髙森美由紀のレビュー一覧
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ネタバレ映画は見ていないが、津軽塗りを知るには映画がいいかもしれない。私が読んだ本には、口絵に作中に出てくる小物を思わせる津軽塗りの写真があり、巻末には漆塗りの用語などがあったので、検索しなくてもすんだ。
私がこの作家に惹かれたのは、これが青森県の、そこに住む人の物語だったことが、いちばんの魅力だったかと思う。他県ならどうかというと、そこはわからないが、青森という地元に密着した物語は、そこに住む人にしかわからないリアルを持っている。それが今の自分にピッタリくるのかもしれない。
前半は、美也子とその家族や職場の、ちょっと行き詰まった場面が多い。美也子は人との関係がうまくいかないと思っているし、気の弱さ -
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小柄ながら、もと柔道部の青木美玖、レストランのオーナーシェフ明智登麿、甥っ子の中学生(不登校)瑛太の3人が営む、葵岳の麓にあるレストランの四季。
美玖にも、登麿にも、瑛太にも人生の辛いことが胸にある。物語の中で次第に明かされていく。登麿や瑛太の家族、常連客の佐々木の爺さん、美玖の父親、父の友人市川さんたち、そして登山にやってくる人たちと紡がれる物語が5つ。
キセキレイのきみちゃん、どのお話にも現れるけど、これはもしや?
なぜ美玖の父親が山に登る美玖を心配するのか、山で取れたものに手をつけようとしないのか、それが次第に明かされていく過程はなかなか良かったけど、登麿に関してはまだ問題が解決してい -
Posted by ブクログ
つくねさんの本棚から知った、髙森美由紀さんの本です。ありがとうございます。自分の中で髙森さんのプチブームになっていて、続けて読んでいます。
髙森さんの本は、人との繋がりが色々な形で感じられる。その描き方が素敵だと思う。青森県の小さな町、というローカルな場所を舞台にしているところも、人との繋がりをより一層感じさせてくれる。私には、青森県という場所を舞台にしたローカルな物語でなければ、これほど魅力に感じなかったかもしれない。
まず、読み進むと出てくる「菱刺し」について調べてみる。これがわからないとイメージが湧かないから。
すると、1色で作った素朴なものから、多色でグラデーションを使ったもの、刺繍 -
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ネタバレ面白かったー!知らないことを知るのは楽しい。
民藝、日本各地の産物、青森出身の作者ならでは。本として作品を紹介し残していく。日本の伝統工芸、大切にしたい。
とても温かい話で、まさかなところでうるっとくる。
青森弁が分からなすぎるのも雰囲気出て良い!
菱刺し、綿が育ちにくく寒冷地。法律で農民は麻しか着られなかった時代に厳しい環境を生き抜く知恵、保温効果を高めた菱刺しは、うつくしさの中に重みと強さがある。布の目を塞ぐ。一刺し一刺し愛する家族を守るため。命が繋がるならやる、シンプル。生きるって案外シンプル。 p.218
雨宿りした公民館で出会った菱刺し、進路に悩む綾は出会ったことで人間性まで変 -
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青森県南部地方に江戸時代から伝わる刺し子の技法「菱刺し」。その菱刺しに魅せられた人たちを描く群像劇。全4章。
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物語の柱になるのは2つ。主要人物たちにとって心の糧となる菱刺しと、その技法を手ほどきするより子先生です。
菱刺しは、その地味ながら美しい紋様や彩りで、現代でも愛好家がいるほどですが、元は江戸時代に貧しい庶民たちによって考案された、実用第一の生活の知恵でした。
綿の栽培が思うに任せない本州最北県の青森。麻の衣類で長く厳しい冬を乗りきるためには保温性を高める必要があります。
目の粗い布地の隙間を麻糸で埋め縫いすることによって、風を通さず、体