ホイジンガのレビュー一覧

  • 中世の秋(下)

    Posted by ブクログ

    自分が本書を読みこなす力がなく申し訳ない限り。
    でも、上巻より少し中世人の精神構造が分かった気がする。

    本書が扱うのは、14,15世紀のフランスからネーデルラントまでの地域。
    聖職者への尊敬と蔑視が混在するのは、単に聖職者の堕落が進んだからというわけではない、という。
    この地域ではキリスト教化が完全に進んでいたわけでなく、人々は騎士道にあこがれ、非暴力を唱える聖職者はどうも受けが良くなかった、という事情がある、なんて話が冒頭に出てくる。
    だから、一人の人間の中で恐ろしい暴力と信心が矛盾なく同居することも起きてくる。
    このあたり、自分の持っていたイメージも少し変わってくる。

    中世末期の精神的傾向は、象徴主義から実念論、そして比喩(アレゴリー)に移行していくという話も興味深かった。
    十分に理解できたとはいいがたいけれど。
    象徴には「階層的身分関係」があり、低いものが他のある高い存在を示す。
    そうすると、最高位の存在(神)は、恐ろしくたくさんのシンボルを持つことになり、「思考のポリフォニー状態」をなすというのだ。
    なんというややこしいことを…と思っていたら、実際当時の人にとってもその通りだったようで、うまくシンボルを操ろうという「遊び」と堕してしまうとのこと。
    そうやって、象徴主義は終わっていったようだ。
    アレゴリーの話は、「象徴主義の侍女」ということで、ひとくくりにされてしまっているが、ゲーテを引用して説明した違い(アレゴリーは意味を画定するが、象徴はいいつくせないものを生む)はどこ?
    読み飛ばしてしまったのだろうか?

    ちなみに、こういうところに「遊び」というタームが出てくる。
    ホイジンガと言えば『ホモ・ルーデンス』。
    本書とどちらが先なのかと思ったら、本書の方が先だった。

    後半は美学的な話に進んでいく。
    面白く読んだのは、この時代の人々の美的感覚の特徴。
    美しいものを感受した時、どう表すかという問題だ。
    輝きと生き生きとした動きを感受する感覚に関わっているらしい。
    特に光の概念を使って感じ取った美しさを表現する傾向があるという。

    「絵と言葉」「言葉と絵」という章が並んでいる。
    詩と絵画の分析であり、多くの作品が取り上げられていくが、残念なことに何一つ知っているものがない。
    その違いは何か…が残念ながらうまく理解できなかった。

    その中で、この時代の詩に見られる「フランス語のラテン語化」が取り上げられている箇所があり、それはしっかり日本語訳されている!
    訳者のご苦労がしのばれる。

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    2026年08月22日
  • 中世の秋(上)

    Posted by ブクログ

    フランスとオランダの14、15世紀の人々の感情はどのようなものだったのか。
    それを文学作品や絵画まで含めた幅広い資料から解き明かしていく、ホイジンガの主著とのこと。

    14、15世紀というのは、ルネサンス=近代前夜の時期。
    地殻変動が起きつつある時期と思うと、興味深い…のだが。

    人々の感情の動きは激しい。
    魂の救いを熱心に希求したかと思えば、次の瞬間には俗世の楽しみを謳歌したがる。
    例えば騎士道。
    騎士道は、宗教的な理想と結びついて禁欲的な傾向を持っているが、男性的闘争欲を是とする思想でもあるため、同時に愛欲にも結び付いている。
    キリスト教への信仰が高まり、聖なるイメージを表そうとするあまり宗教に関わる言葉が濫用され、卑猥な用法を生んでしまう。
    このような矛盾を、矛盾と思わず生きている。
    きっといつの時代でも、どの場所でもそうなのだろう。
    が、その矛盾のありさまを、克明に描き出していくのが本書である。
    大きな見取り図といったものは得られない。
    むしろそう思って、細部を味わっていく本のような気がする。

    この上巻では、騎士道と愛、死、聖なるもののイメージが中心的な主題。
    下巻を読んでから、また読み返したら新たな発見があるに違いない…と思いたい。

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    2026年08月15日