速水融のレビュー一覧
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人口が増えたから生産も増えたのか?生産が増えたから人口は増えたのか?
人口が増えたからイノベーションが起きるのか?イノベーションが起きたから人口は増えたのか?
人口が増えたから人類は繁栄できたのか?繁栄があったから人口は増えたのか?
人口とは、あらゆる社会問題の原因と同時に結果でもあり、しかもその要因はそれぞれ独立していない。
出生率、死亡率、生産量、資源量、技術革新、労働力。
全てのバランスが動態的に変動する事象を、読み解くことができるだろうか?
本書は約300ページの長編ながらも、論文のような精細さと読みにくさが同居しており、
ただでさえ要素が多い人口問題に、さらなる問題提起を重ねてく -
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『自爆する若者たち』で、「ユース・バルジ(暴力年代)」がある一定以上に増えると、暴動・テロ等が起こるということを読んだが、そこから、「歴史人口学」についてもっと知りたいと思っていた。歴史人口学の創成期から、日本発のデータと論文を発信してきた、日本の歴史人口学の祖。
面白かったのは、濃尾の研究から出てきた「勤勉革命」。
ヨーロッパをはじめとする近代の産業革命や農業革命は、機械化が進むという資本集約・労働節約の方向に進んできたが、日本の近世では、家畜を使わなくなり、労働時間が増えるという、資本節約・労働集約の方向で、生産性が高まり、農民の生活水準が上がったという。
背景に、品種改良や肥料の改 -
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日本の歴史人口学の権威 速水融 による自伝「歴史人口学事始め」
著者は、歴史人口学を 日本に初めて導入し、江戸時代の人口動態分析から 勤勉革命や日本複合民族国家説を提唱した経済学者。歴史人口学は 歴史学に近いと思うが、経済史の一分野という位置づけらしい。
日本の歴史人口学は 先進国に共通する人口減少と経済停滞の問題に関する処方箋を出してくれそうな気がする
学校と本の違いについての名言「学校において、先生や同級生との付き合いから 生きている社会を学び〜常識を作る。本からは 常識以外の知識を得る〜読書は探究に似た面白さに満ちた行為」
太平洋戦争における外交の失敗(ポツダム宣言の黙 -
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『大正デモグラフィ』を以前、興味深く読んだ。
そこで歴史人口学という学問のあることも知った。
その著者の一人、速水融(はやみあきら)さんの著作と聞いて、読んでみたいと思った。
速水さんは19年に亡くなったばかりだということもある。
当初、歴史人口学の入門書かと思っていたので、ちょっとびっくりした。
というのは、これは速水さんの自伝だから。
幼時から筋金入りの鉄道マニア。
時刻表からヒントを得て、宗門改帳のデータを整理するBDSというシステムを考案することにつながる。
こんなところが愉快。
歴史人口学は経済学をベースとしている学問かと思っていたが、速水さんは歴史学をからこの分野に入った人。 -
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歴史人口学の権威で、文化勲章受章者である著者の伝記。著者は1929年生まれであるが、特に戦前、戦中、戦後まもなくの記述が面白い。著者が歴史人口学の第一人者となったのは、偶然の出会いがきっかけであったと書いているが、実際、多くの成功は偶然から始まることが多いのだと思う。要は、それをものにできるかどうかだ。それが認識できたことが一番の収穫であった。
「ナポレオン、アインシュタイン、それにドストエフスキーといった超有名人もてんかんだったと、何かの本で読んだ記憶がある。私はこれを、てんかん持ちの中にもそういう偉人がいるのだという心の拠りどころにしている」p38
「中学での成績が受験校の判断材料となるこ -
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ネタバレ[ 内容 ]
「デモグラフィ」とは、出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉である。
つまり本書は、新たに発掘された史料、進展してきた歴史人口学の成果を踏まえ、大正期を人口という窓を通してながめてみよう、という意図のもと書かれた。
その視点で検討してみると、従来「デモクラシィ」の時代と呼び習わされてきた大正期も、かなずしも明るく進んだ面ばかりではなかったことが分かる。
大正時代を捉え直す意欲的な試みである。
[ 目次 ]
第1章 明治と昭和の狭間で
第2章 大正期の全国人口
第3章 第一次世界大戦と戦時景気
第4章 大正五年の出生力
第5章 死亡率上昇―女工と結核
第 -
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ネタバレ<目次>
まえがき
第1章 歴史人口学との出会い
第2章 「宗門改帳」という宝庫
第3章 遠眼鏡で見た近世~マクロ史料からのアプローチ
第4章 虫眼鏡で見た近世~ミクロ史料からのアプローチ
第5章 明治以降の「人口」を読む
第6章 歴史人口学の「今」と「これから」
特別付録 歴史人口学~成立・資料・課題
<内容>
日本の歴史人口学の嚆矢で、第一人者だった速水氏の、歴史人口学の解説を、自分の人生に重ね合わせて説明したもの。1960年代からの地道な努力(根気なくして出来ない)を教えてくれる。その努力も、目的を逸しては何の価値もなく、各時代の人口から、人びとの生活や政治も見えてくる。コ -
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ネタバレ<目次>
第1部 誕生から中学まで~1929から1945
第2部 終戦~1945から1948
第3部 大学入学から常民研まで~1948から1953
第4部 歴史人口学との出会い~1953から1964
第5部 宗門改帳との出会いと「BDS」の考案~1964から1989
第6部 人口減少社会における研究の展開~1989から2019
<内容>
2019年末に亡くなられた速水融先生の自叙伝のようなもの。脱稿前に亡くなられたようで、解説の部分を読むと、最後の頃はもう執筆もできなかったようで、第5部辺りは他の論文やエッセイを再編集したものらしい。弟子の磯田道史さんの本を読んで、速水氏の「歴史 -
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日本の人口は減っている。本書にも比較があるが、2050年には世界のベスト10にも残らない。歴史上、人口というのは繁栄、安定、安全と同義であるという。確かにそうだ。人は石垣、人は堀。
その人口が7億人でも700億人でもなく、どうして今、70億人超なのか。生物としてはこのぐらい産める、という値から、地域・年代による出生数の違い。農耕に落ち着いたら安全かと思ったら、どうやら狩猟よりも死亡するケースも多かったらしい。そうこうしながら人は仕組みと知見を調え、人口を増やしてきた。
さて、人口減少に転ずる今、繁栄、安定、安全はどうなってしまうのか。訳者あとがきに、ジャレド・ダイヤモンドに代表される作品に