ネタバレ
Posted by ブクログ
2020年01月03日
副題の「その仕組み、ディールの流れから、法務・契約上の留意点まで。実務者向けの一番やさしい解説書」に期待して購入。著者は、レゾンパートナーズの波光氏と山田氏、森濱田の松下氏。松下氏は同学年(1982)、山田氏は1つ下の学年であることにビビる。
感想。期待通りの内容で、素晴らしい。
備忘録。
・ロ...続きを読むールアップ戦略。PEファンドの投資後に、同業他社を追加買収する戦略。
・PEファンドを映画製作に例えると、黒子のプロデューサー。映画監督は投資先の社長、俳優は経営陣や従業員。プロデューサーであるPEファンドには、当該業界の経験値よりも、戦略立案力や統率力、推進力こそが求められる。
・事業再生ファンドの投資対象になり易い類系は、①売上悪化が一時的で収益改善が見込まれるケース、②売上の伸びは苦しくとも、コスト削減による収益改善が見込まれるケース、③本業には異変がないが、別事業の失敗により財務が逼迫したケース。いずれも適切に財務リストラをするのが王道。
・再生ファンドに限らず、広義のPEファンドが出資を検討しやすいのは、CFの安定性、しがらみの存在(ファンドが入ることで解決)、とか。
・PEファンドを活用しにくいのは、事業が小規模(投資金額が5〜10億を切るイメージ)、事業内容が俗人的、売り先や仕入先が特定の先に依存、大規模な設備投資が必要、特徴のない会社(真似が容易な事業)。
・ティーサー。買主候補を探すときに使う、社名が特定できない程度の企業情報。業種、エリア、売上と利益のサマリー。
・MOU(基本合意書)は、事前に当事者同士で合意した、買収スキーム、取引価格、スケジュール等の内容で作成。法的拘束力を持たせないのが一般的。口頭合意内容を見える化するのが目的。
・LBOローンの水準はEBITDAの5〜6倍か。エクイティ対ローンが1対2〜3程度になるケースが多いとの、著者コメント。
・売主の税務。売主が個人なら、よくあるSPCへの売却で、株式譲渡益に対して分離課税20%となるのが良さげ。売主が法人の場合はリキャップの組合せも考えた方がよいらしい。
・デューデリ時のマネジメントインタビューは、序盤でやればその後の資料検証のヒントになり、かつ買収後の経営体制構築に向けたヒントにもなる。
・デューデリ時の売主側の情報開示義務について。積極的な情報開示の義務は負わないが虚偽の情報開示はダメ、という消極的な開示義務は負うモノらしい。また、売主が開示した情報をもとに買主において一定の認識が形成され、その後実際の状況が当該認識と大幅に乖離することが明らかになった場合は、売主が買主の認識を是正する義務を負う、という裁判例あり。
・対象会社が非上場企業の場合、財務諸表は税務申告を目的にしており、GAAPに基づいた正確な収益力を示すものではないと考えた方が良い。デューデリ時には、収益や費用の認識基準、引当金(含む退休)が正しく計上されているか、経過勘定の処理が正しいか、とかがポイント。
・正常収益力分析、プロフォーマー調整、スタンドアローンイシュー。
・デューデリ対象期間は3年が一般的。最長でも5年(法人税の更生の請求期間に合わせる)。
・法務面のデューデリ時には、許認可は当然だが、労務関連法や個人情報保護法、下請法とかも、注意が必要。未払給与の調査も。
・セラーズデューデリというのもある。
・スクイーズアウトの手法。従来の全部取得条項付株式を利用する方法から、株式併合へ。
・MOM条項。マイノリティーオブマジョルティ。一段階目の公開買付時に、対象者の過半数が賛同しているか。
・リバースブレイクアップフィー。確かに。