一見マナー講師による、この社会の通念やルール説明に終始するかと思いきや、そんな事はない。ルール説明も固定観念に縛られず柔軟な上に、事例を用いて実践的。アカデミックな論拠とコモンセンスのバランスが取れた良書。私みたいに無精なスタイルの人間は、目を通し、少しでも著者の心根を学ぶべきかも知れない。
印象を高めるためのビジネスファッションの解説からスタートする。そこから姿勢や振る舞い、スピーチの仕方、心構え、声や表情、言葉遣い、精神性にまでテーマが及ぶ。個人的には経営者たちの実例紹介がありがたかった。
実務で有益だなと思ったこと、経営者の実例をここに書いておきたい。まず実務について。謝罪に赤いネクタイはやめた方が良い。日本ではおめでたいイメージの紅白、イギリスでも騎兵隊に由来する戦いのイメージでもある。これは実際に私も経験がある。謝罪していたのも受けていたのも私ではないが、それを見ていた周りの大人がネクタイの色にケチをつけていた。刷り込みに過ぎないが、社会は刷り込みで成り立っている。
他にも、一文一義を心がけること。オンラインミーティングでは、いつもの8〜9割のスピードで話すこと。
採用に置いて心がけること。イーロンマスクが重視するのは「複雑な問題を解決する能力、これまでにどのような複雑な問題を解決してきたか、不確実な環境下でも働ける力を持っているかどうか」ソフトバンクの孫氏は、300年続く企業を作るための条件は何かと問う。ジェフベゾスは、フェルミ推定、ファックスの機械は米国内に何台あるかなど。ジェフベゾスやスティーブ・ジョブズはPowerPointを嫌う。それは、思考が停止する行為であり、プレゼンテーションすること自体が目的になってしまい、問題点に徹底的に向き合えないからだと。そこからはクリエイティビティーが生まれない。むしろジェフベゾスは文章形式で1ページまたは6ページまでの意見書に要約することを求めた。文章形式にすることでクリティカルシンキングを育むと考えているからだと。
知識により意識が増える事に価値がある。読んで損はない。