エドワード セント オービンのレビュー一覧

  • パトリック・メルローズ5 アット・ラスト

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    起きた過去は救いがなく、救われるのを待っているだけでは人並みの透明な心は取り戻せない。それでも人生は廻り続け、5歳の頃から歩き出せない主人公にも、人生のさまざまなステップが降り注ぐ。父の死、薬、女性関係、結婚、子育て、そして最後の呪縛を解き放った母の死。
    このシリーズを読みながら、著者の半自伝的小説なのだということがずっと心の奥にあった。
    ここまでの自己分析と、さまざまな思惑を持つ人々の描写、そして筆力。著者の人生はこれからも続いていくわけだが、この作品を書き上げ、文学にしたことで少しでも救いがあればいい。

    読んでいる間、私自身の人格にも影響が出てくるような、"侵食"が凄

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    2022年04月10日
  • パトリック・メルローズ3 サム・ホープ

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    ネタバレ

    タイトルどおり、希望の感じられる巻だった。
    主人公の経験と思考は、3巻分のお話を読んだくらいではとても消化できるような内容ではないはずなのに、ずっと付き添ってこられた。著者の表現力には本当に感嘆する。

    そしてもう一人、この物語の中で存在感を示したブリジット。かつては馬鹿なフリをする馬鹿な娘だった彼女が、強さを見せ、弱さを抱えて旅立つラストシーンはことさらに美しく見えた。

    父と息子、母と娘の再生が、邪悪なパーティ会場で響き合った第3巻。ここで終わらずあと2巻もあるというのが非常に嬉しい。

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    2022年03月29日
  • パトリック・メルローズ2 バッド・ニュース

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    "耽美"や”罪悪”という言葉を理解するのに、この本ほど
    適した小説はないのでは。2巻の大きなテーマは、残酷な父の死、そして薬物。薬物中毒者の脳内カオスの再現という、どう考えても困難な表現が流れるように描かれることで、ほんの数日の出来事が驚くほど濃密になって読者を引き込む。著者が"衝撃的な体験をしただけ"ではなく、真にイギリスを代表する作家であるということが隅々から伝わってくる作品だ。

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    2022年03月18日
  • パトリック・メルローズ1

    Posted by ブクログ

    展開の残酷さが衝撃的すぎて、そちらに意識がいくかもしれないが、ひどい暴力と絶望を体験した作者が、加害者である大人たちの心情をここまで効果的な比喩で表現していることがあまりにもすごい。

    具体的な行為については、パトリックの防衛本能が働くのか、少し空想を交えて語られるところなども逆にリアルで、心が疲弊するし、心臓がひとまわり小さくなったのではないかと感じるほどだった。

    なかなかお目にかかれない世界の話だからか、作者の筆力が凄まじいからか、消化するのが難しい話だけれど、訳者あとがきに上手くまとめられているのでそこまできちんと読むのをお勧めします。

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    2022年02月26日