草鹿外吉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
20世紀初頭のロシアが夢見た、不穏なるユートピア小説。
南半球に建国された理想国家が、その極端な合理主義によって滅びに至るまでを描きます。
物語は2906年、南十字星のもとに栄えた共和国の記録として展開されます。完全な平等を目指し、芸術を否定し、感情を管理する未来社会。人々は巨大な地下都市に暮らし、効率に基づいて行動します。だがその極度の合理化が、やがて人々の魂を蝕んでゆくのです。
革命と暴動、そして謎の疫病によって滅び去る理想郷の顛末には、世紀末ロシアの予言者たる詩人の洞察が光ります。ホーンいわく「ザミャーチンの『われら』やオーウェルの『1984年』に先駆けて、管理社会の闇を描いた」と。