アンドリューショーングリアのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『レス』というのは主人公の名前である。最近では珍しくなったが、『デイヴィッド・コパフィールド』しかり、『トム・ジョウンズ』しかり、長篇小説の表題に主人公の名前をつけるのは常套手段だった。原題は<LESS>。これが「(量・程度が)より少ない」という意味を持っていることくらい、最近では小学生でもわかる。そういう名前の持ち主が主人公であり、それが表題や各章のタイトルになっているとしたら、初めから内容が想像できるというもの。
口の悪い評者がハリウッドの二流のロマコメのようだ、と評していたが、いいじゃないか。ロマコメは嫌いではない。スプラッターやホラーより、ずっと好きだ。でもこれはロマコメではない。男 -
Posted by ブクログ
ネタバレ元恋人の結婚式への出席を回避しようと、仕事で世界一周をしようとするゲイの作家の物語。コメディタッチで、明るい話だった。ただ、この物語の語り手とその結末にはラブストーリーとして感動するものがあった。個人的に気に入ったのはレスのある一面の真実であるところの、レスが恋をしているようなキスをし魔術的な魅力のある触れ方をする点が美しく描かれているところ。そしてひと頃のゲイ文学ではよくありそうな悲劇的な英雄像は排され、愛すべき、人並みなキャラクターとして描かれているのもよい。ゲイという存在がマジョリティの人々と肩を並べて歩いていくのはこのような感じなのかもしれない。
-
Posted by ブクログ
フィクション作家のアーサー・レスは、9年間付き合った元恋人フレディから結婚式の招待状を送られる。フレディとの関係を知っている共通の知人が多く出席する中で針の筵になりたくないアーサーは、これまでに届いていたフレディの結婚式以外の招待(著名な作家との対談や、知らない賞の授賞式、大学院の講師の仕事など)を受けて、海外にいることを口実に結婚式の招待を辞退することにした。ところが元恋人を忘れるために出た旅先で、彼は思いがけなくあらゆるトラブルに見舞われ、なぜか自分の過去と向き合うことになる。
映像化ができないタイプの作品である。その仕掛けが最後に明かされた時、物語が大きく姿を変える。息子としても恋人 -
Posted by ブクログ
ネタバレゲイの50歳の小説家レス。別れた彼が結婚するということでパーティに呼ばれるが、どうしても参加したくない。そこで、国内にいないという理由で断って、実際に、ドイツ、イタリア、フランス、モロッコ、インド、京都へと旅をしていく。その旅の過程で、過去の彼氏や男との出会いと別れがあり、中年のおじさんたちの悲哀と輝きをなんとも喜劇的に、滑稽に表現していく。確かに、おじさんって、なんとも面白いし、なんともシュールだ。
実際の海外での出来事は、おそらく実際に行って取材した国とそうでない国で描写が全く異なるために、京都にはきっと行ったんではないかと想像した。物語の最後にたどり着いた京都で、自分を見つめ直し、そして