【感想・ネタバレ】南十字星共和国のレビュー

あらすじ

南極大陸に建設された新国家の首都〈星の都〉で発生した奇病〈自己撞着狂〉。発病者は自らの意志に反して愚行と暴力に走り、撞着狂の蔓延により街は破滅へと向かう――未来都市の壊滅記「南十字星共和国」。15世紀イタリア、トルコ軍に占領された都市で、スルタン側近の後宮入りを拒んで地下牢に繋がれた姫君の恐るべき受難と、暗闇に咲いた至高の愛を描く残酷物語「地下牢」。夢の中で中世ドイツ騎士の城に囚われの身となった私は城主の娘と恋仲になるが……夢と現実が交錯反転する「塔の上」。革命の混乱と流血のなか旧世界に殉じた神官たちの死と官能の宴「最後の殉教者たち」など、全11篇を収録。20世紀初頭、ロシア象徴主義を代表する詩人・小説家ブリューソフが紡ぎだす終末の幻想、夢と現、狂気と倒錯の物語集。アルベルト・マルチーニの幻想味溢れる挿絵を収録。

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Posted by ブクログ

悪い夢とそれを見た人の話、あるいは誰かの見た悪夢そのもののような短編が揃う。昏く、その悪夢を呼び起こした現実もまた暗い。原書からのアルベルト・マルティーニの挿絵もとても良かった。

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2021年03月20日

Posted by ブクログ

短編集。革命物はなんだかソローキンの欠片があちこちに見えた。ソローキンに比べると作者による読者への親密さがわかる。それ以外はビョーキもの。今も昔もビョーキの人の普遍さを確認。今の人と違い情報がない分、周りがあれこれ言わない分、安心して内側に籠ることができたようだ。ロシアの人って不器用で無骨?内側に囲いを作っていろんな物を投げ入れてる印象。そしてこじらせる。母親の実家にて、ごちそうを振る舞われてる感じした。作りなれてる料理を心を込めて振る舞う作者。1つ1つが田舎の郷土料理。

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2019年02月03日

Posted by ブクログ

20世紀初頭のロシアが夢見た、不穏なるユートピア小説。

南半球に建国された理想国家が、その極端な合理主義によって滅びに至るまでを描きます。
物語は2906年、南十字星のもとに栄えた共和国の記録として展開されます。完全な平等を目指し、芸術を否定し、感情を管理する未来社会。人々は巨大な地下都市に暮らし、効率に基づいて行動します。だがその極度の合理化が、やがて人々の魂を蝕んでゆくのです。

革命と暴動、そして謎の疫病によって滅び去る理想郷の顛末には、世紀末ロシアの予言者たる詩人の洞察が光ります。ホーンいわく「ザミャーチンの『われら』やオーウェルの『1984年』に先駆けて、管理社会の闇を描いた」と。

技術発展と人間性の相克を描くSF作品でありながら、象徴主義的な幻想と詩情を湛えた特異な一篇なのであります。

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2024年11月17日

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