2009年の天然ガスの技術的回収可能量は在来型404兆m3に対し非在来型230兆m3。この内約半分が経済合理性を持って取り出せるとして年間消費量の3兆m3で割ると106年。在来型天然ガスの確認可採埋蔵量が60年あるため経済的に利用できる天然ガス資源量は160年を超える。非在来型ガスの可採量だけ見ると
...続きを読む40年分増えただけだが、この本を見る限り産地が変わることの政治、経済的な影響が大きそうだ。
天然ガスは石油と違い相対取引が中心で統一された市場が形成されていない。日本の天然ガス価格は欧州の2倍、アメリカの7倍、LNGで比較しても中国の3割増の17ドル弱/百万BTUで2000年代半ばの5ドルから3倍近くに上がっている。日本の天然ガス調達価格は長期契約で石油価格に連動させているためなのだがこの間得に北米でシェールガスが増産したため06年以降石油価格と天然ガス価格は関連しなくなってきている。長期契約の間はスポット調達を除くと日本はシェールガスの恩恵を受けられない。またパイプラインではなくLNGでの輸送のためLNG化に3ドル、輸送に3ドルかかっており価格の1/3が輸送費となっている。
アメリカは天然ガスの輸入国から輸出国に変わるが今の所TPP参加国向けのみとなっている。また石油依存度を減らし、天然ガスの調達をカナダ、メキシコ、アラスカ、ブラジルなど南北調達を推進している。軍事費の削減を果たすためにも中東から手を引きつつ有ると言うのがシェールガス革命の一つの側面だ。
ヨーロッパはロシアのガスプロムからの天然ガスだよりからの脱却を目指している。中国は四川盆地を中心に世界最大の埋蔵量を持ち開発を進めるとともにロシアからの調達価格の交渉材料として使っている。
日本にもどると発電が天然ガスシフトするのはほぼ間違いない。しかしエネルギー総需要の25%が電力であり、発電効率45%と比べると入り口の省エネの効果が大きい。コージェネで発電を分散して発電の熱をそのまま利用するのがどうやら効率が良さそうだ。それと自動車をはじめとするエンジン向けにも利用を拡げ、石油依存度を下げ、調達先の多様化を図って燃料費を削減するというのが著者の意見だが肝心のパイプラインの整備が遅れている。
なかなかわかりやすい入門書でした。