臼田孝のレビュー一覧
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わかりやすく詳細
タイイトル通り、万有引力定数から光速、プランク定数までの「定数」に関する解説だが、まず世界を人間が捉えるための空間や時間の単位の成り立ちから話が始まる。
距離=メートル法の確立や、時間=1秒の定義、等など、世界を把握するための基本の網目の編み方から詳しく説明してくれているし、しかもなるべく平易に、数式を使った場合もその説明を欠かさず、如何に世界を人の思考と観察を使って分析していくのかということを説明してくれる。
『宇宙を支配する「定数」』という日本語タイトルには、なにか超越的な存在を示唆するような響きが有るが、内容に関しては、徹頭徹尾西洋科学的なアプローチ、つまり人間の能力と技術の及ぶ限り対象を分析して、その存在を分割対象化していく姿勢が伺える。
物理を学校教育で学んだ時には、その世界に対する見方の面白さよりも、公式などを暗記するような作業に辟易した記憶があるのだが、本来的にはこの本の内容のように、如何に人の使えるツールを発明・開発して、それを使って森羅万象の成り立ちを人間に分かるように見極めていくのかという、ある種の物語として読むことも可能なのだろう。
人の思考によって、物理的には絶対に手の届かない遥かな宇宙の構造までもを解き明かしていくことは、とても面白い体験です。 -
Posted by ブクログ
「科学をあなたのポケットに」というブルーバックス発刊のことば通り「科学」を身近に感じさせてくれる本。先月読んだ「数式図鑑」が数学を入口まで誘ってくれたように、本書は読者をワクワクさせながら「物理定数」の世界を見せてくれました。良書であると断言していい1冊と思います。
著者の臼田孝さんは現在、国際度量衡委員会の幹事をされています。いわば「単位」の鉄人であり、「新しい1キログラムの測り方」(ブルーバックス)という著書もあります。
本書はまず「物理定数」とは何かについて、フックの法則や等加速度運動を例にとって説明。そして宇宙の時空構造というマクロの世界から、素粒子が躍動するミクロの世界へと視点を移し、章を改めながら順次、超微細構造、真空中の光速、万有引力定数、電気素量、プランク定数という重要な物理定数を取り上げ、これらに関係する物理法則と物理定数の測定決定についての概論を行います。
本書の面白いところは、例えば光速の説明をするときに長さの測定という基本的な事項についても説明しているところ。そして金属の原器による測定の限界を破るものとして光波長を使った方法を紹介しています。定数以前に我々の身近な存在である質量、温度についても定数の測定や実証実験に絡めながら説明してくれています。しかも、豊富な図表を使っているので、私みたいな文系でもすとんと理解できました。また、定数測定や実験技術の進化も読んでいて楽しかったです。
そして、最後には「宇宙進化と物理定数」の関係を説明。定数が一定不変か考察しますが、宇宙や地球の歴史、4つの力、ブラックマターにも言及されていて夢のある内容になっています。
以上、とても面白いブルーバックス。物理定数に親しむため、これから物理を学ぶ中高生に読んでもらいたい1冊です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ時間や長さ、重さなどの基準が10億分の1程度かわっても日常生活には何の影響もない。が、単位と単位は相互に依存しあっているし、単位の定義の確からしさ以上の精度をもって物事は測定できない。メートル原器のように手で触れるものからより物理学的で世界中どこでも再現できる基準に変更していこうというメトロロジスとたちの熱気も伝わってくる本。
役にも立たない知識、と言ってしまえばそれまでだが、役にたたないことこそ面白いという好例。
・1メートルは北極点と赤道の間の子午線の弧の1000万分の一、1キログラムは水1リットル(1メートルが定義されると10cm立方の大きさも決まる)の質量、として1798年に定められた。1875にメートル条約が定められた時、子午線の長さを再測量しようという話もあったがこれまでとの整合性を重視して当時使われていたメートル原器の値を継承することにした。
・キログラム原器はその保管場所に三重の鍵がかけられており、それぞれ別々の三人が持つ鍵がそろわないと中にあることが確認できない、というぐらい厳重に管理されているが、1889年に作られて以来、50μg(おそよ指紋一個分)ほどの変化が生じているとされている(副原器との比較からの推測)。
原器から離れて定義を策定しようという時、重量を定義するためには2つの方法が考えられた。一つは既知の原子を多数集める(アボガドロ定数を正確に求める)、もう一つは電磁気力によって発生した力を用いるもの。
E=mc2を用いて
質量=プランク定数X電磁波の周波数/光の速さの2乗
ということもできるが、プランク定数を正確に求めることはアボガドロ定数を求めることと等価(両者の関係を表す式がある)
純粋な結晶での原子一つが占める体積は分かっているため、まず、シリコンの結晶を作ろうとした。シリコンには大多数を占めるシリコン28の他に29,30などの同位体がある。そのため、シリコン結晶をこのまま使っても制度は1000万分の1レベルが限界であった(キログラム原器は1キロ当たり50μgなので1億分の5)ため、制度が一桁不足している。
この問題の解決のため、冷戦の終結によって使わなくなった遠心分離機をロシアが提供することを申し出、シリコン28を濃縮するという国際プロジェクトが立ち上がった。
得られたシリコンの結晶を正確な球体に切り出す技術は日本とドイツのみが有しており、これでシリコンを切り出した。
その結果、「キログラムはプランク定数の値を正確に6.62607015X10-34ジュール・秒と定めることによって設定される」という定義ができた。
・温度は水の氷点が0度、沸点が100度、絶対零度がマイナス273.15度。しかし、氷点は実際は氷水が空気に触れている状態のため空気が溶けて凝固点降下などの影響があって安定しない。そのため、現在では水の三重点(固体、液体、気体の三相が存在することのできる温度)がを基準にとっているが、これはマイナス0.01度。なのでケルビンの一目盛りは273.15分の1ではなく273.16分の1。
・秒は最初、地球の自転(一日=86,400秒)をもとにしていたが季節変動や経度変動があるため1956年に地球の公転に基づく定義(1年=31,556,925.9747秒)に変更された。その後、原子周波数標準の研究が進み、1967年にはセシウム原子の固有の周期に基づく定義(Cs133原子の9,192,631,770周期)となっている。こうした定義の変更のたびに精度は二桁ほど上がり、現在の不確かさは10^-14のレベル -
Posted by ブクログ
長さ(メートル)や重さ(キログラム)、時間(秒)など私たちの日常生活には当たり前のように様々な「単位」が存在しています。これらの単位がどのように定義されて来たのかという歴史をひもとき、そしてその定義が科学技術の発達に伴い、どう変化していくのかを易しい切り口で紹介する本です。
かつてメートルの定義は地球の子午線を基準に定義され、基準はメートル原器という合金製の棒でした。科学技術の発達に伴い、より高精度が求められ光の波長、そして光の速度を用いた定義へと進化して行きます。
「単位の定義以上には高精度の測定ができない」という制約が、それぞれの時代における最先端科学によって単位を定義する動機付けとなっています。
そして長らく単位の再定義の流れの中で、フランス革命の時代に定義された質量の定義である「キログラム原器」という分銅のような錘で定義されてきた質量の定義が約130年ぶりに改められるという歴史的な瞬間を迎えようとしているのです。これら興味深い事実なども踏まえ、単位の定義がいかに私たちの日常生活に大きな影響を与えているのかを読みやすい新書サイズにまとめた一冊です。 -
Posted by ブクログ
質量の基準が実体としてのキログラム原器から物理定数を基準とした抽象的な定義へと変わることを最近の報道で見かける。本書では、まさにその定義変更に携わった著者が、質量だけでなく、様々な「単位」について解説している。
もっとも、新しいキログラムの定義は、プランク定数やアボガドロ数を用いるなど、素人から見ると概念的で、正確さ(誤差)は減るものの、イメージはしにくい。その上、本書の前半の「長さ」(メートル)の定義の仕方について、原器から光速を基準としたものに変更する部分の記載で、「時間」(秒)が誤差なく決定できるということが何の説明もなく前提とされていて、そこで引っかかってしまった。
というわけで、少々読みにくい部分もあるが、様々な単位の再定義により、例えば、質量であれば、誤差は原器が負うことになるなど、基準の変更によって考え方や実態が変わるという部分は中々興味深かった。