冒険譚は数あれど、冒険家ではなく会社員として南極点を目指すというところがキモである本書。
南極でのエピソードよりも準備段階、とくに資金に関する苦労にページを割いていることが特徴的。またそもそも南極点にチャレンジするか否かという根本的な葛藤からして冒険家とは違うサラリーマンならでは。
男の一念岩をも砕く、を具現化したような話は、そんな渇望感のない身にはタメになることは何もないが、ざっくばらんな心理叙述は面白い。
ただ重要な局面で心の声と実際の声が(わざとなのか?)読み分けられない部分があり、状況の理解の妨げとなってしまい残念。