若竹千佐子のレビュー一覧
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久しぶりに感想を書かねばと思えた本
星五つをつけたい本と出会いたい、星五つをつける本の感想しか書きたくないと思っていたので、この本との奇跡的な出会いに感謝
桃子さんの心の叫びに度々涙した。
人生の或る意味とか、地球史46億年ノートからも考察される生命の存在する意味(意味なんてないのだけど)そんな事を老いた女性の東北弁から自答させられる、哲学の小説だった。
この東北弁がまたイイ。脳内に繰り広げられるありとあらゆる思考、自問自答、普段こうして考えているだろう取り留めのない事が、そう、ジャズのように東北弁で脳内を駆け巡る。それはもう、もはやお洒落で、はたまたリアルで。こうして桃子さんなりの解答 -
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桃子さん、好きだったなあ。千佐子さんのことも、きっと好き。「きっと」というのは、やはり華やかなメディアの世界の作家先生というより、確かにこの世界に生きているひとりの女性、もっと言うならば「おばあさん」、という感じがするから、有名人を好きと言うほど簡単には好きと言いづらい親しみやすさのようなものがあって。
でもね、フェミニズムとか個人主義とか声を上げなきゃとか考えながらも、「うふ」とか「誰得」とか、するっと出てくる言葉なんか、やっぱりすごく好き。内なる声、合議制、といった言葉に、『おらおらで〜』は映画も良かったんだよなあと思い出し、「桃子さん、好きだったなあ」と、はじめのつぶやきに戻る。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ若い時に読んでたら、
全く響かない本だったと思う。
小説としても、かなり斬新で新しい書き方で、読み進めるのが少し難しいと感じることもあったけど、35歳、子供が2人いる今の私が読み終わった感想としては、桃子さんの感情や、考えにハッとさせられることが多く、「これは他人事ではないな。」だった。
「自分より大事な子供なんていない。自分がやりたいことは自分がやる。子供に仮託してはいけない。」
「親子といえば手を繋ぐ親子を想像するけれど、ほんとは子が成人してからの方がずっと長い。」
人とはあまり話さない桃子さんの脳内を覗き込むことができて嬉しかった。
本当は私が話し相手になりたい…と思った。
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Posted by ブクログ
タイトルは宮沢賢治の詩、「永訣の朝」の一節でひとりで死んでいくという意味だそうだ。その裏にはひとりで生きていくと言う意味が隠れている。
子供達が巣立ち、連れ合いには先立たれ、気がつけばひとりぽっんと残される。
年をとると誰もがかかえる孤独、病気そして死への恐怖。不安との裏腹にひとりで生きていくという覚悟。
誰もが年を取ればこの状況に陥るであろう揺れ動く気持ちを東北弁で語っている。
最初は東北弁を理解することに注意がいってしまい戸惑ったが、読み進めると主人公の気持ちがじわじわと伝わってきてグッと心を掴まれる。
この本はまさに自分の母の姿だし、のちの私の姿である。 -
Posted by ブクログ
今の時代に、実際になんらかの生きづらさを抱えている人はどれくらいいるんだろう。
いろんなメディアでは、この世がいかに生きづらいのか、様々な角度から報道されていたりするけれども、いわゆる「当事者」から声が上がることはほとんどない。
なんなら私自身も当事者なのに、なぜかあきらめてしまっている。
「言っても仕方ない」「どうせ何も変わらない」と、なぜ思うようになってしまったのか。
この作品の人達は、なんだか恥ずかしくなってしまうくらい率直に、ストレートに、おかしいと思うことや生きづらさを語る。
でも、その率直さをなぜ恥ずかしく感じてしまうんだろう。
なぜ私たちは語ろうとしないんだろう。
自分の中のあき