速水融のレビュー一覧
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人口が増えたから生産も増えたのか?生産が増えたから人口は増えたのか?
人口が増えたからイノベーションが起きるのか?イノベーションが起きたから人口は増えたのか?
人口が増えたから人類は繁栄できたのか?繁栄があったから人口は増えたのか?
人口とは、あらゆる社会問題の原因と同時に結果でもあり、しかもその要因はそれぞれ独立していない。
出生率、死亡率、生産量、資源量、技術革新、労働力。
全てのバランスが動態的に変動する事象を、読み解くことができるだろうか?
本書は約300ページの長編ながらも、論文のような精細さと読みにくさが同居しており、
ただでさえ要素が多い人口問題に、さらなる問題提起を重ねてくれる。
なんとか統計的に「GDPが低いと出生率は大きくなるが、GDPが一定値まで高くなると出生率は低い値から動かなくなる」と読み解いてみても、
「出産にかんする夫婦の意思決定に、物的財の入手可能性はほとんど影響しない」と言われるし、さらには
・「フランス農村部において出生率の低下は、より豊かで進んだイングランドよりも早く始まった」
・「多くの国々について、教育水準、農村的習性、工業化、といった社会経済的指標は出生率低下のわずかしか説明しえない」
・「文化的要因ー民族や言語集団、宗派や政治団体への帰属ーが、経済的要因よりも出生率低下には重要だったようにみえる」
などなど、例外はいくらでもあげられてしまう。
また、人口増加と経済成長の因果関係にしても、
・資源の限界には未だ到達しておらず、資源価格は低下を続けているが、今後の見通しは不透明
・死亡率の低下は長期的計画・投資を可能としたが、生産年齢人口と従属人口の比率は偏っていく
・知識と技術の進歩は人口に比例するように思えるが、歴史的な実証はされていない
などなど、単純に増えると良い悪いの話で終わらず、常に変わり続ける方程式が示され、
「人口増加はそれ自身では、1人当りの生産物の増加に対して拡張的効果と抑圧的効果の両方をもつのであって、これらの効果の重要性は他の要因との関係で異なってくる」
「人口と経済は、従属変数であると同時に独立変数である」
という、面白みには欠けるが科学的に正しい結論が示される。
本書は世界目線で主に人口増加に焦点を当てたものであるが、現代日本においては少子化対策が当たり前のように叫ばれる人口の、あるべき姿とはなんだろうか?
かつては頻繁に見られた人口移動も、移動元・移動先の双方が経済資本や文化資本を重視する資本主義下では難しくなっている。
世界人口の歪みにより、貧困や栄養失調の割合が減っても絶対数が増えた場合、それは人類の進歩としてカウントできるだろうか?
人口均衡のための地道な政策を提示しつつ、生じた問題には個別に対応し続けるという、面白みのない対策のみが、現在のところ得られる回答なのかもしれない。 -
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『自爆する若者たち』で、「ユース・バルジ(暴力年代)」がある一定以上に増えると、暴動・テロ等が起こるということを読んだが、そこから、「歴史人口学」についてもっと知りたいと思っていた。歴史人口学の創成期から、日本発のデータと論文を発信してきた、日本の歴史人口学の祖。
面白かったのは、濃尾の研究から出てきた「勤勉革命」。
ヨーロッパをはじめとする近代の産業革命や農業革命は、機械化が進むという資本集約・労働節約の方向に進んできたが、日本の近世では、家畜を使わなくなり、労働時間が増えるという、資本節約・労働集約の方向で、生産性が高まり、農民の生活水準が上がったという。
背景に、品種改良や肥料の改善という技術革新もあるのだろうが、この「勤勉を通して、生活がよくなる」という原体験が、21世紀の今まで続いているような気もする。
思想的には、山本七平の『勤勉の哲学』の石田梅岩にもつながるのだろうが、勤勉さをデータから復元するというのは、なかなか面白い。 -
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日本の歴史人口学の権威 速水融 による自伝「歴史人口学事始め」
著者は、歴史人口学を 日本に初めて導入し、江戸時代の人口動態分析から 勤勉革命や日本複合民族国家説を提唱した経済学者。歴史人口学は 歴史学に近いと思うが、経済史の一分野という位置づけらしい。
日本の歴史人口学は 先進国に共通する人口減少と経済停滞の問題に関する処方箋を出してくれそうな気がする
学校と本の違いについての名言「学校において、先生や同級生との付き合いから 生きている社会を学び〜常識を作る。本からは 常識以外の知識を得る〜読書は探究に似た面白さに満ちた行為」
太平洋戦争における外交の失敗(ポツダム宣言の黙殺)
三木清獄死事件における治安維持法の拡張解釈 については、著者は 当事者であり 憤りを表している。この歴史から何を学ぶのか、読み手に問いかけている
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『大正デモグラフィ』を以前、興味深く読んだ。
そこで歴史人口学という学問のあることも知った。
その著者の一人、速水融(はやみあきら)さんの著作と聞いて、読んでみたいと思った。
速水さんは19年に亡くなったばかりだということもある。
当初、歴史人口学の入門書かと思っていたので、ちょっとびっくりした。
というのは、これは速水さんの自伝だから。
幼時から筋金入りの鉄道マニア。
時刻表からヒントを得て、宗門改帳のデータを整理するBDSというシステムを考案することにつながる。
こんなところが愉快。
歴史人口学は経済学をベースとしている学問かと思っていたが、速水さんは歴史学をからこの分野に入った人。
一方では、戦争でキャリアを積むのに支障があったことも生々しく書かれている。
1929年生まれで、学生時代は戦争の混乱期。
勤労動員やら、繰り上げ卒業やら、学制改革やらで、本来の就学期間より五年半短かったと聞くとびっくりする。
結果的にこの人は大学者になったので良かったのだが、それでも、他の年度の人より基礎がないと思い続けてこられたという。
たしかに、日本史専攻で、大卒で「乍」が読めなかったというのだから、どれだけ影響が大きかったかわかる。
両親の出身が三重県だったとのことで、1946年の東南海地震も経験したとある。
記録があまり残っていない地震なので、当時の状況が知ることができたのもよかった。
この本をほぼ書き終えたところで、急逝されたという。
90歳に近い年齢でこれを書いていたということだ。
大局的な社会の動きと、ご自身の体験が関連付けられ、こういう点がさすが歴史学者だなあ、と感動する。 -
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歴史人口学の権威で、文化勲章受章者である著者の伝記。著者は1929年生まれであるが、特に戦前、戦中、戦後まもなくの記述が面白い。著者が歴史人口学の第一人者となったのは、偶然の出会いがきっかけであったと書いているが、実際、多くの成功は偶然から始まることが多いのだと思う。要は、それをものにできるかどうかだ。それが認識できたことが一番の収穫であった。
「ナポレオン、アインシュタイン、それにドストエフスキーといった超有名人もてんかんだったと、何かの本で読んだ記憶がある。私はこれを、てんかん持ちの中にもそういう偉人がいるのだという心の拠りどころにしている」p38
「中学での成績が受験校の判断材料となることは必至なので高望みはできず、府立一中生としては控えめに、慶應義塾大学を受けることにした」p83
「戦後、航空自衛隊の創設に寄与したという理由でカーチス・ルメイに勲章が与えられたが、このような大都市焼夷弾攻撃を指揮した彼に勲章を与えることは簡単には割り切れない気がする」p88
「(フランクリン・ルーズベルト大統領の急死)朝日新聞の論調は、敵国の最高指導者の死に際して、それを喜ぶべきとする記事はなく、むしろルーズベルトの行った失業問題解消政策、ニューディール政策を評価するような論調さえ見られた。使者に鞭打つことを否定し、その功を認めている。「一億玉砕」を叫んでいた政府のもとではおかしいな、という気もしたが、朝日新聞欧米部長 福井文雄氏が書いている一文「ルーズベルト」などは、ルーズベルトを、交戦中の敵国の大統領としてではなく、一人の偉大な政治家として取り扱っている。極端に言えば、これは和平への一つのシグナルとさえ読める。後で知ったことだが、ルーズベルトの死に対して日本の首相が弔電を打ったことを、存命中のトーマス・マンが「日本の武士道」として讃えた。その一方で、大統領の死に対して、極端に言えば「ざまあみろ」の論調だったナチス・ドイツの態度に鈴木首相は、怒りを表明していたらしい」p90
「数少ない小学校時代の同級生として俊次君はかけがえのない友人である。私が歩行困難になり外出が困難となってからも、拙宅まで来ていただき、大いに昔を思い出し、久しぶりに愉快な数時間を過ごすことが私にとってはこの上ない喜びである。こういうのを「久闊を叙する(きゅうかつをじょする)」と言うのだろう」p144
「人生を振り返ると、いくつかの事柄と偶然に出会っているが、この出会いほど大きな意味を持つ偶然はない」p228 -
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ネタバレ[ 内容 ]
「デモグラフィ」とは、出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉である。
つまり本書は、新たに発掘された史料、進展してきた歴史人口学の成果を踏まえ、大正期を人口という窓を通してながめてみよう、という意図のもと書かれた。
その視点で検討してみると、従来「デモクラシィ」の時代と呼び習わされてきた大正期も、かなずしも明るく進んだ面ばかりではなかったことが分かる。
大正時代を捉え直す意欲的な試みである。
[ 目次 ]
第1章 明治と昭和の狭間で
第2章 大正期の全国人口
第3章 第一次世界大戦と戦時景気
第4章 大正五年の出生力
第5章 死亡率上昇―女工と結核
第6章 スペイン・インフルエンザ
第7章 人口指標のいろいろ
第8章 国勢調査
第9章 大正末年の人口
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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ネタバレ<目次>
まえがき
第1章 歴史人口学との出会い
第2章 「宗門改帳」という宝庫
第3章 遠眼鏡で見た近世~マクロ史料からのアプローチ
第4章 虫眼鏡で見た近世~ミクロ史料からのアプローチ
第5章 明治以降の「人口」を読む
第6章 歴史人口学の「今」と「これから」
特別付録 歴史人口学~成立・資料・課題
<内容>
日本の歴史人口学の嚆矢で、第一人者だった速水氏の、歴史人口学の解説を、自分の人生に重ね合わせて説明したもの。1960年代からの地道な努力(根気なくして出来ない)を教えてくれる。その努力も、目的を逸しては何の価値もなく、各時代の人口から、人びとの生活や政治も見えてくる。コロナ禍において、こうした研究が役に立つことがよくわかる。 -
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ネタバレ<目次>
第1部 誕生から中学まで~1929から1945
第2部 終戦~1945から1948
第3部 大学入学から常民研まで~1948から1953
第4部 歴史人口学との出会い~1953から1964
第5部 宗門改帳との出会いと「BDS」の考案~1964から1989
第6部 人口減少社会における研究の展開~1989から2019
<内容>
2019年末に亡くなられた速水融先生の自叙伝のようなもの。脱稿前に亡くなられたようで、解説の部分を読むと、最後の頃はもう執筆もできなかったようで、第5部辺りは他の論文やエッセイを再編集したものらしい。弟子の磯田道史さんの本を読んで、速水氏の「歴史人口学」を学びたいとも思ったが、文春新書(『歴史人口学から見た日本』)は、絶版になっているようだ。伝記からは本人の筆だからこそか、かなり恵まれた人生だったように思った。学者らしい、でも結構無鉄砲な部分もあるひとだったんだな、と。 -
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日本の人口は減っている。本書にも比較があるが、2050年には世界のベスト10にも残らない。歴史上、人口というのは繁栄、安定、安全と同義であるという。確かにそうだ。人は石垣、人は堀。
その人口が7億人でも700億人でもなく、どうして今、70億人超なのか。生物としてはこのぐらい産める、という値から、地域・年代による出生数の違い。農耕に落ち着いたら安全かと思ったら、どうやら狩猟よりも死亡するケースも多かったらしい。そうこうしながら人は仕組みと知見を調え、人口を増やしてきた。
さて、人口減少に転ずる今、繁栄、安定、安全はどうなってしまうのか。訳者あとがきに、ジャレド・ダイヤモンドに代表される作品においても人口は重要なファクターでありながら、人口減少そのもののメカニズムは説かれていないので、それを本書でやっているぜ、という話。たしかにそういう面はあるのだけど、横書きでグラフと脚注が多く、どうも論文を読んでいるような感じになる。ついつい、現代の人口問題を気にしてしまうし、そこへの言及もあるのだけれど、やっぱり推測も含めながらの叙述として味わいたい。読み物としてより楽しむために、縦書だったらよかったのになあ。