読者は所詮ヒューマン
1巻だけ読んだ感想です。
基本的にはタイトルと解説通りです。主人公が圧倒的な力を持ち旅をする無双系です。
とりあえず1巻ごとに話をまとめてくれそうなので, 気が短い人でも大丈夫です。
かっこいいオークの英雄が無意識のうち圧倒的に世界を救う喜劇を*素直に*楽しむことができる人は, これ以上私のレビューを読まずに試し読みへゴー!
……もうここには汚れたヒューマンしか残っていませんね? この先もネタバレはしないから安心して。
さて, 私にはこの作品が非常に奇妙なストーリーに見えます。作者の人格を疑う程度には。端的に言って鬱になりそうなので次巻購入を断念しました。
・オークの誇りが理解できない
オーク生来が持つ誇りとは何でしょうか? 戦士として上の指示に従うことでしょうか? それは社畜と呼ぶのではありませんか?
ベタに仲間ですか? それはどうやら違うようです。集団が重視され, はぐれたオークは追放し見捨てる事例がガンガン発生しています。
ならば力でしょうか, 雄々しさでしょうか? それなら私も救われるのですが, 肝心な主人公の考えと合致しません。そういう主張のオークと主人公が敵対することになりますが, 私は全力でお相手に同情しました。
・オークの希望が見えない
オークは戦争に負け, その生態を抑圧することとなりました。この状態の彼らが健全に存続できるとはとてもとても思えません。それこそ革命的な……そう, 新たな種族が異世界からなだれ込んでくるくらいの事件が起こらない限り。これをオークキングはどう思っているのでしょうか。主人公に感銘を受けている暇があるのでしょうか? 唾棄され殺されてしまうはぐれオークのほうが真剣で一生懸命です。
・主人公が哀れなピエロに見える
副題に「忖度列伝」とありますが, この作品で繰り広げられるのは忖度ではありません。身勝手な幻想の押しつけです。かわいそうで仕方がありません。
主人公はオークとして尊重されていません。オークとしての彼を抑圧することでようやく認めてもらえます。そんな状態で「めでたしめでたし、次巻へ続く!」とされても陰鬱な気持ちでいっぱいになるのです。
本質から目を背け, きらびやかなおとぎ話に没頭するには私は年を取りすぎました。助けて妖精さん! 彼と結婚して!