朝鮮出兵、日本海海戦!
第1作では、なぜ船の専門家が?と思ったが、日本は周りを海で囲まれ、移動には船の力が欠かせない。
だから、古文書などの資料の他に、その道の専門家の視点で歴史を探る試みは非常に新鮮だ。
歴史学者、また、読者共に新しい知見を得られるように思う。
餅は餅屋とはよく言ったもので、斬新なのに思いつきではない内容はとても好ましい。
邪馬台国は今でもどこにあったかわからない。
しかし、翡翠と鉄の道という運搬航路や、日食、対馬海峡の様子などを合わせてみたときどこが妥当か…とした表は面白い。
自身で検証した結果、合 -
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蒙古襲来は日本の武士団もよく戦った、そもそも元と高麗の大軍が天候と海流の隘路を押して攻めてくるというのは並大抵の事ではなかった。兵員の疲労と上陸地や天候の問題があり時間をかけられなかったという事がすべて。
秀吉の中国大返しは信長継承への強い意志による、決戦のための情報入手・事前準備・周辺調略・海路利用等があった上で部隊の装備・食糧・排泄・軍馬や宿泊対応等総合ロジスティック戦の勝利であった。
戦艦大和は日本の技術が誇る世界一の能力を使いきれなかった指導体制・戦略の敗北でもあった。GDPの3%を費やし46センチ砲や鋼鉄強度と速度の卓越性は実現したが防御面で設計段階からの構造的欠陥が命とりになる。
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歴史上の定説だったり、見解が分かれているものを、科学で読み解いていく『日本史サイエンス』の第2弾。歴史の専門家とは異なるアプローチによる解釈は新鮮だ。
著者は船の専門家だけに、船が関係している歴史の検証は特に精緻かつ深い。
ただし、サイエンスだけではないのも本シリーズの魅力。
「戦国時代の日本の鉄砲保有数は世界一」「江戸時代の日本人は数学の能力も高かった」「(日露戦争は)本格的な装甲を施した鋼製船を主力とする艦隊どうしが大砲を撃ちあった初めての大海戦」……。つい話したくなるような歴史上の蘊蓄も満載だ。
科学はちょっと苦手という向きでも十分楽しめる一冊。 -
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造船技術者としての立場から見た日本史上の大事件の検証もの。技術者としての立脚点から語られている範囲ではなかなか面白いのだが、それ以上の考察になると「〜と思う」で語る部分が増えてしまっていたのが残念。
蒙古襲来については、船の設計建造についての考察が技術者らしく興味深いのはもちろんだが、「上陸」についての視点と考察が大変良いと思った。船が身近であった人ならではだろう。海峡を隔てているというのは日本の安全保障上大きな利点であったことを改めて感じる。
秀吉の大返しについては、近年、兵站も網羅した軍事技術的な研究が増えているので、秀吉が海路を取った可能性も含めてあまり目新しいところはなかったように思う -
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元寇
秀吉の中国大返し
戦艦大和
いずれの戦いや行動の可否、戦力などを数学や科学で検証。
元寇については神風が吹いて元寇は失敗し、集団戦法で戦う元に対して、ひとりで立ち向かう日本の武士というステレオタイプの考えがありました。
実際は台風はなかったし、日本の武士の騎馬隊の活躍、敵方の戦意の低さや、地形などで存分な戦力を送り込むことができなかったことが原因でした。
秀吉の中国大返しについても、陸路でなく海路を利用したのではというお話や、2万人の戦力を当てにしていなかったことも面白い話だと思いました。
大和についても、ほとんど活躍の機会が与えられないまま海の藻屑と消えましたが、当時にして最先端の戦 -
Posted by ブクログ
タイトルに魅かれて読んでみました。歴史は「素人」だとおっしゃる、船の設計者の方が書かれた本でした。
なるほど、タイトルが「日本史」+「サイエンス」なのはそういうことなのですね。
蒙古襲来の謎を、船の設計者の視点で検証するところからこの本が企画されたそうです。
面白い見方ですよね。
まるでイノベーション。既知のものと既知のものの組み合わせで新しいものができる。新たなジャンルの誕生ですね。
蒙古襲来の謎を解いた後は、本能寺の変。
移動距離、兵士や軍馬の数、物資、気候、地理的条件から考察するという、これもまた面白い切り口だと思いましたが、よく考えたら当たり前のことですよね。
学校教育の「日本