谷川毅のレビュー一覧

  • 聊斎本紀

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    聊斎志異は、大昔に数巻あるシリーズの一冊だけ読んだことがある。不思議な話を集めたという印象で、詳細は覚えていない。後書きの解説によると、本書は、聊斎志異の中のいくつかの話を膨らませたものを、オリジナルの物語で繋いだものとのこと。昔読んだ聊斎志異を手元に残していないので、どこをどう変えたのかはわからないが、あいかわらずバラバラの怪異譚として読んでも面白い。全体的には、ちょっとくどい気もする。例えば科挙を受験する人たちの話がいくつも出てきて、読んでいて疲れることもあった。

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    2026年01月17日
  • 聊斎本紀

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    閻連科の作品は、狂想現実主義と称される、長編、愉楽、エイズ村を扱った、丁庄の夢、大飢饉の内幕を暴露した四書、硬きこと水の如し、炸裂し、太陽が死んだ日、心境、中国の話、黒い、豚の、毛、白い、豚の毛、などたくさん読んできたことを思い出す。
    これまでの作品に比べて発言にパワーがなくなってきていると感じるのは、作者が高齢になったことばかりではなく、中国国内で作家活動をすることの困難さなのかもしれない。現に中国では出版されず、台湾で本書が出版されているように、中国国内での作家活動に作者がいかに苦労をしているのだろうかと思える。

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    2026年07月13日
  • 聊斎本紀

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    著者の閻連科(えん•れんか)は1958年、河南省出身。人民解放軍に身を置いた後、80年代から小説を執筆している。これまでに数冊が中国国内では発禁処分となっており、本作も本国では出版されていない。台湾と日本だけで出ているという状況だ。

    内容は清朝第4代皇帝•康熙帝(こうきてい1654〜1722)を主人公とした、完全に架空の“幻想小説”だ。
    晩年をむかえた皇帝は夢占い師の言葉や蒲松齢(ほしょうれい1640〜1715)の書く怪異譚『聊斎志異』(りょうさいしい)の物語世界に惹かれていく。やがて物語に出てくる“歓楽国”にどうしても行きたくなった皇帝は、多数の伴を連れて巡行の旅に出るが…。

    本作は『聊斎志異』の怪異譚をうまく抽出•改変し、作中に織り込んでいます。原典を知っていると、その改変具合がよくわかって、更に面白さが増します。

    しかし、本筋となるのは後半の、康熙帝の“桃源郷探し”です。最高権力者がたどり着いた先には過酷な体験が待ち受けているのですが、この辺りがどうやら本国での出版を阻んでいるようです。
    例えば、猛威をふるう疫病治癒のためには皇帝の血が有効とされ、皇帝が無理矢理血を抜き取られる場面など、執筆されたのが2020〜21年だった事と関連付けて曲解する人もいるのでしょう。(知らんけど)

    大変な力作で、原書は27万5000字あるそうですから、原稿用紙だと687.5枚!。本書も450ページあります。単行本は税込5280円。なかなかですね…。約2週間ほどかけてじっくりと読みました。重くて持ち歩く気にはならなかったから…。
    それでも、面白くてページを捲る手が止められませんでした。中国古典好きにはこの気持ち分かってもらえるかなぁ。たぶん。

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    2025年10月06日
  • 年月日

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    山深い農村が千年に一度の日照りに襲われ村人たちが村を捨てて逃げていく中、73歳の「先じい」は目の見えない犬1匹と共に一本だけ芽を出したトウモロコシを守るためにたった1人村に残り、日照りや飢餓、ネズミやオオカミと戦っていき、最後には‥

    ただおじいさんと犬が日々生き抜いていく、それだけのストーリーなのに、胸に響き、圧倒的に引き込まれ、いっきに読み終えてしまいました。
    帯のコメントで
    「洗練の正反対にある生き方がもたらす感動は、地球サイズ、いや宇宙レベルといっていいほど大きいし、深い」
    とあるのですが、まさにその通りの深い深い感動がありました。

    著者は、中国河南省の貧しい農村で生まれ、飢えと孤独の中で幼少期を過ごした、と紹介にあります。
    その生い立ちがあるからこそのリアルな農民の姿が深く心に響きました。

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    2024年03月16日
  • 硬きこと水のごとし

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    文化大革命とは、中国で1966年から、およそ10年も続いた革命運動である。正確には「無産階級文化大革命」といい、旧来の思想、文化、風俗、習慣を打破することで、新しいそれを打ち立てようとした社会運動であった。ただ、その実態は、産業改革「大躍進政策」に行き詰まって失脚した毛沢東の、名誉回復を狙った政治的な宣伝、プロパガンダであった。氏は自らの失敗を、旧来の思想、文化、風俗、習慣に責任転嫁したのである。つまり、文化大革命とは、先進的な階級闘争などではなく、ただの内向的な権力闘争であった。しかし、一度火のついた革命は、氏の手の内を離れて、中国全土、そして世界全体に広がった。数えきれないほどの文化財、宗教施設が破壊され、計り知れないほどの虐殺と弾圧が行われたとされる。いったい、その被害と、犠牲とは、今もってなお、その全容を知れるところではない。

    さて、本書はそんな時代にあって、やはり革命を邁進した男の、最後処刑台から語る独白である。旧態依然の閉鎖的な村に生まれ、膨れあがる自意識を耐え難くしていた男の、これもまた才能を持て余し、旧家の令室に甘んじていた女と辿る、「エロ、革命、血笑記」。本書の殊勝であるのは、これがべつに革命の懺悔でもなければ、恋愛の礼賛でもないところにある。革命における理想と現実、恋愛における嘘と誠のような葛藤は微塵もない。むしろそれらは徹頭徹尾、渾然一体のものであり、ただのありのまま生として、そして、ただのあっけない死としてある。そう、たしかに、その生真面目さ、もとい滑稽さにこそ、文化大革命の真実があったかも知れないのである。

    「そそりたつ乳房、震える乳首、秘密の三角地帯……革命の歌に乗って二人の欲望が炸裂する。」

    筆者は、実際に中国の貧しい農村に生まれ、文化大革命を目の当たりにした当事者。生活苦から中国人民解放軍に入隊し、その創作を始めた。本作に先んじて邦訳第一作となった『人民に奉仕する』(『為人民服務』2005)は、その過激な内容から、中国本土では発禁処分となった。本作(『堅硬如水』2001)も発表当初は発禁を免れたものの、現在は増刷も、再版も許されていないという。とはいえ、その後も精力的に活動中。おそらく日本では、本作より『炸裂志』(『炸裂志』2013)のよく知られるところだろう。

    「文化大革命の嵐が吹き荒れるなか、血気盛んな人民解放軍の若者・高愛軍は、故郷の貧村・程崗鎮に復員し、美しき人妻・夏紅梅とともに革命を志す。中国古来の価値観が残る村は、対日抗戦の殊勲者たる名家の人々が支配していたが、現状に不満を抱く若者たちを煽動して革命委員会を樹立し、村幹部を追放し実権を掌握していく。アメリカ帝国主義、ソ連修正主義に囲まれ、世界的な反中国の逆流のなか、マルクス、レーニン、スターリン、毛沢東ら、革命の聖人たちを奉じ、愛情の力で邁進する二人。やがて二人は愛軍が掘った「愛のトンネル」を通って夜な夜な逢瀬を重ねることとなる。近年ノーベル文学賞の候補と目される最重要作家による、セックスと革命、血と涙と笑いが交錯するドタバタ狂想讃歌!! 」

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    2020年04月12日
  • 硬きこと水のごとし

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    文章の密度が常軌を逸している。ものすごい熱量。すごく分厚い本に上下二段組で、改行のない段落が長々と続く。
    革命に夢中になりすぎる一農民の姿を描いていて、その革命への熱意が性欲と連動している。毛沢東の引用や漢詩のようなものがよくでてくるが、言いたいことは正直よくわからない。どうやら、このどたばたしてよくわからない感じが、文化大革命の混乱そのものを表現しているらしい。
    評価をつけることが難しいが、何だかすごいものを読んだなという感じはする。

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    2019年01月13日
  • 硬きこと水のごとし

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    相変わらずすげーな。いざコトに及ばんとした時に元気がなくなっちゃった兄ちゃんが革命歌聞いたら元気ビンビンになるとか何で発禁にならなかったのか、中共の言論統制も大したコトなくね?と思わせるハチャメチャ感。ノーベル賞候補とも言われてた気がするけど、莫言まではギリセーフでもこれはさすがにマズかないか。いや、ノーベル賞なんかもらえなくても好きですけどね。

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    2018年01月30日
  • 聊斎本紀

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    現代中国の作家・閻連科による、中国古典『聊斎志異』を下敷きにした小説。
    36の小さなお話が組み合わさり、440ページ、2段組となかなかのボリュームである。
    『聊斎志異』は清代前期の怪異短編集で、神仙、幽霊、妖狐などが活躍する。著者の蒲松齢(ほしょうれい)は、科挙の試験に合格して官僚となることを志し、ある程度のところまでは好成績で合格したものの、どうしても上位の試験には合格できず、塾で教えるなどして糊口を凌いだ。その傍ら、怪異譚を収集し、発表しては、同好の士の間で好評を博していた。タイトルは「聊斎(蒲松齢の雅号)が異を志す(志=誌)」の意。「聊斎が不思議なお話を集めた」程度の意味だろうか。版本の形でまとめられたのは、蒲松齢の死後のことである。写本により異なるが、全445話~495話程度と言われる。
    著者の経歴にもよるのだろうが、試験に失敗した人物が人外のものと交わる話があったりする。何だか厭世的になり、人間世界ならぬところに桃源郷を求めたようにも思われる。

    本作は、『聊斎志異』をベースに、蒲松齢や、その時代の皇帝であった康熙帝、絵に命を吹き込む絵師、科挙の受験生、修行の末に人間になろうとする狐の一族などが交錯する。短いお話が積み重ねられ、現実と幻想が絡み合いながら混然一体としてラストに向かっていくような物語である。
    「本紀」とは皇帝の一代の事績を記したものを指す言葉で、最終的には本作は康熙帝の話に帰結するので、言い得て妙といえようか。

    康熙帝は、伝説の絵師を探し出して絵を描かせようとしたり、蒲松齢に毎日物語を書かせて届けさせたり(この部分はフィクションらしいが)、なかなかの権力者ぶりである。
    一方で、科挙を受けては失敗し、美女(実は狐)との暮らしに慰めを見出したり、絵の中に入り込んでしまったりといった、複数の受験失敗者の話も繰り返し語られる。男と人外のものの交合の話が、手を変え品を変え出てきて、若干辟易するのだが、現世には喜びが少ない、ということなのか。蒲松齢と閻連科の厭世観がオーバーラップするようでもある。
    最終的には康熙帝も病気をきっかけに、話に聞く「歓楽国」を目指して旅立つ。現実から遊離したような地についた皇帝は、おつきのものと離れて様々な体験をし、若返ったりまた年を取ったりしながら彷徨う。果たして康熙帝が見る最後の景色はどのようなものか。

    閻連科は中国本国では反体制と見られており、本作も大陸ではなく、台湾で出版されているという。そのあたりにふれた巻末の訳者あとがきも読みごたえがある。
    邦訳初版本には、著者特別エッセイ栞として、芥川龍之介の「酒虫」(やはり『聊斎志異』の翻案もの)に言及した一文が付いている。日本の読者のみに向けたものだが、特典としてはなかなかの長さの文章で、書きたいことがほとばしり出る著者のエネルギーを感じるようでもある。
    本作は第12回日本翻訳大賞に選ばれている。

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    2026年07月20日
  • 年月日

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    22冊目

    反体制な発禁本を多数発表している一方でフランツ・カフカ賞も受賞している中国の作家を初読みです。

    日照り続きの見捨てられた村で72歳の老人は全盲の犬と共に一本だけ残ったトウモロコシの苗を守ろうと奮闘。過酷な自然と対峙し、自分の生命を削りながら別の命を繋ごうとする様に、大地と共に生きる農民の気概を感じます。

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    2022年05月01日
  • 硬きこと水のごとし

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    2021.7 文革のデフォルメパロディ小説?パロディではないか‥エロいと書いてあるが全然です。革命の名のもとに繰り広げられる狂気な展開に圧倒されました。

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    2021年07月19日