山寺香のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・行政の人間が怠けているからこのような少年が救われない、のではなく、救えるはずの人を救えるシステムがまだ出来ていない。
面倒見てあげたいと思っても次の日には姿を消す、その行き先はわからない。それでは支援が難しいのは当たり前。
・少年にフォーカスすると話が綺麗なのはわかるが、事件の根本的原因として描かれている母親の背景への考察が薄かったのが残念。
母親の家庭環境にそこまで問題はなかったと描かれているが、あそこまでの浪費癖、他人との接し方を考えると、単なる性格が悪い女、では片付けられない。
・少年は大変賢く頭も切れるので更生に希望を感じるが、肝心の母親をどう短期間で支援するのか気になるところ。 -
Posted by ブクログ
川口市で起きた17歳の少年による祖父母殺害事件。
著書の取材により炙りでるこの事件の本質を描くルポルタージュ。
クロワッサンに紹介されていたのを見て手に取りました。
事件のことはほぼ記憶にないまま。
同世代の息子がいるので、話題にはしていたかもという程度です。
事件の背景を知り、母親に対する嫌悪感を感じ、腹立たしい気持ちになりました。
少年の罪は非常に重い。でも、この母の罪はさらに重いものだと思います。
この母親をどうにかすることは出来なかったのか。
虐待を受けた子供を救う為に行政できることにも限りがあることを知りました。
自分を含め、周囲の人が行動することが救いになることがあることも知りました。
本書にもある『行動を伴わない善意には現実を変える力はない』という言葉が重いです。
たくさんの支援者がいるとのこと。その勇気に脱帽します。
本書の言葉を借りれば「世の中捨てたもんじゃない」と言うことなのかもしれないですが、行動を起こさない自分が言うことではないですね。
とは言え、起こってしまった事件により、人の命が奪われてしまったという事実は否めません。
ご遺族に安らかな日が戻りますように。
母親も遺族のひとりではあると思うと、ホントに複雑。
自分の娘により虐待された孫に手を下されてしまった被害者の無念を思わずにはいられません。 -
Posted by ブクログ
この少年(当時)は結局、懲役15年の刑で服役しているのだという。
確かに殺人という行為は許されるものではないし、それに見合った刑罰を受けて罪を償わなければならないことに異論はない。だがしかし、それでこの事件は一件落着として済まされていいのだろうか。
遺族(ある意味、この少年自身も遺族でもあるのだけれど)の心情も無理はない。二人もの親族の命を奪われたとあれば、処罰感情が強くあって当然だと思う。それでも、その責任をこの少年一人に負わせることが正しいとは、私には到底思えない。おそらくパーソナリティに何らかの障害を抱えている母親の責任が、かなりを占めている。この母親自身が、実は最も支援を必要とする人物であったのだろう。
子供の人格形成の段階で、その成育にふさわしい環境が保障されていない状態が日常であった場合、社会で生きていく人として辿るべき発達過程に問題が生じてしまう。環境が提供されなかったことは、果たして本人の責任なのだろうか。
その周囲の大人、社会システムの問題であると言っていいのではないか。
納得できないことに、母親の責任はかなり限定されたものとしてしか認定されなかったようだ。親として不適任な母親のもとで育たざるを得なかった彼も、ある意味被害者である。罪に対する罰、量刑判断云々もいいが、そこに至ってしまった背景を捉え、なぜ起きてしまったのか、起こさないためにはどうすればよかったのか、同じような悲劇を起こさないためにも、その部分の分析と対応を踏まえた社会の体制づくりをを考えていかなければならないのではないかと思う。
こんな不遇な環境の中でも人間としての温かさを保ち続け、きちんと学ぶ環境があればおそらく人並み以上の成果を示したであろう知性を持った彼が、心のケアをしっかり受け、ふさわしい発達段階を踏んで、刑期を終えて社会に戻って彼なりの人生を歩んでくれたら、と願わずにいられない。
蛇足。とても示唆に富む内容で読みごたえはあったのだが、一つのルポルタージュとしては、その構成や話の展開の仕方に少々難を感じた。途中でテーマが若干ずれた話題が挿入されたりして、少しまとまりに欠ける印象ではあった。