芹沢真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
見渡すあらゆる地平にはるか遠く空を抱く純粋さを示す場所なのか、吹き荒ぶ凍りついた風が大地の岩に引っかき傷を作りながら突き刺さる太陽の痛みを記録する失われた場所なのか。
ひととひとの単調に繰り返す営みに馴染めない者がやがて吹き溜まる場所なのか、ひとがひとらしく強さと弱さをそれぞれに見せながら生きる都会から少しばかり遠い場所なのか。
記憶はやがて薄れるものではなく、次第に好きなように姿を変えるものである。どこか本棚の隅にしまい込んだはずのパタゴニアの大地の写真は、到底自分が自分の脚で歩いて撮ったものでもなく、雑誌の付録としてあったグラビア印刷の広告だった。その荒涼とした大地には確かに道であると脳の -
Posted by ブクログ
旅行記というか随筆。著者の興味に沿って挿話がたくさん入る。パタゴニアに関わった何人かのアウトローたちの伝記を綴り合わせたような本。荒凉とした平原を移動、ふっと立ち上がる回想ドラマ、また荒凉とした平原…を繰り返して、最後の長い挿話は著者の大伯父の伝記、旅の目的を果たして帰路へつく、という構成。
相互に関係の薄い脱線が全体としてパタゴニアという土地の雰囲気を表しているような、しかしこれは著者の頭の中だけのパタゴニアであるような。発表当時は旅行記としてかなり独特のスタイルだったのではと思う。
ちなみに挿話のそれぞれの語りは淡々としているものの、内容は波乱万丈で人間の運命を考えさせられるところがあり、