飯島渉のレビュー一覧
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本書は、ペストやマラリア、日本住血吸虫の感染拡大から収束までの、経過を追いながら考察を加え、新たな感染症へ備えとしての示唆をして結んでいる。
2009年に出版されたものなので、もう10年以上経っているが、新型コロナウィルスの最中に読んだことでとても捗った。
未知のウィルスに対する恐怖と未知ゆえの差別や情報の混乱。ハンセン病の歴史も彷彿とさせた。歴史は繰り返す。
感染症曝露時の緊急対策は国民の権利を制限するので、植民地化に利用しやすく正当にも使われるということはわかるが、結果としては国民が納得していなければ十分に機能せず感染症の拡大は完全には抑えられなかったことがうかがえた。
最終的に必要 -
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ペスト、コレラ、そして日本住吸血虫病。
近代中国を襲った感染症の中から、この三つを中心に、医学と政治がどう対処したのかを跡付ける。
医学系ではなく、歴史研究者による著書。
日本の近代社会だと、コレラ、赤痢、肺結核、となるところだろうか?
ペストは中国南方由来の病と、本書で初めて知った。
なんとなくヨーロッパ中世、というイメージがあった。
医学研究(熱帯医学、植民地医学という分野の成立)と、政治権力と結びついた衛生施策が詳述されていた。
清朝末期から、共産党が政権を握って以降も、中国と日本の医学者たちの交流があったことに驚く。
それが植民地支配の問題や、内戦の混乱で、これまであまり見えてこな -
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こと感染症のパンデミックに対しては、個人がそれぞれの思惑で行動する自由主義体制は相性が悪く、個人の権利を抑制する中央集権的な体制の方が対策を打ち出しやすいことが、今般のコロナ禍で明らかになった。その代表的な国家である中国が、元々は感染症に対し、民間の慈善事業任せの「小さな政府」を標榜していた事実は興味深い。そして、その方向転換に一役買ったものの一つ が、日本の植民地政策であったことは多くの日本人が記憶しておくべきことだと思う。
かつてのコレラ禍は不衛生な環境を見直す契機となり、公衆衛生の母とも言われる。今回のコロナ禍からも、せめて医療の進展を促すものが生まれることを期待したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
一九世紀末、列強に領土を蚕食されるなか、中国では劣悪な栄養・衛生状態、海外との交流拡大によって、感染症が猛威を振るう。
雲南の地方病であったペストは、香港や満洲に拡大し、世界中に広がることになる。
中国は公衆衛生の確立を迫られ、モデルを帝国日本に求める。
本書は、ペスト、コレラ、マラリアなどの感染症被害の実態、その対応に追われる「東亜病夫」と称された中国の苦悩とその克服に挑む姿を描く。
[ 目次 ]
第1章 ペストの衝撃(ペストのグローバル化―雲南・香港から世界へ;感染症の政治化―列強の思惑と国際ペスト会議)
第2章 近代中国と帝国日本モデル(公衆衛生の日本モデル―植民地台湾と