森口佑介のレビュー一覧
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根拠の乏しい議論になりがちな子供の発育に関する本の中で、かなりフェアな語りをしてくださっていると感じます。
教育や発達に関する研究はデザインやデータ、設定など素人目に見ても難しそうと感じますが、この中で紹介されているような一歩一歩がどこかで実を結ぶのだと信じて止みません。
未来志向、現在志向の子供についても、有名なマシュマロ試験の問題点など共感できる部分が大きかったです。結局それぞれの子供の背景や行動の意図が違うため、科学としてデータに向かう面ももちろん重要なのですが、個別性に目を向けた人間の解像度を高める視点も重要に思えました。
自分の家庭の子育てを考える上で大事な学びがあったと感じます。
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ネタバレ本書で繰り返し説かれる「実行能力」。これはコヴィーさんの「7つの習慣」の「第1の習慣」で登場する「主体性」と言い換えて差し支えないだろう。ダニエル・カーネマンさんに言わせると「システム2」とも言える。つまり認知バイアスに囚われず、理性的な態度を維持させるということだ。これは自己啓発系の核心と言って良い。
そしてこれは2023年以降では、「ChatGPTやBardなどの生成AIに冷静に相談できる実行能力」とも言えるだろう。自分に何か問題が降り掛かった直後に(思わず)反射的に行動してしまうか、実行能力を働かせた理性的な行動を選択できるか、である。 -
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・実行機能は自制心と似た概念で、目標達成のために誘惑を跳ね除ける力
・目標達成に主眼を置いている点において、自制心とは異なる
・実行機能の重要性を裏付ける研究:ダニーデンの長期縦断研究
・実行機能が低いと、健康面・経済面・家庭面で起こす可能性が低くなる
・半年後の学力に影響を与えるのは、IQよりも実行機能
・実行機能には、①感情の実行機能(ラーメンを食べたいけど我慢してサラダランチにする)、と②思考の実行機能(環境が変わった際に無意識の行動を制御せる)がある。マシュマロテストは感情の実行機能を調べたもの
・大人でも実行機能は伸びるが幼児期に比べるとその伸びはわずか。大人は実行機能を伸ばすことよりも、自分がどのような状況で実行機能を働かなくなるかを把握してその状況を避けるなど外部環境を整えるアプローチが有効。簡単な例だとアルコールが好きなら、居酒屋の前を通らないようにするなど。 -
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■メモ:
・貧困が子供の発達に影響を及ぼす。
理由1:ストレスの影響。貧困家庭で生まれた子は生後半年で慢性的なストレスを感じがち。ストレスは前頭前野の働きを鈍くする可能性がある。
理由2:親子のやり取りの少なさ。親子の会話や交流の少なさが、前頭前野を未発達にさせてしまう。
・子どもは無力で無能な存在ではなく、自分で世界を探索する活動的な存在である。(by ジャン・ピアジェ)
・「同化」と「調節」。
同化は新しいものに出会ったときに、子供が既存の知識や概念の中に取り入れること。調節とは、新しいものに出会ったときに、子供が既存の知識や概念の中に取り入れることができなために、自分の知識や概念を変更すること。
・幼い子供にとって、責任ある大人からの温かい接触は極めて重要。
・中核は、アタッチメントにある。
・養育者は子どもにとっての初めての他者。養育者への信頼が、それ以外の他者に対する信頼につながっていく。
・養育者との関係は子どもの「自分」についての考え方の基礎になる。養育者との間に良好な関係を築けた子どもは「自分は他者から愛される存在だ」「他者は自分に優しくしてくれる存在だ」と考えるようになるが、養育者との間に良好な関係を築けない場合は、「自分は愛されない存在だ」「他者は自分に意地悪する存在だ」と考えるようになるかもしれない。
・子どもは、最初は誰にでも親切。次第に「誰に対して親切にしないか(向社会的行動をしないか)」を学んでいく。
・発達格差を是正するためには、子どもの能力向上だけでなく、周りの環境の支援が必要。親を含めた他者への信頼が確保された環境であり、貧困などにあたらない十分な経済的余裕が担保された環境設計が必要。
・発達格差は実行機能や向社会的行動として表に出てくるが、その根本となるのは他者に対する信頼。他者を信頼するには、最初の他者である養育者との関係が大事。
虐待やネグレクトをしないことはもちろんのこと、精神疾患や抑うつ状態にある養育者が子どもに安心、安全の場を提供することは容易ではない。養育者への支援も重要。
・女性に限り、母親の子育ての仕方の影響を受けることが分かっている。(byダニーデン)
・適切な養育において大切な養育者の敏感性。ここでの敏感性とは、養育者が子どもの視点に立ち、子供の出す何らかのサインに気づき、正しく解釈し、適切に反応することを指します。例)おなかがすいて泣いていると判断し、ミルクを与える など
・幼稚園、保育園、こども園の重要性。
→養育者にプロとしてのアドバイスが可能、子どもの能力を伸ばすことが可能、子どもにとって信頼できる存在になりうる。(アタッチメント)
・子どもとのかかわり方に関する支援が必要。
例)子どもとのアタッチメントを築くことに困難を示す親に、かかわり方を教えるペアレントトレーニングを行う。 -
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自分をコントロールする力を非認知スキルや社会情緒的スキル、実行機能と呼ぶ。主に子どもの実行機能の発達について書かれている。
特にヒトにおいて発達している実行機能だが、これが高い人ほど社会的な成功や健康を手にしやすい。日本ではまだ実行機能への一般的な関心は低いが、世界ではマシュマロテストだけでなく様々な研究が進んでいる。そして青年期は実行機能の発達の大きな岐路であり、人生を大きく左右する。要因としては遺伝的なものもあるが環境的なものがより重要。
なお、大人の実行機能を鍛えるのは困難であり、実行機能が低下するような環境に備えたり誘惑を避けたりといった技術的なことが手段が必要。 -
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知能指数(IQ: Intelligence Quotient)と実行機能(EF: Executive Function)の比較で、実行機能はその人の経済力や健康状態を将来的に左右する重要な指標であることを丁寧に説明した好著だ.実行機能はIQに比べてあまり知られていない.IQは人生の中で変化しないが、実行機能はやり方を工夫すると向上する由.感情の実行機能と思考の実行機能があり、数多くの事例を紹介しているが、それぞれ参照文献を例示しているのは、研究者の常道だと感じた.実行機能に留意した教育が実際に始まっていることも紹介されており、この用語がポピュラーになることを期待している.
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ネタバレIQより大事かもしれない非認知スキル。
人生の成功を左右すると言われたら、つい気になってしまう。ここで語られているのは実行機能という自分をコントロールする力。従来のいわゆる頭の良さを示すIQなど認知的スキルに対して、将来の目標のために誘惑や困難に立ち向かい、打ち勝つ力を非認知スキルの実行機能として紹介している。いわば自制心か。
マシュマロテストなど心理学の有名な実験なども参照して、実行機能の説明、育ち方、その仕組み、育て方や大人になってからの鍛え方(鍛えられるのか)を、順番に説明している。教育関係者や育児にかかわる人は一度読んでみてもいいかも。 -
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2020.5 記。
日経書評欄に載っていたのでミーハーに読み始めた。
ざっくり、「ガマンする力」と「やり抜く力」(グリッド?)は表裏一体で、それらを総称して「実行機能」と心理学領域では呼んでいるらしい。
実行機能=「目標に向かって自分をコントロールする能力」。
面白く読んだのだが、読む前に想像していたセルフコントロール=要するにストイシズム、という予断は誤解だったっぽい。
有名なマシュマロテスト。小さい子の前にマシュマロ一つを置いて、しばらく我慢できたら二個あげる、と約束して一人にしておいて我慢できるか。
他の実験もチョコをガマンさせたりプレゼントを盗み見るのをガマンさせたり、なんか要するにおなじに見える。
どれも将来のより大きなリターンのために今我慢しているだけで欲望そのものを抑えているわけではない。異時点間の最適化の問題という気もするのだ。もちろん、より大きな「目標」達成のためには、年単位でこの視座を持てるようにならないといけないのはわかるのだが。
例えば禅などは、何かを達成したいという欲望そのものを相対化する試みと理解している。
今我慢すればより幸せになれるよ、という考え方自体から解放されようという取り組み、というか。
「成功」か「平安」か、目指すものによって訓練の仕方も変わってくるのかもしれない。 -
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やらなきゃいけないことをつい後回しにしてしまう自分のために読んだが、とても良かった。
本書では、非認知スキルの一つである「実行機能」について、発達の仕組みから重要性まで、初心者にも分かりやすく丁寧に書かれていた。
第4章は少し専門的で読みにくかったが、それ以外は教育的な側面から見ても興味深い話が多く、子育て世代にもぜひ読んでみてほしいと思った。
ただ一つ残念なのは、やらなきゃいけないことをやらないまま、いつの間にか本書を読み終えてしまっていたことだ。やや本末転倒な気もするが、やるべき事を後回しにしてでも読みたいくらい、本書は面白かった。 -
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2025.4.3
今まで女性脳、男性脳はあると信じていたけどそれは周りの環境が作っていた…?
参考文献が全部英語のもので、色んな論文を集めて日本語にしてわかりやすくまとめてくれたんだなと思った。
色んな研究もあって面白かった。
・身体的な攻撃性は男性に高い。(犯罪者も男性が多い)
・意図的な仲間関係にダメージを与えるような攻撃は女性の方が強い。
・親の関わり方やジェンダーに対する考え方が子どもの攻撃性の性差を促進している。攻撃性すら親の関わりが作り出している可能性がある。
・親、教師、メディアなど周りの大人の信念が気がつかないうちに子供に伝わり子供自身が苦手科目や得意科目を作ってしまう。得意!と思えば成績は上がりその逆もある。
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表題の通り、一部科学的に若干の性差がある側面もあるけど、基本的には性差は生まれつきあるわけではなくて、大人が無意識に植え付けてしまっている可能性があるという内容。
お腹の中の赤ちゃんがお腹を蹴った時に「蹴った〜男の子かな??」とか、男の子が転んだ時に「泣かないの!男の子でしょ??」とかいう言葉が出てくるのって、絶対悪気なくナチュラルに出てきてしまうものだと思うけど、そういうところを少しずつ意識して変えていかない限り、性差による偏見や不平等のスパイラルからは抜け出せないんだな、と思った。
子供に対して、性差の認識を植え付けてしまうような表現をしないためにも、個々人の興味関心とか個性に目を向けることが大事って書いてあって、
これって性差に限らず、血液型とか兄弟構成とかによる科学的根拠の無いバイアスから解き放たれるための方法でもあるなあ、と感じました!!