片山夏子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
先日、希釈した汚染水を福島県沖に流すことを決定、との報道があり、あらためて福島第一原発をとりまく状況を知りたいと思い読み始めた。
9年の歳月をかけ、作業員の人々の人生を追うように、丁寧に取材を重ねている一冊。
それぞれが、何を思って事故処理に携わり始めたのかから始まり、限界に近づく線量に怯えながら続ける危険な労働、離れて暮らす家族との軋轢やすれ違いなど、報道だけでは見えてこない現場の真実をえがく。
特に恐ろしく感じたのは、政府や東電の計画通りにことが進むことを最優先したために、到底間に合わないようなスケジュールが組まれ、作業員の心身をすり減らすことで成り立つ悲惨な労働環境になっていること。
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Posted by ブクログ
ネタバレ片山さんがフクイチで働く人たちとまさに人と人との付き合いを9年してきたからこそ彼らのそれぞれの思いや現場での過酷な状況、日常を知ることが出来た。
高い数値を示す場所にロボットが入ったりするニュースは知るけど最終的にはそこへ運ぶのは人。
それなのにそこで働く人たちが全く見えていなかったことに気付かされた。
それなのに労災以外は何の補償もないなんて…
どこが復興五輪なんだろうかとリレーが始まった今、つくづく感じる。
これからチェルノブイリのように後々どんどん被害が出てきた時に廃炉作業をする人がいるのか。
そしてこの事故を教訓にするために再稼働はあり得ないと改めて感じた。 -
Posted by ブクログ
東日本大震災で爆発、崩壊した放射線まみれの福島原発の撤収作業に携わる作業員たちを著者は9年間にわたって取材する。
放射線を防ぐため、真夏でも防護服を着用し、暑くなる時間帯をさけて未明からの始業開始。被ばくを抑えるため、限られた時間での作業を強いられる。多重下請現場のため、責任者が不明で、賃金格差も大きい。そして、危険箇所や事故の情報を隠す政府や東京電力。作業員の労働環境は過酷すぎる。
また、作業員は常に線量計を身につけ、被ばく線量値が一定量を超えると、作業ができなくなり、次の仕事がなければ解雇だ。そのため、線量計をわざと忘れたり、鉛で覆うことで数値をごまかそうとする者もいる。
有期労働契 -
Posted by ブクログ
先日の報道で、汚染水の海洋排水が決まり
ましたね。
「え?まだそんな状況だったの?」と驚く人
は多いと思います。
そうです。ふくしま原発は当初の危機は脱して
いますが、基本的には何も変わっていないのです。
「イチエフ」と呼ばれる福島第一原子力発電所で
事故後の復旧作業を行う作業員の目にしたものを
まとめたドキュメンタリーです。
事故当時、ほとんど日本では報道されなかった
「フクシマフィフティ」は門田隆将氏の「死の
淵を見た男で」紹介されて、これが映画になった
ことによって日本人もようやくこの真実に気づく
ことができました。
しかしこの本で紹介されている人たちも間違いな
く「死の淵」で闘 -
Posted by ブクログ
福島第一原発事故から10年、今年はコロナ禍もあって原発事故関連の報道がかなり少なくなったと感じることはないでしょうか。自然災害も多いですし、報道すべき事柄も次々と発生するので、ある程度は仕方ないのかもしれないですが、決して忘れてはならない現場であることを想起させるノンフィクションです。
本書は原発事故現場で働く作業員の方への取材をもとに、苛酷な作業現場の様子、マスコミで報道されない問題点が紹介されています。
詳細に述べられているのは劣悪な労働環境です。被ばくの危険性のあるエリアでの作業では、全面フェイスマスク、防護服、さらにカッパを重ね着し、手袋もゴム手を2重にした上に軍手を付けると言った重装 -
Posted by ブクログ
ものすごく上からの言い方になるが、いいお仕事されたな(されているな)と思った。9年間地道に作業員の方に取材されている。そのきっかけも継続も誰にでもできることではないと思う。人として信頼されなければ、これだけたくさんの人が語り続けてはくれないだろう。
原発作業員の方にも頭を下げることしかできない。命を賭けて(ほんとはそんなことではいけないのだが)最前線で原発の処理をしてくださっている。想像が追い付かないほどの過酷な現場。政府や東電などの理不尽さ。腹立たしくなるばかりだが、どうしたらいいのか。
地震や津波は天災と言えるが、原発事故は人災だ。そして、その後始末は誰かがしなければいけない。その方たち