【選書理由】
社会人になって以来、就職先として憧れていた業界。
(その原点は学生時代にお世話になったファンド出身の師匠にあり)
現在従事している仕事でも関わることもあり、ある程度理解しているつもりであるため、お隣の業界とちうイメージではあったものの、体系的に理解したいと思い、読むことに。
ちなみに、
...続きを読むこれまでに、ファンドにまつわる本としては、『ハゲタカ』、『ブラックストーン・ウェイ』、『生涯投資家』を読んだことがあるものの、今回のような「教科書」を読むのは初めて。
【身につけていたい知識】
・PEファンドのビジネスモデル
・具体的な投資スキーム
・活用の意義
・投資検討からエグゼキューション、バリアップ、エグジットまでの流れ
【得られた知識】
・各フェーズごとのPE ファンド側のTODO
・PEファンドにて目安となる利回り
・事業会社側でのPEを使うべきタイミングや条件
・ファンドにあける報酬の決まり方の目安
【感想】
PEファンドそのものを含め、その周辺領域で仕事に興味があったため読んだ書籍。評判によると、入門書と言うような位置づけではあるが、内容は予想よりも詰まっていて、PEの概要はもちろん、デューデリジェンス、法務面についても詳しく記載されており、この1冊あればPEとの関わり方において、勘所がつかめると思う。
3章のうち、デューデリジェンスの部分はとりわけ詳しかった。
私がデューデリジェンス業務を経験したことがあるということもあるが、少ない紙幅の中でも専門書レベルの内容の記載があり、とても良かった
全体的に図表に情報量が詰まっている印象であった。
【印象に残った箇所】
22p
図表1-2 企業の成長ステージとPEファンド
36p
図表1-6 ベンチャーキャピタルとPEファンドの相違点
51p
PEファンドはどのくらいの利回りを上げているか?(利益を計上しているか)については、国内においては、何ら明示された情報はありません。報道されている情報や業界のヒアリングベースで見ると、投資のリターンについては、年利ベースで概ね5〜15パーセント程度であり、リスクの取り方や付加価値の創出方法などからすると、実際のところは、過度に営利性が高いと言う事でもなさそうです。
52p
PEファンドはその仕組み上、長期安定株主にはなりえず、1種のブリッジファイナンス(つなぎ融資)だと、割り切った上でのお付き合いが必要になってきます。
62p
「PEファンドの投資先である」と言う理由だけで、企業独自で探すよりは、明らかに採用応募が多い状況にあります。その意味で、PEファンドの活用は、後継者対策の1つの有力な選択肢となるのです。
85p
事業会社の事業回収(M&A)の場合、事業を行う、ライバル企業同士として、情報漏洩のリスクは否定できず、特に、業界の動向が混沌としている状況においては、それが命取りとなるリスクが残ります。
139p
日本での過去のPEファンドのイグジット実績はIPOが10〜15%程度であり、その他の大半のイグジットはトレードセールとなっています。
245p
一般的には、この10年のうち前半の5年間を「投資期間」として設定され、新規の投資は、この期間内に実施することが求められます。つまり、最初の5年間で必要な投資機会へ何らかの形でアプローチするとともに、事業調査、評価、交渉、取引成約まで持っていく必要があります。その上で、企業価値の向上に努め、最終的な運用期間内(10年以内)での売却、回収が必要になるのです。
249p
実際の各ファンドの考えた方としては、全体のファンド規模が決まってから個別の投資案件の規模を想定するということではなく、逆に、「1件あたり30億円くらいの出資が必要なPE投資案件が、年に2件、5年で10件くらいが想定されるため、300億円くらいのファンドが適切だ」と個別に積み上げて考えるケースのほうが多いのではないかと思われます。
251p
一般的には、ファンドの規模などにもよるようですが、ファンドサイズ(ファンドのコミット総額)の1〜2%が、年額の管理報酬として設定されるようです。通常は、この範囲内で、PE運用会社の人件費やオフィス費用を賄い、ファンドのパフォーマンスを最大限に上げる努力がなされます。
252p
投資案件の売却に応じて、売却益(キャピタルゲイン)が生じた場合には、一般的には、ファンド運用にかかる経費などを除いたファンドの純利益額の20%程度の成功報酬が、PEファンド運用会社に対して支払われることになります。
このような成果報酬は、通常は、全ての投資案件を投資完了し、何件かの売却・回収を経て発生するため、ファンドの後期(設立後7〜10年程度)で生じることが多いようです。