堀越ゆきのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本当の話だなんて? 19世紀、アメリカの奴隷制、黒人差別がどのように行われていたかこのような当事者の目で書かれたものを初めて読んだと思う。南部では白人に所有される黒人は逃亡して捕まれば鞭で打たれ殺されることもある、そして子供が生まれれば、その見た目ではなく母親の方の身分に分類され、奴隷の母親の子供は白人の主人の所有物となる、それが法律で決まっている。どんなに惨めか、どんなに理不尽だと思っても、法律で決まっているから、逆らえば社会全体が敵になる。
その中でも奴隷制に反対し命懸けでリンダを助けてくれる白人も多くいた。置かれた立場により、自分さえ安全圏にいれば社会構造や権力にたてつかず従順にし、自分がいつも善良な市民であると思い込むこともあるし、友情や正義のために命がかけられる勇敢な場合もある。そして生活に困れば簡単に仲間を売ることもする。全部人間だ。
どこの社会もそうなのかもしれないし、時代が変わっても人間の性質は思ったより変わらないのかもしれない。奴隷制に反対する北部であり、先進的文化や風土を持つはずのニューヨークですら法律が変わって逃亡奴隷狩りが行われだすのを読みながら、現代のアメリカや日本のことを考えた。
いち少女が現実に立ち向かい、ずっと苦しみ続けながら根気強く自分を保ち、神を信じ、家族を愛し、自由を求める姿に引き込まれる。泣き言を書きながらもリンダの筆跡は誠実で、誇り高く、力強い。
訳者(堀越ゆき)あとがきもよかったです。訳者はとても文章のうまい方だと思う。その後のリンダの話もあとがきで読める。 -
Posted by ブクログ
この本との出会いは、ほんの偶然、時間をつぶすためだったという訳者の堀越ゆき氏同様、私も、実家のある田舎の小さな小さな書店で、時間つぶしのために手に取ったことだった。
翻訳本、それも北欧ミステリー好きなのに、その書店にはそれの類が無く、仕方なく、、、期待もなく、、、海外コーナーわずか十数冊の中から選んだ一冊だった。
しかし、読み出したら止まらず一気読み。
作家でもない一人の奴隷少女によって書かれた彼女の過酷な実体験を綴った本作は、アメリカの古典名作ベストセラー・ランキングで上位というから納得である。
自由を得るために、彼女が選び自らに課した運命は、あまりにも悲痛なものであり、その痛みは想像を絶する。
最後に訳者によって語られる彼女の身内のその後には、言葉も失ってしまった。
彼女自身が持つ崇高な魂と、恵まれた有難い人々との出会いによって培われていく才気によって、過酷な運命を自ら切り開いていく彼女の強さから、生き方を学べたことは、この本を世に送り出してくださった歴史学者のイエリン教授や訳者の堀越氏に感謝しかない。
彼女が手にしようとした差別からの解放のための運動に対して、現在のアメリカの大学、航空業界、医療業界においては何%かの割合で黒人を受け入れることが義務付けられている。それは果たして、彼女が望んだ解放なのか?平等なのか?
彼女の自由を買い取るつもりでいる心優しい夫人の行為に対して、彼女は「自分の心が啓発されていくに従い、自分自身を財産の一部だとみなすことは、ますます困難になっていた。自分を痛ましく虐げた人々に金を払うことは、これまでの苦しみから、勝利の栄光を奪いとることのように思えた。」と考える。現代においては、有色人種であれ、女性であれ、各自の努力の上に手にしたものを最上で尊いと受け止めていくことが、彼女の生き方に近い気がした。優遇は、彼女の求めた平等や解放ではないはずだ。
彼女の如き、気高い精神を持ち、常に努力を怠らず、自己を磨いていきたい、と思えた。
私にとって、時間つぶしが珠玉の一冊となった。 -
購入済み
衝撃
奴隷の女として生まれたから、という理由だけで虐げられ逃げ続けないといけなかった少女の話。
アメリカの奴隷制、南部と北部の関係性については学校で習って知っていましたが、このような小説は初めて読み衝撃でした。今の世界が実際どのような人種差別があるか実際のことろわかりませんが、少しでも平等になるよう祈るばかりです。 -
ネタバレ 購入済み
課題図書にして欲しい
夜寝る前に漫画の広告を気になって数話読み、本書に飛んで一気に読んだ。最初に思ったのは「ムラート」「母親に付帯する身分を引き継ぐ」この2点は高校の世界史で学んだが、本書を読むまで言葉の暗記でしかなかったと気づいたということだ。いかに白人男性にとって都合の良いことなのかへの気づき、その"都合の良さ"は現代日本でも多く見られるという気づきである。訳者の言うように、もっと早くに会ったならやりたかった夢への後押しをしてくれたとも思う。しかしそれだけでなく、今も日々行なっている”女性らしさ、女性なんて"という固定観念と不自由さに対しての改善を求める個人の戦いへの後押しにもなる本であり、その固定観念のもたらす男性への影響に対する個人レベルでの改善運動も後押しする本当だと思う。
Black lives matter だけでなく現代に連綿と続くあらゆる固定観念や不自由に対して少しでも関心を持つすべての人に是非読んで欲しい。 -
Posted by ブクログ
アメリカが奴隷制度を廃止する前、南部アメリカで奴隷として生まれた少女の半生の実話。本人が北部に逃亡し、晴れて自由の身になったのちに自身で実話として出版したが、文章力の高さから白人が実話の体で書いたフィクションとしてあつかわれ、100年以上の時を経て実話と証明された数奇な本。
筆者の人生も数奇で壮絶。
美しい筆者は主人一家の主人に貞操を狙われ続け、執拗な嫌がらせを受ける。筆者が選んだ自分を守る道は、自分を支援してくれそうな別の白人男性の子供を身籠ること。二人の子を産んだ筆者は、子供をいずれ自由の身にするために自身の逃亡という道を選ぶ。しかし主人の筆者に対する執着はすざまじく、主人が亡くなるまで筆者はその影に怯え、悩まされ、戦い続けることとなる。
逃亡生活の最初の7年間は、自由黒人である祖母の家の屋根裏にてすごす。
立つこともできず、筆者があけた覗き穴以外に光が入らない、暑さも寒さも過酷で雨すらしのげないその空間で、体はボロボロになってそれでも耐え続ける。その家で暮らす自分の子供にすら自身の存在を気取られてはならない、いつ終わるともわからない逃亡生活。
7年ののち、仲間の采配により北部に渡船で逃亡し、その後は出会う人に恵まれて自分と子供2人の自由を勝ち取る。
白人の都合で自身や大切な家族の運命はいつでも一瞬で暗転する可能性に脅かされ続ける人生を強いられ続けた半生。実際に奴隷として一生を終える人たちは一生それが続き、そういう人たちがその時代、何人いたのだろう。
筆者はその中で冷静に自身と子供のためにその時できる最善と思われる選択をとり続ける。とても勇気があり、冷静で、聡く、家族思いで希望を捨てない筆者の半生は、創作と言われても仕方がないほどのインパクトがあった。
また、筆者が伝えた、奴隷制度は白人も不幸にする、という考えが印象的だった。
私もその時代の白人として生まれていたら、黒人を人として扱わないような人間にきっとなっていたのだろう。夫が黒人奴隷と子供を次々作っていく事実に心を削られ、黒人女性に嫉妬し嫌がらせしその人たちを殺めていたかもしれない。