郷原宏のレビュー一覧

  • ことば探偵 金田一京助の秘密

    Posted by ブクログ

    書名に「探偵」とついているが同じ金田一でも耕助ではなく、日本のアイヌ研究の第一人者にして辞書編集者としても著名な金田一京助の評伝である。ミステリの評論で高名な著者がなぜ金田一京助の評伝を?という疑問の答えは「あとがき」に書かれている。野村胡堂が旧制盛岡中学校で金田一京助や石川啄木と同窓であるという話をしたところ「金田一耕助が実在の人物だったとは知りませんでした」と言った人がいたというエピソードである。
    私自身も、金田一京助は春彦氏の父であるということが一番最初に思い浮かぶテイタラクで、アイヌ文学の研究に至っては聞いたことはあるけれど……くらいのものだった。なので、ちょっと話題らしいので読んでみるかと思ったものの随分及び腰でしばらく積読に入ってしまっていた。
    しかし一旦読み始めると、これが面白い。何しろ著者郷原宏氏の文章が読みやすく、こちらが興味を持っていようといまいと、ぐいぐいと先へ運んでくれるおかげでスラスラと読めた。ニュートラルな筆致でサクサクと描写されていくので、石川啄木との美しすぎる(いかがわしい?)友情も、家族が困惑するほどのアイヌの人々との濃い付き合いも、そんなこともあるかなと思えて立ち止まることなく読み進められた。
    だからと言って内容が浅いわけではない。アイヌ研究の業績をきちんと押さえて紹介しつつも本当にそんなに多くの辞書編集に携わったのかという点はきちんと考察されているし、人柄についても「チンポコを持った貴婦人」と評されたという話や、いろんな人との確執の元となった惣領息子気質も具体的なエピソードも披露されており納得できる。愛すべきお人柄だったのかもしれないが毀誉褒貶が激しくなるのもやむを得ないとわかった気になれるほどに充実している。
    金田一家の方は今もテレビでお見かけすることがあるので、あの人たちのご先祖様と思って読むのも一興であるし、戦前から戦後にかけての日本の言語学や文学の風景を知るという視点でも楽しめると思われる。

    0
    2024年07月01日
  • ことば探偵 金田一京助の秘密

    Posted by ブクログ

    国語学者にしてアイヌ語研究者の金田一京助の評伝。知里幸恵について知りたくて、その師である金田一の生涯や考え方を知るために読んだのだが、金田一も相当な変わり者だった。盛岡の裕福な家に生まれたが、アイヌ語というマイナーな言語の研究に取り組んだため貧乏暮らしが続いた。さらに、若い時には石川啄木という貧乏神にまとわりつかれる。長女、次女、三女を幼くして亡くし、四女も成人したものの自殺してしまう。学問上でも、長く認められず万年助教授で、後継を期待した知里幸恵、真志保の姉弟に先立たれる。それでも明るく天真爛漫に生きたのはすごい。それにしても、なぜ日本語でなく国語なのか、現代かなづかいとは何か、宿題ももらった。

    0
    2024年05月29日
  • 乱歩と清張

    Posted by ブクログ

    活躍時期はズレているが本書にある通り現代でも残っているミステリー作家2人の邂逅と歴史。松本清張は江戸川乱歩の初期短編は評価しているがそれ以降は切り捨てているし筆者も同様の評価をされている。戦後の乱歩は創作力が枯渇して編集者として生きたといえよう。その編集者として熱くプッシュされたのが松本清張であり日本推理小説の大御所となっていく流れは面白い。(横溝正史が復活大人気を遂げるのは清張の隆盛以降の事)
    2人とも絵とかデザインにも才があるとの事。清張も参考にしたというが2人ともスタイルは違うけど文書が抜群に読みやすい。それでも個人的には小説以外なら乱歩作品は漫画向け、清張はドラマ向けの気もする。清張の創作力は尋常でないが敢えてリアリティ重視しているのか男が大抵不倫しているようなキャラクターが多いのも理由としてある。自分は乱歩は初期短編以降も『孤島の鬼』のような時代を先駆けすぎな通俗長編や作者自身をトリックに使った『陰獣』も好きだし、怪人二十面相や少年探偵団を根付かせた功績は多いと思う。

    0
    2024年01月03日