香取照幸のレビュー一覧
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社会保障をこれから学び始めるのにいい本はないかと探していたところ、極端に振れていないバランスの取れた良書との評価を見て購入。
事実、I部、II部では制度理解から位置付け、国際評価など、今後の社会保障を考える準備をするために必要な理解が、端的にできる。正確でコンパクト。
資料が豊富だったのは客観視できるのでありがたいところだった(国際間比較、資産保有配分の年度比較など)。
Ⅲ部の今後のあり方について(一般論として)言及し、それを踏まえた付章では提言(具体的政策)する。
2017年、5年前に初版の本だが、この提言が今実現しているものも多いので、現場で実際に携わった経験値のある人が書いた本なのだな -
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-高齢化で給付は増加、不景気で収入は停滞、公費投入
-社会保障の二面性
−社会保障は負担
+経済成長のエンジンでもある1つの産業
-過剰貯蓄を防ぐはずの社会保障
-人口減少、少子高齢化、経済停滞の結果、資金は高齢者と企業に留保、格差拡大
-経済社会、政治への不安←一億総中流社会の崩壊、グローバル化
-財政再建経済成長社会保障のために政治への信頼を取り戻すことが肝要
-今後の社会保障の役割(安心社会基盤、ルール、人口減少社会を乗り切る持続可能な社会実現)
- 持続可能な制度の構築、制度の簡素化、ITによる効率化が必要
-社会保障による雇用の創出、地方への所得配分
想像していた内容とは違った -
Posted by ブクログ
前著『教養としての社会保障』は、厚労省官僚として「社会保障・税の一体改革」をリードした著者が、「社会保障は経済成長のために不可欠」であるということを、
・経済成長のためにはイノベーションが必要
・しかし、イノベーションはむしろ失敗の方が多いのが現実
・そこで、社会保障はセーフティネットとして、失敗しても再チャレンジできる環境を整備することで、イノベーションのようなチャレンジを促進し、経済成長に貢献する
という論旨で主張した名著であり、個人的にも社会保障の意味合いを再考するきっかけとなった一冊であった。
厚労省を2017年に退官した著者による本作は、その主張をさらに推し進めている。具体的には、 -
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誰もがなんとなく知っているけど、明確には答えられない。
そんな「社会保障」について、これ1冊でみっちり学べる本です。
社会保障は「あくまで自立して生活することが前提で、もしダメになったらみんなで助けるよ」っていう制度で、だけどそれにはいろんなパターン・ケースが存在することを知りました。
日本の社会保障は世界一と言われているが、一方で世界一の高齢化の国でもあると言われています。
そのため、このままのルールでは無理が生じてくるという考察も勉強になります。
個人的に、この本を読んで、いま契約している生命保険の無意味さに気づいて
解約できたことが一番の収穫です。 -
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ネタバレ## 感想
- 普通に知識の勉強としてよかった。歴史を紐解く、というとあれだが、国民皆保険を作るところから現代までの話をざっと眺められた。
- 元、内閣官房内閣審議官の人ということで、どこかに寄った話だと嫌だなと思ったが、思ったよりもニュートラルな立場で書かれていた。最後の方はエモさもあったがご愛嬌(定量や戦略ではなく思いが乗っかる文章で終わる、という程度の意味)
## メモ
- 社会保障が理解されづらいのは
- ①政治・経済・雇用・家族政策・医療・など幅広くまたがるため。
- ②マクロ経済の仕組みを踏まえなければいけないが、ミクロ経済の感覚が混ざるため(往々にしてマクロにとって正はミク -
Posted by ブクログ
これは良書。元官僚の著者の上から目線だけ気にしなければ、最良の分析考察を厳密なデータとともに把握できる。
成長が止まり、税収が減り、社会保障の予算に占める比率が50%を超え、政策的な自由度が限りなく小さい。例えば教育に全く使えない。それが我が国の実態。
そんな中、日本人の貯金好きは異常。無駄にため込まないために一番大事なのは公的年金への信頼感だが、政争の具になってそれが失われている。
結果として今、日本は貧困が進んでいる。しかも中間層が減って貧困層が増える二極化。何といっても最大の原因は非正規雇用。同じ会社で働いているのに、非正規は社会保険が自腹。つまり低所得者ほど相対的な社会保険負担が大 -
Posted by ブクログ
ネタバレ総論中心で読みやすい。社会保障の問題を考えるきっかけになった。
・近代化によって、農民は農村から都市の工場へと移動させられた。社会保障は近代化によって失われた社会=コミュニティーの相互扶助の機能を国家が代替・補完するもの
・社会保障は自立を支えることが目的なので、自分で支える自助が大前提で、これに加えて病気などでリスクを防御しきれなかった時に互いに支え合う共助から成る。自助と共助でカバーできない困窮などを公助によって補完する。自助のない共助はない、というのが基本的な考え方。
・社会保障給付は120兆円でGDPの22.8%。財源は6割が保険料、3割が公費、1割が保険料を原資とした積立資産の