この周介という主人公は恐ろしく律儀だねぇ
不良然としたスタンスで喧嘩っ早い。ルールを破ることにも抵抗が有るわけではない
だというのに、たった一夜を共に走った灯の為に人生捧げる気でいるのである
読んでいるコチラとしてはどうしてそこまで?と聞きたくなるような周介の律儀さなのだけど、彼にとっては自身の左手に宿った灯の為にそれだけの事をする理由はきちんとあるという事なのだろうな
好きに生きろと言われて不良になってしまった周介、好きに生きろと言われてピアノを引き続ける灯。あの瞬間、二人の境界線は限りなく薄くなり、そして周介は灯が羨む大きな手を持っていた
だというのに灯は突然その命を散らしてしまって……。相手の言葉に納得できない時は拳を振るう傾向が有った周介の左手に突然の死を迎えた灯が宿ったとすれば彼女の為に手の平を鍵盤に叩きつけるのはある意味当たり前だったのかも知れない
だとしても中学3年生から本気でピアノを始めるなんて極めて困難な道だと思うけれど、周介の態度を見る限りその点は大丈夫ということなのだろうか?
正直、素人が突然コンクール出場を目指して猛練習を始めるなんて無理難題としか思えないけれど、弱音を一切見せずにピアノに向き合い、それどころか聴いている方も楽しくなるような音を手に入れつつ有るのは成長の幅がとんでもなく大きそうな
左手でピアノを弾くことは灯にピアノを続けさせるという意味になり、右手でピアノを弾くことは周介に音の楽しさを手にさせる意味となる
そして両手でピアノを弾き続ければ灯が掲げ周介が魅せられた夢に少しずつ近づいていく
二人による半分ずつの連弾がどこまでの高みに到達できるのか、そして喪失の痛みに嘆く音理に届くことは有るのか?
次の巻も楽しみだね