エドワード セント オービンのレビュー一覧

  • パトリック・メルローズ5 アット・ラスト
    起きた過去は救いがなく、救われるのを待っているだけでは人並みの透明な心は取り戻せない。それでも人生は廻り続け、5歳の頃から歩き出せない主人公にも、人生のさまざまなステップが降り注ぐ。父の死、薬、女性関係、結婚、子育て、そして最後の呪縛を解き放った母の死。
    このシリーズを読みながら、著者の半自伝的小説...続きを読む
  • パトリック・メルローズ3 サム・ホープ
    タイトルどおり、希望の感じられる巻だった。
    主人公の経験と思考は、3巻分のお話を読んだくらいではとても消化できるような内容ではないはずなのに、ずっと付き添ってこられた。著者の表現力には本当に感嘆する。

    そしてもう一人、この物語の中で存在感を示したブリジット。かつては馬鹿なフリをする馬鹿な娘だった彼...続きを読む
  • パトリック・メルローズ2 バッド・ニュース
    "耽美"や”罪悪”という言葉を理解するのに、この本ほど
    適した小説はないのでは。2巻の大きなテーマは、残酷な父の死、そして薬物。薬物中毒者の脳内カオスの再現という、どう考えても困難な表現が流れるように描かれることで、ほんの数日の出来事が驚くほど濃密になって読者を引き込む。著者が"衝撃的な体験をしただ...続きを読む
  • 語りなおしシェイクスピア2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇
    バッドエンド作品からは喪失感や悲壮感だけしか得られないのではないかと思っていたが、マイナスの感情や描写にこれだけ感嘆できたのは驚いた。
    それぞれの思惑の描き方が(嫌なことに)全て共感できてしまう、共感させられてしまう。ダンバー逃走劇の盛り上がりも面白いし、とにかく秀逸な表現が、読み応えがあってどんど...続きを読む
  • パトリック・メルローズ1
    展開の残酷さが衝撃的すぎて、そちらに意識がいくかもしれないが、ひどい暴力と絶望を体験した作者が、加害者である大人たちの心情をここまで効果的な比喩で表現していることがあまりにもすごい。

    具体的な行為については、パトリックの防衛本能が働くのか、少し空想を交えて語られるところなども逆にリアルで、心が疲弊...続きを読む
  • 語りなおしシェイクスピア2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇
    さすがシェークスピアの悲劇。救いが無い。先に読んだ本と設定同じなのに、むしろ娘を可愛い盛りに亡くす方が酷いのに、リア王の方が業が深いのかしら。途中でせっかく心入れ替えたのに、結局娘失うし。殺したいほど恨まれるような金も権力もいらないから、てっぺん掴みたい気持ちがさっぱりわかんない。それにしてもほんと...続きを読む
  • 語りなおしシェイクスピア2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇
    現代作家は、超有名「リア王」をどうするのか。

    「リア王」を戦国時代に変換した黒澤明監督映画「乱」では、億かけて作った城を燃やすシーンや鬼気迫る仲代達也の演技が、今も語り継がれる。

    この物語では、現代でのメディア王ダンパーが娘たちの謀略により精神治療の病院へ「幽閉」された後から始まり、ダンパーの脱...続きを読む
  • 語りなおしシェイクスピア2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇
    リア王やシェイクスピアを読んだことがなくても、楽しめると思う。でも、読みながら、む?このセリフは確かあれの…とか、この関係性はこの構造はあれと似てるような…などとモヤモヤしていたものが、河合祥一郎氏の解説にて、そうだそうだった!とスキッとする。セント・オービンがいかに研究したか凝ってるかがわかる。