翻訳版発売前から界隈では話題になっていた本。2005年に発売された本が15年越しに翻訳ということなのですが、今でもというか時代に関係なく重要なことで読む価値ある本です。
コンサルタントとして多くのNPOに関わる中で感じるのは、理事会がどのような組織であるか、という部分には組織としての強さの違いが非
...続きを読む常に出やすいということ。その理事会の重要さは元より、あり方も含めて視座をググッと高めてくれる示唆に富んだ一冊です。翻訳の癖なのかやや文章が読み取りにくい印象はありますが。
本書では理事会には3つのモード「受託モード」「戦略モード」「創発モード」があり、この3つのバランスを意識し、行ったり来たりしながら組織運営にあたっていくべきで、それこそがリーダーシップとしてのガバナンスであるとします。
受託モード:監査、監督など従来理事会の役目だと考えられている必要不可欠だか、それだけでは十分ではない役割
戦略モード:成果指向で戦略的に思考するモード。戦略的な計画を立てることではなく、戦略的に思考することが重要である
創発モード:現在の単純な延長線上では辿りつかない異なる未来について思い描く思考。未来志向。センスメイキング。
「リーダーシップとしてのガバナンス」は言葉面だけだと分かるような分からないような言い回しですが、訳者前書きに引用されていた以下の言葉が非常に分かりやすかった。
「ガバナンスなきリーダーシップは、専制、不正、個人の縄張りを生む危険性がある。リーダーシップなきガバナンスは、萎縮萎縮、官僚主義、無関心を生む危険性がある」
読み方として少し注意が必要だと感じた点は、そもそも本書で対象としている組織がどういうものかを忘れないということ。本書で主な対象としているのは複数の有給職員がいて、理事会を定期開催している組織です。そもそも組織規模やフェーズ的にまだ本書の対象にならない組織も日本には多いでしょう。
そうした組織にとって本書は意味がない、という訳ではなく、規模が小さくまだ理事会マネジメントにまで手が回らない団体は、まず理事会に限らず通常の自分たちの組織運営全体の中に、受託・戦略・創発モードがどこまで機能しているかという形で読んでみると良いのではないかと思う。
本書の対象となる組織の場合は、運営陣や理事はぜひ読むべきだし、これから理事を引き受けるような人がこの本を読む機会があるとより良い理事会が作っていけるのではないかと思います。
コンサルとしては、現状の理事会をチェックしたり、戦略モードあるいは創発モードを誘発するための問いかけやワークがいくつか紹介されていたのが使えそうだなと。単純だけどきっかけとしての効果がありそうなものが多い。理事会の中でいくつかのワークをやってみるのも良いと思う。
問い
「あなたの団体の理事会が2年間、何の会議も開催せず理事会の職務も行わない場合、組織が被る最も重大な影響を1つ挙げるとしたら何になりますか?」
「この団体の特徴を最もよく表す3つの形容詞、あるいはフレーズは何か」
「今から5年後に、この団体が今と比べて最も変化している点は何だろうか」
「今から5年後に、この団体が今と比べて最も変化していてほしい点は何か」
「自分で団体のランキングを作れるとしたら、この団体が一位になってほしいと思うのはどういうランキングだろうか」
ワーク
「理事会が○○していなかったら、○○は達成されなかっただろう」
活発な議論のためのテクニック(P150)