松本寛大のレビュー一覧
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面白かった。作者はきっと島田荘司が好きなんだろうと思う。理系ネタと本格ミステリの融合──まさに島田氏の提唱する21世紀本格ミステリの理論に合致する。選評の“福ミスのような地方の小賞に投じられてきたことに感謝した”という辺りに島田氏との相性の良さがうかがえる。ということは、私とも相性が良い。そういう雰囲気は序盤から感じていた。
「相貌失認」という聞きなれないテーマに臆することはない。症状や解釈についての描写も多く出てくるが、私のように何となくわかった程度でも何ら支障はない。もちろん、この扱いにくいネタがなければストーリーは成立しないし、トリックにも直結している。よく形にできたなあと感服すると共に -
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信州の山林地主の先代・新羽堂市が変死した。
東京から葬儀に訪れた孫の医師・桂木優二は自殺と判断されたその死に不審感を抱く。
そして葬儀の直後、遠縁の画家・滝見伸彦が転落死。
生前、滝見が白昼夢のように見ていた「妖精」に、連続する事件解決の鍵があると考えた桂木は、米国ボストンに暮らす心理学者のトーマ・セラに調査への協力を依頼する。
第一回福ミス受賞者、松本さんの第2作目。
ざっと4年ぶりですか。
それだけの時間がかかっていそうな、凝った作品でした。
だけどちょっと合わなかったかなぁ~。
滝見が初めて妖精を見たという、マサチューセッツでのプロローグから一転、閉鎖的な田舎の人間関係が思いやられる -
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ネタバレ顔が認識できない……扱ったモチーフはすごく面白かった。
それだけに、冗長な構成と無駄が多過ぎる人物配置、展開がもったいなかった。
正直、犯人はすぐに分かります。おそらく作者も想定済み。
けれど後で延々延々その犯人の一家について言葉で説明されても。
せっかく素材が面白いのに、人間ドラマとしてもミステリーとしても半端な印象。
結局、犯人一家の悲哀、それに深い陰影を与えるはずの少年の脳の障害、すべてがしっくりと馴染まず、通り一遍な感じしか受けない。もったいないな~。
過去描写はあんなにいらない。不要とまでは言わないが、わざわざ出すほど面白かったわけでもない。
とはいえ、次作が非常に楽しみ。今度は -
Posted by ブクログ
アメリカ・マサチューセッツ州の小都市にかつてガラス製造業で財を成した富豪が、謎の死を遂げた廃屋敷があった。
11歳の少年コーディは、その屋敷を探索中に死体を焼く不審人物を目撃する。
だが、少年は交通事故にあって以来ある障害を抱えていたため、目撃者としてその証言をそのままつかうことはできなかった。
州警察から依頼を受けた日本人留学生で心理学者のトーマ・セラは、記憶の変容や不完全な認識の奥から真相を探り出すために調査を開始する。
真相に肉迫するにつれ明らかになる、怪死した富豪一族とこの難事件との忌まわしき因縁。。。
広島県福山市の芸術文化の活性化をはかるため、同市出身である島田荘司氏を選者として