日本の政治経済や経済政策の専門家としてUCバークレー教授を務める著者が、マーケットデザインに関する種々の誤解を解きながら、日本経済が復調するために取り入れるべき政策的含意をまとめた論考集。
マーケットデザインとは近年になり着目を集めている経済学の一種である。従来の経済学が市場というものを比較的スタティックなものとして捉えるのに対して、マーケットデザインでは、市場そのものを種々の政策によって操作することで、経済的ベネフィットを獲得することを目指す。周波数オークションのような政策はその一種であるし、様々な分野でマーケットデザインの注目は集まっている。
さて、マーケットデザインが対象とする市場を考えるときに、その対概念として我々は国家の存在を想起する。そして、あたかもア・プリオリに、”自由市場”なるものを想起する。著者によればこの全てが間違っている。なぜなら、完全に自由なる市場というものは存在せず、その市場が成立しているのは、明らかに何らかの規制・政策によるものだからだ。本書では、一見日本に比べて自由市場だと思われているアメリカの金融市場が、実は規制により制御されたものであるという事実などを示す。そうしたエビデンスを経て、我々は日本の経済成長のためには、自由市場を求めて規制緩和するよりも、むしろ適切な規制により自由な市場を創出すべきだという示唆が提示される。
本書の学びとして、マーケットデザインという観点で読むのは当然面白い。また、いわゆる日本的経営に関心を持つ人にとっても、各種の規制改革がどのように日本の高度経済成長を実現したかなどの示唆が得られるだろう。一見難解な本であるが、真っ当な経済学の書籍として様々な人にお勧めしたい。