渡邊英徳のレビュー一覧
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AIで色付けした白黒写真を、戦争体験者との対話や残された資料などから更に補正し完成させた力作の写真集です。
1941年から1946年までの大東亜戦争=太平洋戦争を記録した写真が並びます。
色が加わることで過去の出来事に息吹が吹き込まれたように感じました。
被写体となっている人はこの瞬間に一体何を感じて、何を考え、何を希望に生きているのだろう…と思いながら頁を進めていきました。
活気はありながらも戦争の準備を進める国内を写す1941年、焦土と化した都市とその地を踏むGHQの兵たちを写す1946年、大変な時代でしたね…お疲れ様です、と当たり前の言葉しか出ないものなのですね。
色付け加工されたものではありますが、後世に残すべき資料の一つと確信しました。 -
Posted by ブクログ
先日読んだ「モノクロの夏に帰る」─額賀澪著─
に出てくる写真集のモデルが本書と知り、手に取った。
著者の庭田さん(広島市出身)と東大教授の渡邉さんによる「記憶の解凍プロジェクト」の成果をまとめたものだそう。
まず、AI技術でモノクロ写真を「自動色付け」する。
次に、戦争体験者との対話・SNSで寄せられたコメント・資料などをもとに、手作業で色を補正していく。
とても地道で時間のかかる作業だろう。
しかしこの「人との対話」がとても大切だ。
白黒の世界で凍りついていた過去に色がつくことで、記憶も生き生きと動き出す。
一枚の写真から当時を思い出し、次々と語り出す当事者たち。
戦後79年となる現在、体験者の話を生で聞く機会はもうほとんどない。
本書に収録されている約350枚のカラー化写真とその記録は、本当に大切で興味深いものだ。
いくつか紹介すると
※1932年頃
皆でスイカを食べて家族と親戚の夏の団らん
──どんな時代でも笑顔のひとときは良いな
※1944年
フィリピンでくつろぐ「勤皇隊」隊員たち
その後フィリピン・オルモック湾で特攻を敢行
──六人の笑顔に胸が詰まる
※1945年8月6日 8時15分
広島市への原子爆弾投下
呉市より撮影
オレンジ色に色付け
──SF映画のようだ
※1945年8月8日
翌日の長崎への投下に備えて組み立てられた原爆ファットマンにサインする、開発者のノーマン・ラムゼー博士
──サインするの?驚いた
350枚の中には教科書などで見たことのある写真もあるが、やっぱりカラーだと印象が全く違うんだなぁと驚く。
今、私が、振り返った先に戦争がはっきりと見えるんだ。
私の祖父母は戦争を体験しているはずだが、話は聞かずじまいだった。
(とっくに亡くなっている)
今度実家に帰ったら、祖父母のことを両親に聞いてみよう。
(両親も老齢だ 急がねば)
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昔の白黒写真をカラー化するという、面白い試み。日独伊三国同盟のカラー写真はtwitterで見たことある人も多いのではないか。
試み自体は面白いものの、正直カラー化になんの価値があるのかと思いながら読んだ。しかし、驚きではあるが白黒で見た(昔)の写真が、カラー化によって地続きの過去になっていくのが実感できる。白黒写真というのは空が白いだけで本質的には夜なんだよな。モノの輪郭は掴めてもイメージはつきにくい。
教授室の「第ニ外科歴代教授」掲示などを見ると、過去の教授が白黒で写っている。あまり意識したことがなかったが、白黒写真はそれ自体が過去の象徴である。これがちょっと色づくだけで、過去の想像から、過去の体験へと変わる。例えば、1930年代の繁華街の白黒写真を見ても、目が滑るだけだが、カラー写真になると「桜の季節だ」「白象に乗っている子供がいる。服の色合いからして裕福そうだ」「べっぴん店の広告がある。看板がきれいなところからして、新しい店なのか。あるいは繁盛しているのかもしれない」などと目が留まるところが多い。
写真への自己の投影のようなものが簡単になる。「生まれる前の時代が本当にあったんだ」と実感する感覚が近いだろうか。
手塚治虫の『アドルフに告ぐ』のゾルゲ事件のところで見た、防諜を促すコマと同じような、防諜週間の写真があって感動した。
真珠湾攻撃の写真は必見。それまで戦前の平和な写真から一転、爆発炎上する駆逐艦には息を呑む迫力がある。ドイツがアメリカに宣戦する写真はナチスのカルト性がよく現れている。
戦争の写真では、日本の写真が特攻兵などの記念写真が多いのに対し、アメリカは攻撃している、あるいはされている写真が多い。おそらくだが、日本は度重なる攻撃で記録が残らなかったのに対し、アメリカは生き残ったフィルムが多いのだろう。
爆撃されている最中のエンタープライズの写真など、命知らずの戦場カメラマンの本気が見て取れる。
ドイツのドレスデンの写真は、オーウェルが『荒廃したドイツの未来』で『ドイツの破壊された町々を歩けば文明の持続性について強い疑念を抱かざるにはいられない』と評した街を見て取れる。遮蔽も少なく、フラグメントイーストよりよほどフラグメントである。
米軍の対空砲火、恐るべし。空を縫うような面制圧である。これでは特攻も戦況にさほど影響を及ぼさないであろう。
ライヒスタークの赤旗、少し感動した。
日本兵、やせ細ってて本当に可哀想。腹が減っては戦ができぬ。 -
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ネタバレ白黒写真をカラー化すると、とても鮮やかに情報が伝わってくる。当たり前だが、被写体の彼らは歴史舞台の登場人物ではなく、日常を生きた人間なんだと強烈に感じることができた。以下は特に印象に残った点。
戦前の穏やかな日常の写真のなかに、たくさんの人々の笑顔があったこと(昔の人は写真ではあまり笑わないと思っていた)。
戦況激化とともに、禍々しいスローガン等でじわじわと追い込まれていくなかでも、日常生活や笑顔が見られた写真があったこと。
写真におさまる日本の航空兵達の顔立ちが、戦況が悪化するにつれ幼くなっていくと感じ辛かったこと。
戦後の焼け野原でもちゃんとデートしていたこと。
戦場となった海と空がとても青かったこと。
戦争について考えるとき、文字を読み想像することも大切だが、この本は写真の持つ情報伝達性が十二分に活かされていて、当時を考えるうえで貴重な本だと思った。 -
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平和活動を積極的に行う若い著者が被爆者と接する中で、写真に特別な思いがあるのではないかと思い、白黒写真をカラーにするプロジェクトを立ち上げた。
文字より写真、白黒よりカラーの方が、鮮烈だ。どうしても我々には、白黒写真は自分の事とは思えない。遥か昔のことのように感じてしまう。それは今目にしている風景が全てカラーである事と、写真技術が白黒からカラーに進化していったという知識があるからだ。
そこで敢えて白黒写真をAI技術でカラー化していくこの企画は、過去をより実体験として経験してもらうのと同時に、写り込んでいる人や風景が、現在と繋がっているのだということを再認識してもらうための素晴らしいプロジェクトだと思う 。
それは記憶の継承と同時に、敗戦前後で断絶してしまった日本人としての精神性を取り戻すきっかけになるかもしれない。
「記憶の解凍」
素晴らしいネーミングの、素晴らしいプロジェクトだと思う。 -
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広島出身の庭田杏珠さん(東京大学学生)と渡邉英徳同大学教授の共著で、映画「この世界の片隅で」の片渕須直さんやアーサービナードさんらがプロジェクトに加わり、戦前・戦争と人びとの暮らしをAI(人口知能)でカラー化します。庭田さんは広島出身で、どのように戦争体験者の「思い・記憶」を未来へ伝えていくかを考える中で、カラー化の手法にであいます。また、渡邉さんは2016年からAI技術を応用して白黒写真をカラー化する活動を開始し、庭田さんと出会います。AIでカラー化した写真を当事者の記憶を解凍して色の補正を行い、よりリアルな色合いに仕上げていきます。大正末より、治安維持法で言論統制が厳しかったとはいえ、穏やかな生活から徐々に軍靴の音が近寄り、軍民一体の戦争へ突入していった。途中で目をそむけたくなる場面にも遭遇するが、プロジェクトのみなさんの平和への思いが伝わります。高齢者と共有することで、回想法となり、新たな記憶が甦るかもしれません。
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ヒロシマ以前の風景を復元する「記憶の解凍」プロジェクト。AIを活用し白黒写真をカラー化。息を吹き返した過去は現在につながる。
白黒写真は過去のイメージ。それがカラー写真となることで一気に現実味を帯びる。本書に収録されるカラー写真の多くは戦前の広島の中島地区。4400人が暮らした町は爆心直近。町は全滅し戦後は平和記念公園となる。
個人の収蔵写真を集めカラー化する「記憶の解凍」プロジェクト。原爆で失われる町並みと人命。家族の幸せな風景、来るべき悲劇。
本書には、広島だけでなくほかの多くの写真も収録。朝日新聞に保管された物がおおいのでどこかで見たことのある写真が多い。ミッドウェー海戦、ガダルカナル、沖縄戦や空襲など。そして戦後の戦災孤児などまで。
本書は偶然ながら電子書籍で購入。写真を拡大して見られるし見開きの写真の真ん中も途切れないので、電子版の方がオススメである。
カラー化され息を吹き返した写真。現実味を増したことで。戦争が身近に感じられる。それは遠い過去ではなくごく最近のことであるし、また我々の未来なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
本書のレビューで多くの方々が書かれているとおり、白黒だと身近に感じにくいことが、カラーになると命が吹き込まれ生々しく伝わってくる。
音・臭い・温度・触覚などが追加されたわけでもなく、単に色が付いただけなのにこの歴然とした違いは何だろうかと思う。
美しく青い海と空や、緑の草木、黄色やピンクの花、これら白黒だと識別しにくいものがカラーだと一瞬で何であるかを理解できてしまうから?
カラーだと今までの自分の生活体験で得た色や形の情報と結び付き易く、脳が即座に活性化させられるのではないだろうか。
飲食でも視覚と臭覚が味覚に影響を与えるように、色によって視覚以外のいろんな感覚が無意識に湧きだして来て絡み合うのだろう。
何百年もの遥か昔のことではない、ほんの数十年早く生まれていたら自分が経験していた社会の生々しい現実がここにある。
本書にページは振られていないので目次がないが、
1941年:戦争前
1941年:戦争開始
1942年:
1943年:
1944年:
1945年:敗戦まで
1945-1946年:戦後
と続く。
真珠湾攻撃で始まり、長崎への原爆投下で終わったとも言える戦争とその前後の生活の写真による記録。
まさに「諸行無常」で「ああ無情」だ。
普通の日常の風景として、幼稚園児が鉄砲(のオモチャ)を持ったり、防毒マスクをつけて戦争ごっこをしている。
人間魚雷、神風特攻隊として九死に一生ではなく十死に零生の戦法で的確に敵艦を狙う(9.11みたいだ)。
空襲に備えて殺処分が取られていた上野動物園のゾウ3頭が一ヶ月間で次々に餓死する。
終戦を迎える1945年には、4月から日本全土がほぼ爆撃され、庶民の生活や精神がボロボロになっているのに8月まで無駄に抵抗を続ける日本の姿。
広島に投下された原子爆弾「リトル・ボーイ」や長崎に投下された原子爆弾「ファットマン」は想像以上に小さい。
米軍は爆撃の前日に原爆にサインして記念写真まで撮る余裕を見せている。
昭和天皇(終戦時は44歳と若い)とマッカーサーの写真もカラー化されている。
戦争が終わったが空襲で校舎を失った品川区の児童たち。天気のいい日だけの青空学校の風景がもの悲しい。
たばこが生活必需品だった時代らしく、終戦からの復興の記録として新発売のたばこ「ピース」を買うために銀座松屋の周りを取り囲み並ぶ大勢の人々の平和な姿。
今日は憲法記念日か。
戦争は愚かな行為だ。本書の写真を眺めていてつくづくそう思う。
自衛権のあり方や国防の定義が曖昧だと言って、戦争を容認するような憲法改正(改悪)には絶対に反対だ。 -
購入済み
「色」と記憶の関係
庭田さんのあとがきにあるエピソードを読み、「色」と記憶の抜き差しならない関係性を感じさせられる。当人が思ってもいなかったような記憶が「色」によって呼び覚まされる。思い込んできたことや、記憶からこぼれていたものが。科学技術の発展によって75年前の記憶が蘇ると同時に、その時を経験していない我々へ訴えかける情報に厚みをもたせることもたいへんに興味深い。動画のカラー化というのは以前からあったが、写真というさらに一般人の日常に近い媒体のカラー化は戦前と戦争の風化を抑制する大きな力になるのではないか。