【感想・ネタバレ】ある奴隷少女に起こった出来事(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身籠ることを――。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遥かに凌ぐ〈格差〉の闇を打ち破った究極の魂の物語。

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Posted by ブクログ

これが実話だと信じたくない、読み進めるのが辛かった。
ふと某死刑囚の“きみはまだ試されていない”という言葉を思い出した。自分が奴隷だった場合、奴隷所有者だった場合、それぞれでどんな人間になっているだろうかなどをぐるぐる考えてしまって、とにかく疲れた。

解説にある“人間力をつけるためにも、本書は必読だ”に強く同感する。

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2025年11月06日

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ネタバレ

 本当の話だなんて? 19世紀、アメリカの奴隷制、黒人差別がどのように行われていたかこのような当事者の目で書かれたものを初めて読んだと思う。南部では白人に所有される黒人は逃亡して捕まれば鞭で打たれ殺されることもある、そして子供が生まれれば、その見た目ではなく母親の方の身分に分類され、奴隷の母親の子供は白人の主人の所有物となる、それが法律で決まっている。どんなに惨めか、どんなに理不尽だと思っても、法律で決まっているから、逆らえば社会全体が敵になる。
 その中でも奴隷制に反対し命懸けでリンダを助けてくれる白人も多くいた。置かれた立場により、自分さえ安全圏にいれば社会構造や権力にたてつかず従順にし、自分がいつも善良な市民であると思い込むこともあるし、友情や正義のために命がかけられる勇敢な場合もある。そして生活に困れば簡単に仲間を売ることもする。全部人間だ。
 どこの社会もそうなのかもしれないし、時代が変わっても人間の性質は思ったより変わらないのかもしれない。奴隷制に反対する北部であり、先進的文化や風土を持つはずのニューヨークですら法律が変わって逃亡奴隷狩りが行われだすのを読みながら、現代のアメリカや日本のことを考えた。
 いち少女が現実に立ち向かい、ずっと苦しみ続けながら根気強く自分を保ち、神を信じ、家族を愛し、自由を求める姿に引き込まれる。泣き言を書きながらもリンダの筆跡は誠実で、誇り高く、力強い。
 訳者(堀越ゆき)あとがきもよかったです。訳者はとても文章のうまい方だと思う。その後のリンダの話もあとがきで読める。

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2025年05月31日

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私も、偶然本屋さんで手に取り、読み止められなくなった一冊。確かに少女のころ、(同時代作家の)若草物語や小公女ではなくて、これを読んでいたら、現実の立ち位置をもっと理解していたかもしれない。思い通りにいかなくとも、夢砕けたとしても。

(リンダの強さの下地は祖母のマーサにあり、そのマーサの立場にあるのだと思う)

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2025年02月23日

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フィクションを読んでいるような気持ちになるほど、壮絶で波乱に満ちた内容だった。
奴隷制の実態と「自分の人生を生きるとはどういうことか」を見せてくれた著者に感謝したい。
物語調で『アンネの日記』より読み進めやすい。
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読者よ、わたしの物語は自由で終わる。
絶対に屈しない。自由を勝ち取るまでは――残酷な運命に立ち向かった少女の魂の記録。人間の残虐性と不屈の勇気を描く奇跡の実話!

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2024年07月28日

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この本との出会いは、ほんの偶然、時間をつぶすためだったという訳者の堀越ゆき氏同様、私も、実家のある田舎の小さな小さな書店で、時間つぶしのために手に取ったことだった。
翻訳本、それも北欧ミステリー好きなのに、その書店にはそれの類が無く、仕方なく、、、期待もなく、、、海外コーナーわずか十数冊の中から選んだ一冊だった。
しかし、読み出したら止まらず一気読み。
作家でもない一人の奴隷少女によって書かれた彼女の過酷な実体験を綴った本作は、アメリカの古典名作ベストセラー・ランキングで上位というから納得である。
自由を得るために、彼女が選び自らに課した運命は、あまりにも悲痛なものであり、その痛みは想像を絶する。
最後に訳者によって語られる彼女の身内のその後には、言葉も失ってしまった。
彼女自身が持つ崇高な魂と、恵まれた有難い人々との出会いによって培われていく才気によって、過酷な運命を自ら切り開いていく彼女の強さから、生き方を学べたことは、この本を世に送り出してくださった歴史学者のイエリン教授や訳者の堀越氏に感謝しかない。
彼女が手にしようとした差別からの解放のための運動に対して、現在のアメリカの大学、航空業界、医療業界においては何%かの割合で黒人を受け入れることが義務付けられている。それは果たして、彼女が望んだ解放なのか?平等なのか?
彼女の自由を買い取るつもりでいる心優しい夫人の行為に対して、彼女は「自分の心が啓発されていくに従い、自分自身を財産の一部だとみなすことは、ますます困難になっていた。自分を痛ましく虐げた人々に金を払うことは、これまでの苦しみから、勝利の栄光を奪いとることのように思えた。」と考える。現代においては、有色人種であれ、女性であれ、各自の努力の上に手にしたものを最上で尊いと受け止めていくことが、彼女の生き方に近い気がした。優遇は、彼女の求めた平等や解放ではないはずだ。
彼女の如き、気高い精神を持ち、常に努力を怠らず、自己を磨いていきたい、と思えた。
私にとって、時間つぶしが珠玉の一冊となった。

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2024年03月26日

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アメリカのかつての奴隷制度の、人を人として扱わない惨さ。ノンフィクションであることが怖いくらい。

体を伸ばすこともできない屋根裏部屋で7年間、死と隣り合わせで隠れて生活をしたり、北部に無事逃げてからも”持ち主”であるドクターフリントの追手から逃げながら生活をしたり、、
その中でも生きることを諦めずに、また多くの人と助け合いながら自由を獲得する姿はかっこいいと思った。

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2024年02月16日

Posted by ブクログ

その時代時代にある「常識」や「正義」なんかは
全然違うもので、今の基準で当時を裁くわけにはいかない。

悪いものは悪いけどね。
ホロコーストとか。

名目上の奴隷制度はないけれど、
人間みんな金の奴隷になってる現代社会。
たとえ奴隷だとしても、リンダのように
気高く、愛をたくさん抱えて生きていたいものだ。

「夜と霧」くらい、
読んだ方がいいかもしれない本。

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2023年11月29日

Posted by ブクログ

・奴隷に人権はない。主人の命令に反することは犯罪
・人間的な主人は、めずらしく稀
・善意からはじまり誠意がこめられた約束も、守られるかどうかは状況次第

聡明で強い意志を持った著者のおかげで、このように酷い現実を知ることができた。
目を背けていたこと、無知だったことが恥ずかしい。

この本に出会えたことに感謝したい。

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2023年11月12日

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これが、わずか200年前に起きていた事なんて。
そして、今でも(ここまで暴力的なことは減ったとしても)かたちを変えてこの残酷な差別が横行しているなんて。
まずは知ることから。
フタをし、目を逸らさずに考え続けるを手放さないように。

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2023年09月29日

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事実は小説よりも奇なり
まさにその通りの小説でした。
人はそこまで残虐になれるのか。
人はどんな残酷な目に遭おうと、志し次第で生きられる。
主人公の信念、賢さ、洞察力に脱帽。
ネットで主人公のお写真を拝見させて頂いたが、意思の強そうな目をしていた。
内容が衝撃すぎて、感想を述べる言葉すら浮かばなかった。

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2023年08月23日

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130年以上前の奴隷だった女性の半生記。奴隷、という歴史の教科書の中の言葉が、なまなましい人の人生として息遣いを持った。
自由になるための彼女の強靭な意志と行動力に心打たれる。

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2023年07月30日

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タイトルからしてキツイ内容を想像できるのですが、本当にきついです。
最初から最後まで息つく暇もないほど、緊迫感と痛みを感じました。想像を絶する辛さです。

人間に所有という概念がある世界。
自分が自分のものでない存在。自分が何者かに支配され続ける人生、それが奴隷制度。

当事者だけにしか、本当の辛さは分からない。
私たちは想像することしかできないけれども、彼女の痛みは理解できるはず。

この本を読んで、思ったこと。
「自由」とは何か、よりも「自由でない」事とは何かを考えさせられました。

自由でない状況とは、、、
やりたいことができないということではなく
イヤなものを「嫌だ」といえない状況なのではないでしょうか。

先の見えない中で自由を求め、あきらめずに命がけで戦い続ける著者の姿は私たちに勇気をもたらしてくれる。

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2023年07月26日

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あまりに辛く、、衝撃的な内容でした。

奴隷として生まれた少女リンダ・ブレント(ハリエット・アン・ジェイコブズ)が、自身の半生を綴ったノンフィクションストーリー。

辛い境遇にいながらも、リンダは希望や信念、誇りを持ち続けた。
そして守るべきものがリンダを更に強くした。

リンダの生き方はとても心に響いた。
感動とはまた違う、これはどういう感情なのか今は言語化が難しいけど、リンダの生き方に大きな衝撃を受けたことは確か。

リンダ・ブレントに畏敬の念を込めて。

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2023年07月12日

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とにかく衝撃的。実際に奴隷少女だった著者が、本名だと捕まるのでペンネームで書いた実話。
「小説は確かに面白い、でもフィクションよりも圧倒的に考えさせられる実話です」という本屋さんのポップに惹かれて買ったけど、本当に読んで良かった。
当たり前に人間が売買され、モノとして扱われ、もし殺してしまっても罪に問われない恐ろしい制度。目を逸らしたくなる残酷さだけど、こういう暗黒の歴史を知るのは大切だと思う。読んで良かった。

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2022年12月28日

購入済み

衝撃

奴隷の女として生まれたから、という理由だけで虐げられ逃げ続けないといけなかった少女の話。
アメリカの奴隷制、南部と北部の関係性については学校で習って知っていましたが、このような小説は初めて読み衝撃でした。今の世界が実際どのような人種差別があるか実際のことろわかりませんが、少しでも平等になるよう祈るばかりです。

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2020年12月10日

ネタバレ 購入済み

課題図書にして欲しい

夜寝る前に漫画の広告を気になって数話読み、本書に飛んで一気に読んだ。最初に思ったのは「ムラート」「母親に付帯する身分を引き継ぐ」この2点は高校の世界史で学んだが、本書を読むまで言葉の暗記でしかなかったと気づいたということだ。いかに白人男性にとって都合の良いことなのかへの気づき、その"都合の良さ"は現代日本でも多く見られるという気づきである。訳者の言うように、もっと早くに会ったならやりたかった夢への後押しをしてくれたとも思う。しかしそれだけでなく、今も日々行なっている”女性らしさ、女性なんて"という固定観念と不自由さに対しての改善を求める個人の戦いへの後押しにもなる本であり、その固定観念のもたらす男性への影響に対する個人レベルでの改善運動も後押しする本当だと思う。
Black lives matter だけでなく現代に連綿と続くあらゆる固定観念や不自由に対して少しでも関心を持つすべての人に是非読んで欲しい。

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2020年08月09日

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時代を超えて、千年後にも読み継がれるべきノンフィクション。
南北戦争以前の奴隷制度が隆盛を極めていた時期の、奴隷の価値観・信念が生々しく描写されており、読者を感情移入させる。
奴隷制が本当に悪であることが理解できる一冊。
自由であることが保障されている時代・地域に生まれることができてよかった。
この自由を、全世界で全人類が享受することができる日が来ることを願う。

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2025年02月10日

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教養として読むべき一冊。

奴隷制度というものがあった、それはどのようなものなのかを知れる。また、奴隷でありながら負けない心を持った著者を見て必ずなにかを感じると思う。
海外作品だがかなり読みやすく、スッと読める。

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2024年10月31日

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アメリカが奴隷制度を廃止する前、南部アメリカで奴隷として生まれた少女の半生の実話。本人が北部に逃亡し、晴れて自由の身になったのちに自身で実話として出版したが、文章力の高さから白人が実話の体で書いたフィクションとしてあつかわれ、100年以上の時を経て実話と証明された数奇な本。

筆者の人生も数奇で壮絶
美しい筆者は主人一家の主人に貞操を狙われ続け、執拗な嫌がらせを受ける。筆者が選んだ自分を守る道は、自分を支援してくれそうな別の白人男性の子供を身籠ること。二人の子を産んだ筆者は、子供をいずれ自由の身にするために自身の逃亡という道を選ぶ。しかし主人の筆者に対する執着はすざまじく、主人が亡くなるまで筆者はその影に怯え、悩まされ、戦い続けることとなる。
逃亡生活の最初の7年間は、自由黒人である祖母の家の屋根裏にてすごす。
立つこともできず、筆者があけた覗き穴以外に光が入らない、暑さも寒さも過酷で雨すらしのげないその空間で、体はボロボロになってそれでも耐え続ける。その家で暮らす自分の子供にすら自身の存在を気取られてはならない、いつ終わるともわからない逃亡生活。
7年ののち、仲間の采配により北部に渡船で逃亡し、その後は出会う人に恵まれて自分と子供2人の自由を勝ち取る。

白人の都合で自身や大切な家族の運命はいつでも一瞬で暗転する可能性に脅かされ続ける人生を強いられ続けた半生。実際に奴隷として一生を終える人たちは一生それが続き、そういう人たちがその時代、何人いたのだろう。
筆者はその中で冷静に自身と子供のためにその時できる最善と思われる選択をとり続ける。とても勇気があり、冷静で、聡く、家族思いで希望を捨てない筆者の半生は、創作と言われても仕方がないほどのインパクトがあった。

また、筆者が伝えた、奴隷制度は白人も不幸にする、という考えが印象的だった。
私もその時代の白人として生まれていたら、黒人を人として扱わないような人間にきっとなっていたのだろう。夫が黒人奴隷と子供を次々作っていく事実に心を削られ、黒人女性に嫉妬し嫌がらせしその人たちを殺めていたかもしれない。

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2024年06月13日

Posted by ブクログ

『鞭で打たれる痛みには耐えられる。でも人間を鞭で打つという考えには耐えられない』という箇所が印象的だった。
初めて読む奴隷についての書物。だが考え直してみると、奴隷で読み書きができる人は少数だから、もしかしたら真っ当なのかもしれない。
思っていたよりもずっと酷く、むごい。奴隷主によって奴隷への接し方、扱い方は様々だが、どのような思想、社会背景の中でも、良いことと悪いことの判断がつく教養のある人でありたいと改めて思った。
人を売り買いし、「所有する」のは今では不思議な感覚だが、それが当たり前だった時代があるのが恐ろしい。
弱者が卑怯なことをしても、他に責められる人はいない、いたとしてもその状況を許容し生み出している社会のシステムが悪い。抑圧された側の狡猾さは、それが暴君に対して持てる唯一の武器だという箇所が、印象的だった。この見方はなかった。

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2024年05月24日

Posted by ブクログ

奴隷制のあったアメリカで実際に奴隷として虐げられた黒人女性の手記。淡々と語られる奴隷所有者の仕打ち、また、南部州だけでなく北部州にもある社会全体の差別意識に心が痛めつけられる。奴隷という身分で産まれる中でも、男性以上に女性が人生で抱える不幸が大きいという主張は奴隷制度のない現代社会にも通じるところか

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2024年01月21日

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奴隷制について無知だったのが微知ぐらいになった気がする。今まで奴隷船の中の不清潔さとか、鞭ちのさとかばかり旨がいってたけど、この本は鞭打ちみたいな体罰的な苦痛よりも言葉とか女性ならではの苦痛が大きくて奴隷制の本当の闇の部分を見たように感じた。
、読んでると勝手にフ
ィクションだと思ってるけど、、ふとこれが本当の話だったと思い出してその度にこの作品の重要さを痛感した。多分、これはほんの一部だろうから
もっと奴隷制について知識を深めたくなった

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2024年01月04日

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パワーがすごい。
奴隷制当事者の貴重な手記というだけでなく、真のウーマン・リブ文学である。

J・F・イエリン教授や堀越ゆき氏に本書が発見されて本当に良かった。
衝撃作であることは間違い無いが、当事者文学であるからこそ努めて冷静に描写されており、妙に感情を煽り立てるような書き方をしていないので、結構誰にでもおすすめできる本な気がする。

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2023年11月16日

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ネタバレ

これが本当に起こった出来事なのだと思うと…。主人公リンダの7年もの屋根裏での潜伏、あまりにも壮絶だ。肉体的にも精神的にも自分なら耐えられないと思う。南部から北部へ向かう船での描写が心に迫った。北部へ行くのは悲願だ。夕日や頬を撫でる風に喜びを感じる。だけど愛する家族や世話になった人々は今去ろうとしている南部にいて、きっと二度と会えない。それでも進む。
旅行でアメリカを訪れたことがあるけど、その時のアメリカの印象とこの本に描かれるアメリカは別の国のようだ。かつてはあの土地でも同じような奴隷少女たちがいたのだろうか。

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2023年05月11日

Posted by ブクログ

奴隷制というものが有ったことは知ってる。
でも、何にも判ってはいない。
たくさんの人が読んだら良いと思った。

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2023年04月01日

Posted by ブクログ

善意が守られるかは状況次第。
これって今もあることだなーと思た。

実話だと思うとゾッとする。
別世界の昔の話ではなくて、
今も通ずる人間の差別を感じとれる。

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2024年12月24日

Posted by ブクログ

 「奴隷」と聞いて何を思うか。
 奴隷制は良くないと赤ん坊の頃から刷り込むように教えられて来た。子どもながら、人を暴力的に従えることは悪いことなんだな、と実にフワッとイメージしていた。だからこそなのか、友人間では「お前は奴隷な」と冗談まじりに言い合いその言葉の重みを今日まで考えたことはなかった気がする。
 先日、少年十字軍について調べているときだった。この十字軍は最終的に奴隷商人に売り飛ばされる結末を辿るのだが、ふと「奴隷って一人あたりいくらなのだろうか」と考えてしまった。そこから妄想を膨らませていき、奴隷の暮らし扱われ方など知りたくなった。そして読まずに部屋の片隅に置きっぱなしにしていた本書を思い出した。

 奴隷制の一番の問題点は、奴隷を実際にどう扱うかということよりも奴隷を所有物とみなしているところだと言う。いかに奴隷を人間的に扱おうが、「彼ら」を物とみなしている見方・考えそのものが悪だとするものだ。
 この論理は本書を読めばピタリと当てはまることがわかると思う。けっきょく人間的な扱いがなされていたとしても主人から解放されない限り、「彼ら」が自由を感じることはできない。いつまでもその首に鉄の鎖が繋がれたままなのだ。
 そしてこの「解放」という言葉は実に曖昧である。奴隷制における「解放」とはどのような意味合いを持つのか、それが表していることは何なのか。本書を読み実際に感じとっていただきたい。

 「奴隷」という言葉があまりにも浸透しすぎて、その言葉の重みが蔑ろにされている。y=ax +bと言えば一次関数の方程式とわかるが、その内容を理解している人はどれくらいいるだろうか。それと同じで、奴隷制=悪と短絡的に考える習慣が、奴隷という言葉を形骸化させているのではなかろうか。奴隷制は非人道的な行いだと刷り込む教育の在り方は否定せずとは言え、もう少し生徒に考えさせる授業であっても良いのではないか。
 頭から何かを否定する習慣は必ず身の破滅を招く。奴隷制の知っていること知らないこと、それらを整理した上で何が最も許されざる部分なのかを考える。それができるようになれば、奴隷制を超えた真に多様な社会を受容することができるように思う。

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2024年09月15日

Posted by ブクログ

奴隷制度が悪なのは明白だが、奴隷制度の廃止にも戦争が必要だったことを考えると、社会ってそうそう変えられないのかね。。。

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2024年08月03日

Posted by ブクログ

感想
当たり前に尊厳はない。何も起こらない。今日も明日も希望はない。絶望もできない。淡々と繰り広げられる地獄。今はもうなくなったのか。

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2024年01月07日

Posted by ブクログ

いただき本

とても読みやすくしっかりとした翻訳。
奴隷制の不条理と、悲しさ、そこに身をおかねばいかなかった人々の苦労は、私などには計り知れない。
強い意思を持ち、思慮深く生き抜いた作者を思う。

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2023年10月18日

Posted by ブクログ

250年前の出来事に胸が締め付けられるようだ。

 奴隷制がどのように運用されていたのか、所有者(雇用者ではなく)との関係性等、当事者の記録である本書から伝わってくる。

 少女を所有し意のままにしようとする所有者やその子供たち。嫉妬に苦しめられるその妻。意識のはけ口は残虐性や暴力なって奴隷を襲う。

 奴隷制は奴隷の精神だけではなく、所有者の精神も破壊してしまうとは、当事者である奴隷少女の言葉だ。

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2023年10月15日

Posted by ブクログ

南北戦争前のアメリカの暗い時代の話。この時代があって今がある。この事実に出会えて改めて考えさせられた。

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2023年07月04日

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