佐伯順子のレビュー一覧
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1992年、雑誌「太陽」連載を元に書籍化、2015年に平凡社ライブラリーへ。
最近読んだ三島由紀夫『仮面の告白』についての章を目次で見つけて手に取る。
基本的には江戸時代の衆道(美少年への愛)を『田夫物語』『色物語』『男色大鑑』『葉隠』を中心に引用しながら紹介する。
『田夫物語』『色物語』では男色派・女色派の論戦がメインとなる。筆者はその論点を女性との関係が生活や子などの「実用的」側面で語られるのに対して男色はお洒落さ、風流、あとは古より〜的な語られ方がされていることに注目、女性蔑視的な考え方に基づくと指摘する。
井原西鶴『男色大鑑』では出家について、遊女と若衆に求められる性格の近似、そし -
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2009年の本だけれど、トランスジェンダーのことも包括してあり、当時使われていた性同一性障害という言葉についても使うのはよろしくないという否定的な姿勢であることが伺えて安心できた
女装と男装。装う目的や装うことによって達成されることで浮かび上がるジェンダロールについての研究がなされており、2024年の今でも根強い規範にぐうと唸りたくなる
本書の目的については著者が”アニメや漫画や映画から楽しくジェンダーのことを考えることができる、考えるための手引書としての役割も込めている”、”ジェンダーの問題は性別関係なく、生きている限り考え続けなければいけない問題”と言い切っていることも頼もしかった
著者で -
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映画や文学作品における「異性装」の役割と性別に付随しているイメージを紐付けて説明してあり、とても読みやすかった。
最近はポリコレが世界に大きく広まっていることもあり、「体の性」と異なる服装をすることは「対してたことではない」或いは「少数派の人間に配慮している」というさもあって当たり前かのような捉えられ方をされている。しかし、何かを主張する場である作品内において登場人物は全てにおいて意味を持ち、それは身につけているものとて例外ではない。そういった部分を取り上げているこの本は今後生まれてくる作品においても重要であり読ませていくべき本だと思う。
地域の風習や宗教観念といった視点からも異性装の意味合い -
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昔の日本人は男色についてどのような価値観をもっていたのかが分かる本。男色を異常性愛者のように扱うのではなく、男色をひとつの嗜みとして扱っており、男同士の恋愛がどのように考えられていたのかが分かる。
序盤では「男色と女色(異性愛)のどちらがよいか?」という議論を交わしていた記録を取り上げている。男同士なら妊娠の心配ないから心置きなく恋愛できるとか、男社会のルールに則ってお互いに恋愛できるとか、お釈迦様も男色を好んだから男同士の恋愛は高尚な嗜みなんだとか…etc
男色文化だけでなく、江戸の人たちの性や恋愛などの価値観についても学べる。
文体が語り口調で分かりやすかったおかげで、日本史に疎く、 -
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稚児物語、歌舞伎などの中に描かれ続け、
現代の少女マンガにも継承されている、
親密な「男同士の絆」という表象の歴史を考察した一冊。
【まとめ】
仏教が浸透し、武士が支配していたかつての日本では、
修行の妨げ、あるいは戦闘の邪魔として女性が斥けられ、
男性のみで構成された集団内で「男の絆」が深められたが、
キリスト教的価値観が流入した後は、愛情は男女の間で育まれるべきだが、
みだりに淫らであってはならないというダブルバインドが生じ、結果、
昭和期の男子生徒には懊悩が、
性的に抑圧された少女たちには妄想が
醸成されたのではないか――といったところか。
内容は、途中まではタイトル -
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隠岐さやかさん、瀬川至朗さんの論稿が面白かった。
隠岐さんの論稿は、近代フランスにおけるprofession(法律家・聖職者・医師等の、特定領域での公的判断を行う者)とexpert(個別領域における技術的な助言を行う者)の関係性を取り上げ、expertがどのように地位を確立していったかについて文献に基づいて解説している。
瀬川さんの論稿は、自らの記者としての失敗経験をもとに、記者としてどのように専門家への取材に臨むべきか、専門家としてどのように記者からの取材に臨むべきかの提案を記載している。
その他たくさんの著者による論稿があるが、誰がどのような視点で稿を寄せているのかを、冒頭でまとめておい -
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「田夫物語」「男色大鏡」「葉隠」といった江戸期の書物を題材に、男色がどのようにとらえられていたかを紹介している。わりと知られていることだけど、当時は男色に背徳性はなく、むしろ通人の風俗の一つだった。ミソジニーの裏返し的に、さっぱりとした同志愛的な同性愛が横行していた(少なくとも建て前上は。本当はもっとドロドロやエロ目的だけもあったのだろうけど)。
でも、これっていまだに日本の男たちが、「男ってのは……、それに引き替え女ってやつは……」って言いたがるわけで、構造的には同じなんじゃないのと思う。それなのに同性愛は忌避されたり、(最近は緩やかになってきているが)異常視されたりする。現代の他の国・地域 -
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心と体。外観と内装。人は兎角自分の目で見たものを正しいと思いがちであるが、自分の目が現実をとらえられないことも世の中には多数存在する。この女装、男装もその一つではなかろうか。男が女の格好をすることを、ただ単にクィアで済ませられるわけでもなく、こと女形に限って言えば、女性よりも美しい振る舞い出で立ちをすることをその本質に掲げている。また女性に限っても、男装をすることが性同一性障害からくるものや心の問題に起因するというわけでは必ずしもない。女性男性をその見た目の差異から見るSEXで区切ることはそう難しいものではないかもしれないが、ジェンダーでその境界線を見定めることはハッキリ言って難儀である。男か
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