【感想・ネタバレ】聊斎本紀のレビュー

あらすじ

【第12回 日本翻訳大賞受賞】
現代中国の怪物作家が、最大の怪奇譚集を再創作!!

中国で発禁処分となり日本では25年に刊行、読売、毎日、日経…各紙誌が絶賛する、極上の怪異世界。

ボルヘス、芥川龍之介、太宰治、手塚治虫、諸星大二郎など、数多のクリエイターたちを魅了した怪異世界を、『千夜一夜物語』『見えない都市』の枠組みに当てはめた驚異の連作長篇 !


「朕は死ななくてはならんが、この絵師は永遠に生きるのだな」

皇帝に難題を持ちかけられた天下一の絵師は、
絵の中に自らを封じこめる。
一方、少年時代に聞いた銀色の狐の夢を毎夜見るうちに、
皇帝は『聊斎志異』の怪異世界に魅せられていく。
人間の心臓を食べて転生しようとする妖怪、
孔子の末裔と蘭の香りに包まれた絶世の美人姉妹、
富をもたらす酒の虫、人間と狐のめくるめく愛欲の日々……。
物語が物語を引き寄せ、謎が謎をよびながら、
異界と現実が混淆し逆転する壮大な物語。
現代中国社会の矛盾を描きつづけ、
大陸では出版不可能な怪物作家、前代未聞の新境地!

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Posted by ブクログ

聊斎志異は、大昔に数巻あるシリーズの一冊だけ読んだことがある。不思議な話を集めたという印象で、詳細は覚えていない。後書きの解説によると、本書は、聊斎志異の中のいくつかの話を膨らませたものを、オリジナルの物語で繋いだものとのこと。昔読んだ聊斎志異を手元に残していないので、どこをどう変えたのかはわからないが、あいかわらずバラバラの怪異譚として読んでも面白い。全体的には、ちょっとくどい気もする。例えば科挙を受験する人たちの話がいくつも出てきて、読んでいて疲れることもあった。

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2026年01月17日

Posted by ブクログ

閻連科の作品は、狂想現実主義と称される、長編、愉楽、エイズ村を扱った、丁庄の夢、大飢饉の内幕を暴露した四書、硬きこと水の如し、炸裂し、太陽が死んだ日、心境、中国の話、黒い、豚の、毛、白い、豚の毛、などたくさん読んできたことを思い出す。
これまでの作品に比べて発言にパワーがなくなってきていると感じるのは、作者が高齢になったことばかりではなく、中国国内で作家活動をすることの困難さなのかもしれない。現に中国では出版されず、台湾で本書が出版されているように、中国国内での作家活動に作者がいかに苦労をしているのだろうかと思える。

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2026年07月13日

Posted by ブクログ

著者の閻連科(えん•れんか)は1958年、河南省出身。人民解放軍に身を置いた後、80年代から小説を執筆している。これまでに数冊が中国国内では発禁処分となっており、本作も本国では出版されていない。台湾と日本だけで出ているという状況だ。

内容は清朝第4代皇帝•康熙帝(こうきてい1654〜1722)を主人公とした、完全に架空の“幻想小説”だ。
晩年をむかえた皇帝は夢占い師の言葉や蒲松齢(ほしょうれい1640〜1715)の書く怪異譚『聊斎志異』(りょうさいしい)の物語世界に惹かれていく。やがて物語に出てくる“歓楽国”にどうしても行きたくなった皇帝は、多数の伴を連れて巡行の旅に出るが…。

本作は『聊斎志異』の怪異譚をうまく抽出•改変し、作中に織り込んでいます。原典を知っていると、その改変具合がよくわかって、更に面白さが増します。

しかし、本筋となるのは後半の、康熙帝の“桃源郷探し”です。最高権力者がたどり着いた先には過酷な体験が待ち受けているのですが、この辺りがどうやら本国での出版を阻んでいるようです。
例えば、猛威をふるう疫病治癒のためには皇帝の血が有効とされ、皇帝が無理矢理血を抜き取られる場面など、執筆されたのが2020〜21年だった事と関連付けて曲解する人もいるのでしょう。(知らんけど)

大変な力作で、原書は27万5000字あるそうですから、原稿用紙だと687.5枚!。本書も450ページあります。単行本は税込5280円。なかなかですね…。約2週間ほどかけてじっくりと読みました。重くて持ち歩く気にはならなかったから…。
それでも、面白くてページを捲る手が止められませんでした。中国古典好きにはこの気持ち分かってもらえるかなぁ。たぶん。

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2025年10月06日

Posted by ブクログ

現代中国の作家・閻連科による、中国古典『聊斎志異』を下敷きにした小説。
36の小さなお話が組み合わさり、440ページ、2段組となかなかのボリュームである。
『聊斎志異』は清代前期の怪異短編集で、神仙、幽霊、妖狐などが活躍する。著者の蒲松齢(ほしょうれい)は、科挙の試験に合格して官僚となることを志し、ある程度のところまでは好成績で合格したものの、どうしても上位の試験には合格できず、塾で教えるなどして糊口を凌いだ。その傍ら、怪異譚を収集し、発表しては、同好の士の間で好評を博していた。タイトルは「聊斎(蒲松齢の雅号)が異を志す(志=誌)」の意。「聊斎が不思議なお話を集めた」程度の意味だろうか。版本の形でまとめられたのは、蒲松齢の死後のことである。写本により異なるが、全445話~495話程度と言われる。
著者の経歴にもよるのだろうが、試験に失敗した人物が人外のものと交わる話があったりする。何だか厭世的になり、人間世界ならぬところに桃源郷を求めたようにも思われる。

本作は、『聊斎志異』をベースに、蒲松齢や、その時代の皇帝であった康熙帝、絵に命を吹き込む絵師、科挙の受験生、修行の末に人間になろうとする狐の一族などが交錯する。短いお話が積み重ねられ、現実と幻想が絡み合いながら混然一体としてラストに向かっていくような物語である。
「本紀」とは皇帝の一代の事績を記したものを指す言葉で、最終的には本作は康熙帝の話に帰結するので、言い得て妙といえようか。

康熙帝は、伝説の絵師を探し出して絵を描かせようとしたり、蒲松齢に毎日物語を書かせて届けさせたり(この部分はフィクションらしいが)、なかなかの権力者ぶりである。
一方で、科挙を受けては失敗し、美女(実は狐)との暮らしに慰めを見出したり、絵の中に入り込んでしまったりといった、複数の受験失敗者の話も繰り返し語られる。男と人外のものの交合の話が、手を変え品を変え出てきて、若干辟易するのだが、現世には喜びが少ない、ということなのか。蒲松齢と閻連科の厭世観がオーバーラップするようでもある。
最終的には康熙帝も病気をきっかけに、話に聞く「歓楽国」を目指して旅立つ。現実から遊離したような地についた皇帝は、おつきのものと離れて様々な体験をし、若返ったりまた年を取ったりしながら彷徨う。果たして康熙帝が見る最後の景色はどのようなものか。

閻連科は中国本国では反体制と見られており、本作も大陸ではなく、台湾で出版されているという。そのあたりにふれた巻末の訳者あとがきも読みごたえがある。
邦訳初版本には、著者特別エッセイ栞として、芥川龍之介の「酒虫」(やはり『聊斎志異』の翻案もの)に言及した一文が付いている。日本の読者のみに向けたものだが、特典としてはなかなかの長さの文章で、書きたいことがほとばしり出る著者のエネルギーを感じるようでもある。
本作は第12回日本翻訳大賞に選ばれている。

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2026年07月20日

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